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めひかり愛が沸騰してる件

「めひかり(メヒカリ、目光)」という小型の魚を知ってますか?

「めひかり」は、北は青森から南は鹿児島までの太平洋側、水深200メートルから700メートルの海底に生息している体長15センチほどの魚です。

「めひかり」との出会い

「めひかり」との出会いは、2015年福島県いわき市の居酒屋だった。
地元の方が当たり前のように注文した「めひかりの唐揚げ」。
下の写真のとおりタワーのようにきれいに積まれた物体は、形状から魚であることは分かったが、どんな味や食感なのか分からないまま口に入れてみた。
すると、一口噛んだ瞬間のふわっとした食感、さっぱりした白身に、ほどよい脂乗りで、骨やしっぽまで丸ごと食べられるやわらかさ。この日以来「めひかり」にはまってしまった。

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後日東京でも「めひかりの唐揚げ」を提供している居酒屋があったので迷わず注文したところ、九州産のめひかりでとても大きかったのだが、ふわっとした食感や脂乗りはなく、美味しくなかったことをよく覚えてる。
その時たまたまだったのかもしれないが、産地によってここまで違いがあるのかと不思議に思った。

いわきの「めひかり」が美味しい理由

いわきの「めひかり」が美味しい理由は何なのか?
いろいろ調べてみたが諸説あるようだ。
いわき沖の海は寒流と暖流が交わる潮目の海で、餌となるプランクトンが豊富なので、いわきの魚は基本的に何でも美味しい。
「めひかり」についても、この潮目の海のおかげでいい脂が乗っていると考えられる。
また、いわき沖の海底は砂地になっていて、「めひかり」はその砂地に潜んでいるため、皮が薄く、骨や身がやわらかいと言ってた料理人の方もいた。
その他、同じ「めひかり」でも東と西で若干種類が違うようで、千葉より北に生息する「めひかり」は「マルアオメエソ」、相模湾より南に生息するのは「アオメエソ」というそうだが、この違いが味や食感に関係あるのかは定かではない。
下のグラフは福島県水産試験場が公表している福島県産「めひかり」と他地域産「めひかり」の粗脂肪の推移だが、時期にかかわらず福島県産「めひかり」の粗脂肪が多い=脂乗りがいいということがデータとしても示されている。

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「めひかり」の食べ方として最もメジャーなのは先にも紹介した「唐揚げ」だが、いわきでは「刺身」でも食べることができる。(下の写真の赤丸で囲ったもの)
足が早い魚なので産地ならではの食べ方で、このためにわざわざいわきまで足を運ぶ価値は十分にある。

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いわきの「めひかり」の歴史

「めひかり」をここまでメジャーな魚に育て上げたいわき市ではいつから「めひかり」を食べるようになったのか?
戦前は漁獲量が少なかったようなので、終戦後底引き網漁の副産物的な存在として漁獲量が増えていったそうだ。
その当時は二束三文にもならないいわゆる「雑魚(ざこ)」という扱いだった。
いわき市の漁港がある小名浜では、身は淡泊だけど、脂が乗り、柔らかい食感が好まれ、漁師の家庭で天ぷらや唐揚げにして食べるようになった。
その後、福島民友新聞の記事によると、

沿岸部だけで愛されてきた魚は、冷蔵・冷凍技術に加え、交通手段も飛躍的に発展すると、その知名度と需要が市内外で同時に高まり始める。消費者は安くておいしい魚に気付き、食卓に欠かせないものになった。
戦後、時代の変遷とともに魚としての「地位」を駆け上ったメヒカリは、ついに「市民権」を得る。2001(平成13)年10月、いわき市の市制施行35周年を記念した事業で「市の魚」に制定された。制定の際に選考委員長を務めたアクアマリンふくしまの安部義孝館長(74)は「市民アンケートで一番多かったのがメヒカリで、カツオ、サンマと続いた。委員長裁定となったが、市民の思いをくみ、メヒカリに決めた」と明かす。

