メイド研究者による「メイドの日」に読みたい最近のメイド漫画5選(2020年版)
メイド研究20周年ともなると、自分の中でのメイド作品が10年以上前の作品で固定化しているため、今回は2015年以降発表の漫画という形でオススメ作品を取り上げてみます(商業媒体で連載中の作品・商業単行本化していない作品も取り上げます。同人・ネット漫画のみは難しく)。
※「メイドの日」の他のコラムで言及している作品は省きます。
※これを読むべし、というものがありましたら是非ご教示ください。
01. メイドさんは食べるだけ
タイトル通り、メイドさんがおいしいものをおいしそうに食べる漫画です。英国から日本に来た英国メイドで、日本の文化にそれほど馴染んでおらず、見るもの・食べるものが新鮮に感じられるというもので、ある意味、自分が当たり前に接している食や身の回りのものの魅力を再発見する機会にもなるでしょう。
感想はTwitterの方にも書いていたのですが、メイド服の柔らかさと質感の描写も、個人的には相当好きです。ふわっとした感じや、畳の上での生活というところまで。
メイドさんかわいい。
さらに、メイドさんがメインで、英国にいる主人の存在を冒頭から感じさせ、主従関係の中にありながらも、先にメイドさんが来てしまっているので作品の軸として主人が描かれないまま「メイドさん単体の存在」を追求・成立させる点はユニークです。
食欲と好奇心のまま、そしてメイドさんらしさをふりまきながら歩く姿は必見です。
以下の告知によれば、コミックスは2020年夏発売とのこと。
02. シャドーハウス
とてもユニークな物語です。顔が真っ黒で見えない一族「シャドー」。「貴族の真似事」をして暮らすその一族のお嬢様、ケイト・シャドーと、彼女に使える「生き人形」のメイド、エミリコの日々の暮らしを描いた物語です。
「生き人形」の役割は、顔が見えない主人の代わりに、個性を発揮する「鏡」のような役割を担っています。この「顔が見えない」主人を理解しようと様子を伺い、少しドジなところがありつつ、主人と感情をかわしていきつつ、若い主人共々、一緒に成長していく感じが良いです。
面白い設定は、主人の感情が「煤」となって出てくるところです。英国で石炭を使っていた時代、煤は暖炉を汚し、部屋を汚し、床を汚しました。この掃除が大きな「メイド」としてのエミリコの仕事にもなっています。そして、顔が見えなくても主人の感情が様々な煤の形になって伝わってくるので、伝わっているようであり、また伝わっていないようであり、また伝え過ぎてしまう構造はユニークです。
という展開なのですが、「そもそもシャドーって?」「生き人形って?」「煤って?」という謎があり、物語の核心は世界を知ることへと向かっていきます。その中で、ケイトの個性も強く出て主体的の動き出し、エミリコとの信頼溢れる主従関係を軸としながらも、物語の印象が巻を追うごとに変わっていきます。
とても練られている世界観で、先を読むのが楽しみな作品です。
03. 怪物メイドの華麗なるお仕事
連載開始したばかりですが、魔界の「氷の魔女」メアリーに仕える元々は猫だったメイドのスミレが主人公です。魔女とスミレが住む屋敷に家政婦協会から人造人間とアンデッドのメイドが派遣されてきて、ドジばかりのスミレに仕事を教えつつ、という展開ですが、一話しかないのでネタバレ回避のために細かく書けません。
描き込みの密度や魔界という世界設定、そして元猫のメイドというスミレの所作、メイドたちのあり方や屋敷の存在感などを含めて好きな雰囲気なので、これからの展開が楽しみということで取り上げました。
04. 死神坊ちゃんと黒メイド
魔女の呪いを受け、触れるものの命を奪ってしまうようになった「坊ちゃん」が主人公です。その体質により家族からも見捨てられ、執事とメイドだけと暮らす坊ちゃん。暗く絶望する彼の前に現れたメイドが、「黒メイド」のアリスです。
飄々としてアリスは坊ちゃんを誘うような仕草や、「逆セクハラ」をしかけてきます。そうした(自分から逃げない、向かい合ってくれる、そして魅力的な)アリスのことを「坊ちゃん」は大好きで大切に思っていますが、耐えなければなりません。触れれば、殺してしまうからです。
大好きだけれども、触れられない。言葉と態度と行動は伝えられる。
それでも、それ以上にはできない。
主従関係の逆転や相手を思う気持ちの交錯が美しく、1巻にある「ダンスシーン」は、主人とメイド作品の中で随一の描写と言えるでしょう。
05. テキトーなメイドのお姉さんと偉そうで一途な坊っちゃん
一人の作家1作品ということで『俺んちのメイドさん』ではなく、こちらを。当時8歳の坊ちゃん・有栖川璃久が、年上で19歳の女子大生でバイトでメイドをしている蒔田真白に恋をして、プロポーズします。テキトーだった蒔田真白はオッケーしてしまいますが、その後、10年間を坊ちゃんは約束を信じて18歳になる日を待ち続け、プロポーズします。
という展開なのですが、時系列がいろいろとあり、幼い坊ちゃんとの思い出から思春期を迎えて近い距離で接しづらくなる坊ちゃん、そしてプロポーズされるまで約束を忘れていたというテキトーなメイドさん、と思いきや、10年もメイドを続けることになったのにはしっかりと理由があるというところも、明らかになっていきます。
年上のお姉さんと遠慮なく気持ちをぶつける幼い頃と、その10年後に大人びてきて過去の距離を超えられない感じと、関係性は同じなのですが、双方の年齢が変わることで気持ちや接し方が変わっていくところに醍醐味があります。
メイド作品メモ
すべての感想を書く時間がなかったので、把握している作品をリストにて。
梅衣堂ひよと旦那様の野望
最近雇ったメイドが怪しい
おしかけメイドの白雪さん
うちのメイドがウザすぎる!
うちの変態メイドに襲われてる
メイド・イン・ひっこみゅ~ず
おつかい坊ちゃんとお慕いメイド
いとしい花の名前
メイド・イン・ハニー
20センチのおてつだい
極貧JKと人外紳士
わたしのご主人様は人間じゃない気がする
オネェ吸血鬼と笑わないメイド
わたし♂とお嬢様
俺の生徒は神メイド
野獣先生のメイドさん
夜のメイドさん
坊っちゃんとメイド
追記(2020/05/11)
美しい物語と、#メイドの日 タグで出会えたので追記します。このテキストを読んだ方には、是非お読みいただきたく。
この記事が参加している募集
いただいたサポートは、英国メイド研究や、そのイメージを広げる創作の支援情報の発信、同一領域の方への依頼などに使っていきます。