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【同人感想】はんぺんもちを さん

嗚呼! 顔が良い人っていいなぁ!

常日頃そう思っている。
これはある種の嫉妬のような感情、つまり「俺も顔が良くなりてぇなぁ」みたいなものでも勿論あるが、それ以上に他の意味合いが大きい。

まずそもそも論として、顔が良い人を見ていると幸せになる。
そんな顔が良い人が、可愛い衣装に身を包んでいれば尚更。
そしてその姿を写真に収め、それが本となるのならばもう、至高と言わざるを得ない。

しかしこの世の顔が良い人全員が、そこまでしてくれるわけではない。
肩のいい人が全員野球を始め、投手になるわけではないように。
文才のある人が、全員小説家を目指すわけではないように。

才能、そして素質を持っていたとしても、それを誰しもが存分に活かすとは限らない。人それぞれやりたいことがあり、選択の自由がある。
結構なことだと思う。素質があった段階で、その道以外の可能性を奪われる方が、不健全だと僕は思う。

何が言いたいかというと。

素質を持った人がそれを存分に活かそうと努力をしてくれることは、非常にありがたいことで、そして貴重なことだということだ。


嗚呼、我幸也。

というわけで買ってき(てもらっ)た。
はんぺんもちをさんの新刊セットである。

まず全部表紙からして可愛いのは言わずもがな。

パンダ←可愛い
地雷系←誇張抜きに“癖”
彼方←推し

という、それぞれが三元牌だとしたら余裕で大三元をアガれてしまいそうな、言葉通りの役満セットである。

代行でコミケに行ってくれた友達に「これ買い逃したら埋める」とまで言ったこの思考のセット。
あんまり長文の感想は気持ち悪くないか? とは思いながらも、ここまで自分得なセットを出されてしまっては、感想を慎む方が無礼というもの。

せっかく1,000人を突破したフォロワーさんたちに「怖……」と思われてフォローを外されても構わない。

とことん行こう。
最後まで行く。


これ持って学校行きたい

さて、何から手をつけよう。
僕は食事の際、ベジタブルファーストで食べるタイプだ。
その方が健康にいいというのもあるが、それ以上に、メインを最後に食べて幸せに食事を終えたいという気持ちがある。

しかし困った。今回の三冊は全部がメインディッシュである。
和食、中華、イタリアン、それぞれのメインが並んでいる感じ。
どれ食べても美味い。どう食べても美味い。

困った時は神頼み。
特典でついてきたチェキがパンダさんだったので、今回はパンダせつ菜ちゃんから読んでいこうと思う。

あとがきにも、もちをさん自身が書かれていたことだが、せつ菜ちゃんは『少女のようにキラキラであどけなく、ちょっと無防備』である。

今回着用されたパンダ衣装は、そんなせつ菜ちゃんの魅力を発揮するのに最大限尽力してくれる存在だと思う。
そしてこの写真集自体も、彼女の多彩な魅力をそれぞれふんだんに伝えてくる、説得力に満ちた構成になっている。

キラキラの笑顔、パンダの手でこちらにアピールしてくるあどけなさ、ところどころ少し心配になってしまうくらい大胆で無防備な姿。
それぞれの要素をパラメータみたいに表した時、ページを捲るたびにそれぞれの比率が変化するようにできている。勿論、どのページにもそれぞれの要素は詰まっているのだが、パートごとに『どの要素を強めに魅せたいか』が変わっているのだ。
これはもちをさんと撮影者であるあいなめさんの、見事な技巧だと思う。

最初は、キラキラの笑顔とあどけなさの比重が大きい。
パンダらしく、少し気の抜けた自由な姿。それでいてせつ菜ちゃんらしい眩しいパッショナブルな笑顔。赤と白が混ざって、眩く綺麗なオレンジになっていくような、二つの要素の美麗な掛け合わせに心を掴まれる。
しかしそれでいて、どこか無防備な予感もある。せつ菜ちゃん自身がそれを気にしているのか狙っているのかは本人のみぞ知るところだが、まるで気づいていないように見えるその爛漫な表情が、邪な考えをかき消してくる。

しかし見ずにはいられない。男の子だし。

そんな一抹の焦燥を抱えながらページを進めていくと、そういう小さな煩悩に水を与え成長させてくるみたいに、徐々に無防備さの比重が大きくなっていく。

爛漫な笑顔とは打って変わって、少し大人びた表情に変わっていく様を見ていると、まるでこちらの考えを見透かされたような気分になってくる。
そんなこちらの気分を知ってか知らずか見せてくる、寝顔と、宝石のごとく煌めく瞳。まじまじと見つめるのがむしろ申し訳なってくるようでした。

