ANOTHER13【エッセイ】
お揃いで買った香水がある。
十何種類もある香水の中から、お互いが良いと思ったものが、全く同じ物だった。
そんな単なる偶然を、運命と勘違いしてしまうほどに、僕たちは無邪気だった。
手首に残る様々な匂いを、お互い嗅がせあっては、「やっぱりこれだね」なんて笑い合っていた。
その日から僕と君の香りになったその香水は、今日も良い香り。
瓶にふざけて印字したピースサインは、今では虚しく光り、僕の指先の冷たさを映している。
匂いとは、どうしてこうも鮮明に記憶を蘇らせてしまうのだろうか。
この匂いを纏っては、苦しくなっている僕はどうしようもない。
捨てきれずにいるのは、どこかでまだあなたを見ていたいからなのだろうか。
新しい匂いを纏えば、君は消えていくのだろうか。
新しい匂いを纏えば、僕を連れ出してくれるのだろうか。
それは、とても都会的な香り。