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【エッセイ】スタバでMacを触るワケ

とあるマッチングアプリで知り合った女性から「今度電話しない?」と言われた。
私は公私ともに電話が得意ではない。経験上、証跡が残らない電話では認識齟齬が生まれてトラブルになりやすいし、電話中は電話以外の行為ができなくなるし、お互いが無言になった時の間がなんとも居心地が悪い。
いずれも自分の話術や頭の回転が悪いせいであり、電話をしようとすると動悸や吐き気が止まらない、というわけではないため、仕事の場で「僕は電話が苦手なので、メール以外でコミュニケーションしません」とはいかない。当然ながら仕事においては電話でのコミュニケーションを好む人や、電話の方が適切である場面もあるため、その場合は苦手ながらも電話をする。
しかしプライベートで、おまけに一度も会ったことのない相手と電話をするのには非常に抵抗があり、したこともなかった。盛り上がらなかったらどうしよう。メッセージのやり取りですらなかなか話題が浮かばないことも多いのに、ノータイムで話し続けることができるだろうか。何かしら良い言い訳がないものか考えたが納得のいくものが思い浮かばないし、コロナ禍で会うのにもそれなりのリスクがある状況なのだから、一度会う前に会話したいと思うことは至極自然である。

ラインでのやりとりをある程度行って、本来ならこちらからお誘いすべきところを女性側から歩み寄ってくれたのだからこれを断るのは失礼にあたるし、これは越えなければならない壁である。そう思った私は女性の提案通り電話をすることにした。

経験をする前から物事を否定的に捉えてしまうことは誰しもあるのではないかと思う。

私はスタバでMacを触るような人種とは絶対に仲良くなれないと思っていた。スタバは高いし、水が出てこないから長時間滞在するのに向いてないし、MacはWindowsに慣れていると使いづらい。こんなところで使いにくいPCを触っている人間は「おしゃれなカフェで何かをしている自分」に酔っていて、その辺のバイクより高い自転車に乗り、USA製のニューバランスを履いて、中目黒か自由が丘の蔦屋書店で休日を過ごしている「自分」という存在が好きなだけでモノの良し悪しなどわからない中身の伴わない人間だと思っていた。

偏見を抱きながらも丁寧な暮らし(笑)のようなものに憧れがありミーハーな私は、転職してリモートワークが可能になったことを機に、カフェで仕事をすることが多くなった。
仕事をするとなると当然カフェには長時間滞在することになるので、PCもスマホも充電が必要になる。いくつかのチェーンのカフェに入ったが、大体の店舗に一定数のコンセント席を完備しているのはスタバだと気付く。(特にド●ールやサン●ルクといった価格帯が低めの店にはコンセントがないことが多い)
またスタバにはドリップコーヒーであれば2杯目を約100円で注文でき、長時間滞在して2杯コーヒーを注文するのであれば他のコーヒーチェーン店より割安か、同程度であることにも気づいた。
上記のことから、カフェに長時間滞在する場合、スタバ相対的にコスパは良くなる。無料の水で粘る方がコスパが良いのは間違いないが、約100円で2杯目に手を出して滞在する方が精神衛生上良い気がする。

ミーハーな私はM1 MacBookAirの評判に惹かれ、Macも購入した。丁度退職金やらボーナスでまとまった金額が懐に入ってきたこともあって、特に必要もなかったが「インテリアでもいいか」ぐらいの勢いで調子にのって購入した。とはいえせっかくなので休日にはMacを持ってスタバに行き、(今まさに)noteを書いていたりするのだが、Macはバッテリーの持ちが非常に良い。会社のPCやプライベートで使っていたWindowsPCより遥かに長時間利用できる。スタバの電源席は競争率が高いし、電源席に座る人は長時間滞在することが多いのでなかなか席も開かない。そういった時のためにモバイルバッテリーも用意しているのだが、Macならモバイルバッテリーがなくともバッテリーを気にする必要がない。つまりPCを持ち運ぶことが多く、仕事の場所が固定化されない(必ずしも電源が確保できない)ような環境で働く人にはMacは最良の選択肢のひとつなのである。

スタバでMacを触る人間が昔は全く理解できなかったが、いざ自分がやってみると合理的で、なんなら最良の組み合わせではないかと思う。

冒頭の話に戻ると、当初の不安は杞憂に終わり、マッチングアプリで知り合った女性との電話は盛り上がり、会ったこともない相手にも関わらず、かなりの長時間話し込んだ。
体験する前から偏見を持ったり避けることは本人の自由だが、一歩踏み込んで見るとまた違った世界が見えることもある。嫌なことでも、一度体験することを今後も大切にしていきたいと思う。

ちなみに、良いイメージを持っていても実際に体験するとあまり良くないパターンもある。その女性とは電話ののち実際にお会いし、その後もやりとりは続いているのだが、最近連絡が途絶えた。女性にとって私は会ってみたらがっかりする人間だったのかもしれない。

休日にわざわざPCを持って外に出て、コーヒーを買ってこんな駄文を書く日常からさっさと抜け出したいものである。

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