『桐島、部活やめるってよ』

ゾンビ映画を観ながら編み物するのが好きなんだ、と私の好きな人が揚々と告げたとき、当然のごとく盛大なクエスチョンマークが浮かんだ。ゾンビ映画は未知の領域すぎて、私は何も言えなかった。数秒の沈黙の後、それは面白い画だねとツッコんだくらいでしかなかった。
ロメロの名も知らなかったし、彼女が薦めるゾンビ映画の名ももちろん知らなかった。普段利用するGEOでゾンビ映画コーナーが用意されていることに驚きつつ、違いが分かるはずもない私は目に入ったゾンビ映画をいくつか借りて観た。映画の新領域を開拓するキッカケとなったのは、彼女だ。

『桐島、部活やめるってよ』を観て、映画部の人物があんな風にゾンビ映画を行使するとは、まあ驚きで、非常に上手かった。予想の斜め上をいくところが、まるで自分の好きな人のようで。
『桐島』は、数年前の高校生時代を思い出してあるあると連呼することもできるし、現在に想いを浸らせることもできる、さらには登場人物のそれぞれに感情移入できる、幅の広い、それでいて否応無しに考えさせられる、というか思い出させるような映画だった。
高校生のとき原作を読んで、高校生というリアルタイムに出会えたことに感謝すると同時に、内容がゾッとして、朝井リョウはホラー作家だと思ったものだ。つまり高校生の日常は、絶え間ないホラーそのものだった、と感じるような生徒だった、私は。

#エッセイ #レビュー #映画

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