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愛しい日々から

痛みの中でしか、事実を正しく認識できない
瞼は重いのに、思考は澄んでいて、こういう時に限って、人知れず死んでいくだけの悲しみに思いを馳せてしまう。

痛みの中でしか、自分の視界を信じられない
大切なものや人が増える度に、いつかそれを見殺しにしなければいけない自分を想像する。
この手に抱えきれないくらいの幸福、
身に余るくらいの愛情、
身の程以上を望むのは愚かだと知っていながら、それでも愛おしい気持ちが変わるわけでもなく、器の伴わないそれは簡単に溢れて、私は、仕方がなく優先順位をつける必要があった。

本当に守りたいものなんて、欲を言えば全部に決まっている。けれどもどれだけ祈ったって、私の手は二本しかないし、何かを抱きしめた時に、別の何かには背を向けていること、ちゃんと自覚していたし、自覚している自分のことすらいつか忘れてしまうことも自覚していた。

私が今まで、守りたいが故に見捨ててきた選択たちのことを、たまにはちゃんと、一夜をかけて一つずつ思い出したい。そうして十字架を背負うことで、やっと地に足がつくような感覚がする。
痛みの中でしか、人を愛することができない

それでも出会ってしまった大好きな人たち、文学、音楽、生活。いつか手を差し伸べられなくなるのに、それでも出会えてよかったと思ってしまうのは、罪でしょうか。傲慢でしょうか。

でも、だからこそ、言いたいことは、言えるうちに。
会いたい人には、会えるうちに。
行きたいところには、行けるうちに。
延命治療は嫌いです。多分今だけ。人が生きられるのは、たった今、この瞬間だけ。

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