ベジタリアン体験記
友人がアラビア書道なる美しき芸術に片足を突っ込むこの頃、私は私で新しい挑戦をしていた。
ベジタリアンになる。この一週間とりあえず。
留学先で驚いたことは、ベジタリアンの人々が多いことだった。日本では出会ったことがない。
「一週間ベジタリアンになります。肉類と魚介類は口にしない。だけど私は肉が好きだから、とりあえず一週間限定で挑戦してみます。意外とベジタリアンが多くて驚いたので、彼らの感覚を身をもって知りたいんです」
これくらいなら英語で言えるので、それで出会う人たちに宣言しておいた。
この街はベジタリアンにやさしい街だよ、とそう教えてくれた人の連れもまたベジタリアンだった。
確かにそうなのだ。メンザ(学食)の日替わり定食は毎日二種類あるのだが、「肉あり」と「肉なし」である。ベジタリアンは肉なしの定食2を選択するほかないのだが、用意されているだけでも驚きだ。
以前短期留学したドイツの別の大学ではこんなことはなかった。だからベジタリアンが多いことすら気づかなかった。ベジタリアンと聞いても、マニアックな宗教みたいに認識していたのだ。
調べてみると、日本の芸能人でもベジタリアン生活を送る人は意外といた。ベッキーとか市原海老蔵とか。へえ。
そしてなんと、レオナルド・ディカプリオもベジタリアンだという。
部屋にポスターを貼るほど、彼の誕生日11月11日をパスワードに使って友人に心配されるほど、待ち受け画面にするほど好きなレオ様が、ベジタリアンだって。知らなかった。万歳!!
ドイツのスーパーを歩き回れば、食品にもベジタリアンのマークが付けられているのを発見する。
けれども日本におけるベジタリアンは、男湯に迷い込んだ女児のように不憫だ。
ベジタリアンというと、肉類・魚介類を食べない人が多いらしい。魚介類も禁止なのだ。日本のレストランでサラダしか頼めないではないか。だからか、日本では魚を食べてもオッケーなベジタリアンが多いという。
さらにベジタリアンと一概にいっても様々なベジタリアンが存在する。卵、乳製品、はちみつを口にしてはいけないベジタリアンもいるのだと。
私が実践したのは、「ラクト・オボ・ベジタリアン」と分類されるベジタリアンだ。肉と魚介類は食べない。卵、乳製品、蜂蜜は許容した。
このタイプを試した理由は、周りのベジタリアンを見ていてなんとなくこのタイプが多いように感じたからだ。
というのと、いきなり卵も乳製品も禁じるのは、中高生男子に1ヶ月自慰行為を禁止するような、半殺し生活になると思ったからだ。
変わったことといえば、
肉がエネルギーの源!という洗脳を解除することができたこと。
あと、便が黄色いような。いやいや、錯覚ではない。黄色い。
黄色いものばかり食べていたのだから、体は正直だ。あるときは黄色いパプリカにコーン入りのポテトサラダを突っ込んで、とろけるチーズで蓋をしてオーブンで焼いた。黄色でしかない。
ドイツでは米の代わりにジャガイモが主食なもので、肉がなければもっぱらジャガイモで腹を膨らますことができる。
たくさん食べがちなジャガイモについて、初めて調べてみた。
ジャガイモ…
「ナス科ナス属の多年草の植物」
……?!ナスなの?!
フランス語を学んだときは、ジャガイモ=大地のリンゴ(pomme de terre)と表現されることに驚いた。
ナスだのリンゴだの、ジャガイモはこれほど身近にありふれておきながら、案外得体の知れないスパイみたいな存在。
片栗粉は大抵の場合、ジャガイモのデンプンである。へえ!
ここで、生まれてこの方肉の味を知らない生粋のベジタリアンの友人が伝授してくれたレシピをひとつ。
ジャガイモのパンケーキ
すり潰したジャガイモ、小麦粉、卵を混ぜて焼く。これだけ。分量は適当に試してみると美味しいです。
ジャガイモの代わりに、ホウレンソウとパプリカ、マヨネーズとコーンなどでも作ってみたけれど、ハズレない。美味い。
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