そして、2021年10月1日は、いわき市が「めひかり」を「市の魚」に制定してからちょうど20年の記念日だ。
本来であれば、いわき市で「めひかり」に関するいろいろなイベントが開催されたはずだが、コロナ禍により何も開催できなかったため、少しでも多くの方にこのことを知ってもらいたいと思いnoteに書いてみた。

「めひかり」の謎な生態

ここで「めひかり」の生態についても触れておこう。
「めひかり」についてネットで調べてみると、その生態はうなぎ並みに謎の部分が多く、解明できてないらしい。
いわき市にある水族館「アクアマリンふくしま」のホームページにあるQ&Aによると、「めひかり」の生態について、

産卵の時期や仔稚魚の生態についてはよく分かっていません。体に卵巣と精巣の両方を持ち、産卵時期になるとそのどちらかが成熟をしてオスの役目をするものとメスの役目をするものに分かれて、産卵、受精すると考えられています。
海底に生息するオキアミの仲間やキュウリエソ等を食べています。

と謎な内容が記載されている。
また、水揚げされ食卓に上る「めひかり」はすべて未成熟の若魚で、成熟した成魚は誰も見たことがないという驚くべき内容が記載されている資料も見つけた。どういうことかというと、「めひかり」の繁殖場所は日本のはるか南で、稚仔魚は海流に乗って徐々に大きくなりながら流され、日本列島の太平洋岸にやってきた後、2年ほどそこで過ごして大きく育ってから、どこかへ移動していってしまう、ということらしい。
オスとメスの両方の機能を持ち、どこでどのように産卵するのか不明。謎すぎる。

お取り寄せを試してみた

ミステリアスな魚「めひかり」だが、自宅でも味わってみたいと思い、先日は3種類の食べ比べセットをお取り寄せしてみた。
メヒカリの中でもおいしいと言われている頭の部分を残して開いた「めひかりの開き干し」、下処理不要でそのまま揚げて食べられる「めひかりの唐揚げ」、縄文人の知恵から生まれた干物「縄文干しめひかり」。
(写真上はセット内容、写真下は自宅で調理した唐揚げと縄文干し)

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めひかり好きとしては一気に3種類全部食べてしまった。
個人的には「めひかり」には日本酒が合う。旨みたっぷりの脂を、冷えた日本酒で流し込む。ぜひお試しあれ。

今回、「めひかり」がいわき市の魚になって20周年を迎えることを記念し、「めひかり」3種を食べ比べできるセットがなんと2021年10月7日(木)限定で2,200円→1,700円になるそうだ。(購入ページは↓↓↓)

この商品の作り手を紹介している動画もあるので、こちらもぜひご覧いただきたい。「めひかり」は小さく繊細な魚なので、加工にはかなりの手間がかかる。その加工の風景は必見。

一番言いたいこと​

「めひかり」といえば「いわき」
お取り寄せもいいが、ぜひ本場で新鮮な「めひかり」を食べてもらいたい。


【参考資料】
漁師が選んだ、本当に美味しい魚「PRIDE FISH」(全国漁業協同組合連合会)
https://www.pride-fish.jp/JPF/pref/detail.php?pk=1447150676
いわき市の魚・めひかり(いわき市)
http://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1001000000619/index.html
アクアマリンふくしまQ&A
https://www.aquamarine.or.jp/education/amf-qa/animal/
私の研究「いきものの不思議をしらべる~いわきの魚メヒカリの謎を探る~」(いわき明星大学大学院物質理学専攻 教授 岩田惠理氏(当時))
http://fkeizai.in.arena.ne.jp/wordpress/wp-content/uploads/2016/01/kikou_kenkyu_2017_09_3.pdf
回想の戦後70年 食編- (6)メヒカリ(福島民友新聞)
https://www.minyu-net.com/serial/sengo70/FM20150922-014628.php







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