いちじくを買う

先日千葉の佐原を訪れた際に、道の駅でいちじくを見つけた。見た目からして大きく柔らかそう。いちじくの審美眼なんてないわたしの目からみても唆られた。
幼少期に食べた以来かもしれない。甘くない、草とか土っぽい匂いのするねっとりした果物だったことを覚えている。

家族が試しに買ってみようというので買ってみた。
子どもの握りこぶしくらいのサイズがある。

家に持って帰ろうと思ったのだけど、しばらく持ち歩いているうちにちょっと潰れてしまった。しょうがないので出先の近くの公園で食べることにした。

皮を剥けないほど柔らかいので、手で割いたあとは中心部分にかぶりつく。冷やしてもいない常温の果肉が口の中で甘くとろける。皮の近くからはあの青っぽい匂いがしてきて、普段食べ慣れないものを食べてるなという風情を感じる。美味しい!想像を超えて甘い。つぶれたからか天然のジャムっぽくなってるところもある。食べるたび、果汁がしたたる。

なんて美味しいんだろう!いちじくがこんなに美味しいと思わなかった。幼少期以来買って食べようと思わなかったのも、おいしいいちじくを食べてこなかったからだと思うのだ。おいしいいちじくに出会えてよかった。わたしの世界の中のなんとも思ってなかった果物の地位がぐんっと上がった。

わたしはこういう瞬間が好きなのだよな、とベタベタになった手を公園の水道で洗いながら思った。自分の固定観念が取り払われたり、いままで知らなかったことをしって急に世界が変わって見えたり。目からウロコ、といえば陳腐だけど、まだまだわたしの目にはたくさんウロコが入っている気がするのだ。世界は知らないことでいっぱいだ。いつかウロコが完全に取っ払われた目で世界を見たい。

これからもたくさんこういう経験ができるだろう。「なにか」との出会いが楽しみ。
願わくばその「なにか」が美味しいものであらんことを。

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