読み終える頃にはすっかり虜です。
パンダとはかくも恐ろしい熊であったか……。

それとこれは、自分も最近カメラを始めたからこそ視線が向いたところですが。
どの写真も『立体感』があるんですよね。単に人を撮るだけでなく、カメラとの間に植物や鳥籠を配置してぼかす。後ろにも彩色鮮やかな小道具を散りばめて、物、人、物の順番の奥行きが伝わるように撮られているのが印象的でした。
手を伸ばせば、本当にそのもふもふに触れてしまえそうな。自分も同じ世界に飛び込めたように感じられるのは、そんなリアルな『立体感』を意識されているからなのかなと思いました。

カメラ初心者の戯言ですので、的外れなことを言っていたらすみません。
編集技術といい、あいなめさんの手がける写真集ってどれも本当に素敵です。芸術作品を見ているような没入感と充足感に浸れて好きですね。


おねえちゃん……

さてお次。ここまでで2,000字ってまじ? SMH。

夏コミ直前に制作されたとは思えない完成度の一冊。
読み終えたらあなたも「おねえちゃん……」と、存在しない夏の記憶に想いを馳せて空に呟くこと間違いなし。

田舎に帰省した時にだけ会える、親戚の彼方おねえちゃんとのひと時をイメージし撮られた写真たち。

夏、扇風機と障子の隙間から吹き込んでくる涼しさに微睡む中、そんな僕の様子を察して布団の中に誘ってくれる彼方おねえちゃん。
お留守番中、小腹を空かせた僕のために響くフライパンの音といい香り。
かき氷、プールと、精一杯の夏を堪能させてくれる彼方おねえちゃん。
最後の夜。また一緒にやろうねと花火の熱に灼かれるアスファルトにつぶやく僕に、笑顔を向けてくれる彼方おねえちゃん。

桃源郷?

同級生に恋なんてできなくなるよ、こんなの。
どんな日々を過ごしても彼方おねえちゃんの姿がかさぶたみたいにこびりついて、もう他の女の子が視界に入らなくなる。そんな僕くんの姿がチラつきます。

きっとこの写真集の完全版が出ると信じて、この存在しない夏の思い出に、僕も想いを馳せ続けることにします。
これが恋ってやつか……。


到達点

きちゃったよ。

雑誌のコーナーで地雷系せつ菜ちゃんなる特大爆弾が誕生して以降、この衣装でいろんな姿が見たいと思い続けていました。
そんな願いを叶えてくれたもちをさんとあいなめさん。
これから僕はどこに足を向けて寝れば? 地中?

果林さんプロデュースという設定で制作されたとだけあって、この本でしか見られない貴重なせつ菜ちゃんの姿が目白押しです。

小道具も手作りされたということで、細部へのこだわりがとにかく尋常ではありません。

ただせつ菜ちゃんの姿をアップで撮り続けるだけでなく、ネイルやスマホカバー、欠かせないピンクのエナドリ、チョーカー、大胆な太もも……。
どれもが自分こそ主役だと主張するように色濃く撮られていて、そのすべての積み重ねで『地雷系せつ菜』は完成しているのだと、圧倒的な解釈の完成度に震えています。

ポーズや視線、明暗の加減が、絵画の完成度をより強固にする額縁のようにせつ菜ちゃんを彩っていて、カメラの奥に立つ果林さんの声が聞こえてくるようでした。いい仕事をしやがるぜ果林さん……。

ネオンでカラフルな撮影風景なのに、せつ菜ちゃんが全く埋もれていないんですよね。誰よりも鮮やかで、派手で、魅力的で、魅惑的で。
そんな危険と言えるくらいに美しいせつ菜ちゃんの姿、パンダを見た後だから一入だったのでしょうが、刺激的すぎて写真に肌を焼かれそうでした。

赤と青くらいパンダとはまた正反対な彼女の魅力をここまで引き出せる撮影者のあいなめさんの技術力にもまた、圧倒されました。
どう撮ればいちばん可愛くなるか。どこが魅力的で、それを引き出すにはどうすればいいか。それらを熟知しているからこそ成せる、職人技です。天晴れ。

まとめ

どの写真集も、もちをさんとあいなめさんの『愛』を如実に感じるものでした。
次回作への期待に胸が膨らんで爆発しそうです。

この度は本当にありがとうございました!


(今度こそ恥ずかしがらずに即売会会場で写真撮らせていただけないか聞こう……)


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