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ななめの日

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基本的に短編。基本的に猫背。
運営しているクリエイター

#ショートショート

想いが伝わるその日には

 チョコが走っていた。  ビル3Fにあるこの喫茶店からは、駅舎と駅前ロータリーのぐるりを…

鵠矢一臣
4年前
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自粛のとらえ方

 駅前の信号機に『青紫』が追加された。進むのを自粛しなくては。  駅舎を出るとすぐ、そこ…

鵠矢一臣
4年前
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リモートワーク・クライシス

「リモートワーク中、絶対に部屋を覗いてはなりません」  毎朝必ず、夫はわたしにそう告げて…

鵠矢一臣
4年前
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私種変更

 買い物ついでに立ち寄ったワタシショップには、新型のワタシが並んでいた。  今よりも女ら…

鵠矢一臣
4年前
15

ハートに火をつけないで。むしろ水かけて。

 駅近くの雑居ビルにある水風呂のないサウナに、そいつは入り浸っていた。  否、正確には入…

鵠矢一臣
4年前
23

春春春春

 春が去り、春が巡ってくる。  その街の季節は、文字通り春だけしかない。初春から始まって…

鵠矢一臣
4年前
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エモい巨塔

『Z教授の総回診です』  院内にアナウンスが流れると、にわかに病棟がざわつき始める。そしてしばらくした後、多数の医師と看護師を引き連れて、Z先生は僕の病室へ現れるのだ。 「調子はどうですか?」  老獪な顔つきのZ先生がにこやかに訊ねる。  僕が明日受ける手術の不安を正直に吐露すると、Z先生はしばらく考え込んでからこう言った。 「いつだって僕らの内側は 恥ずかしいぐらい邪だから Wow……」  間髪を入れず、周囲の医師や看護師が口々に「エモい!」と囃し立てる。  閉口

ワクツィンを打て

 ついにワクチンが僕のところにやってきた。  ただ想像していた姿とはだいぶ違っていて、玄…

鵠矢一臣
3年前
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さくらさん

 さくらさんは桜ではない。そよ風だ。  彼女が歩むごと、桜の花びらがひらりひらりと舞って…

鵠矢一臣
4年前
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ミノうえ、ミノした。

 俺たちがごちゃごちゃと押し合いへし合いしている所に、Lの野郎がやってきて言った。 「君…

鵠矢一臣
3年前
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【ややホラー】スイーツ男子

 俺の手首にはバームクーヘンが巻き付けられている。もちろん手首だけじゃない、首にも足首に…

鵠矢一臣
4年前
15

石を投げていい人

 ある男が、まだ開墾途中にある原っぱで切株に腰掛けてあれこれと思索にふけっているときだっ…

鵠矢一臣
4年前
10

3月3日をしまうまで

 1年ぶりの我が家は、なんだか拍子抜けするぐらいそのまんま。  ピンクのもこもこスリッパ…

鵠矢一臣
4年前
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