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また記憶を消して最初からやりたいゲームが増えた【OUTER WILDS感想(ネタバレ無し】

2023年12月、OUTER WILDSというゲームがNitendo Switchに移植されることになった。

自分はこのゲームに対して「なんか雰囲気の良いSFインディーゲー」くらいの印象しかなかったが、ちょうど『TUNIC』をクリアして良質なインディーゲームをまたやりたいなあと思っていたし、元々SFも好きなので、セールになっていたこともあり軽い気持ちで購入。年末年始に遊ぼっと、くらいの心持ちだった。

しかしこのゲーム、自分でプレイし始めてから知ったのだが、多くの人が「生涯忘れられない一本」というレベルに絶賛しまくっていて、なんでもアカデミー賞のゲーム部門でベストゲーム賞も受賞しているとのこと。そんな凄いゲームだったの?「なんか雰囲気の良い良質インディーゲーム」くらいの印象だったので、そこまで評価の高いゲームだとは知らず、俄然期待値が上がる。

しかしこのゲームもまた、その期待値を遥かに上回るバケモンゲーなのだった……。

OUTER WILDSの概要

このゲームは一人称視点の宇宙探索アクションゲーム。
主人公は4つの目を持ち小さな村でのんびり暮らしている種族「ハーシアン」の新米宇宙飛行士。先に宇宙に飛び立って行った先輩たちに倣って、はるか昔に滅んだ種族「ノマイ」の文明を探しに宇宙探索するぞ!というところから物語は始まる。

キャンプファイヤーを囲みマシュマロを焼く、のんびりした種族ハーシアン

意気揚々と宇宙に飛び立ったが、その22分後には太陽が超新星爆発を起こして宇宙は崩壊する。
しかし何故かすぐに目を覚ます主人公。見渡すと周りは宇宙が滅びる22分前に戻っている。

このゲームはその、主人公が体験する22分間を何度もループし、宇宙の謎、タイムループの謎に迫っていく、という内容。うーんワクワクする導入!

OUTER WILDSの魅力

OUTER WILDSの魅力はなんといっても「好奇心だけをプレイヤーの原動力にしている」という点に尽きる。

まずこのゲーム、物語がワクワクする導入であるのに対して、ほぼノーヒントでいきなり宇宙に放り出されるという、ゲームとしては不親切な導入で始まる。

聞いた話だと当初はもっと親切に導入を設けていたのに全て取っ払ってしまったらしい。
あえて不親切な作りにすることで、逆にプレイヤーの好奇心を最大限まで煽ったというわけだ。

チュートリアルを終えたら何の説明もなく早速宇宙へ出発!

まさにオープンワールドゲームの魅力といえる「ここに行ったら何があるんだろう?」「この先には何が?」というワクワク感。進むにつれて「ノマイ」が残した文明が見つかり、少しずつ明らかになっていく真相……。

このゲームの架空の太陽系は隣の惑星まで数十kmという小さなスケールであるものの、宇宙という未知の場所への恐怖もしっかり味わえる。いきなりブラックホールに飲み込まれてしまったり、訳がわからないまま海流に飲み込まれて宇宙に投げ飛ばされてしまったり、そういう理不尽すらもワクワクしてしまう。

また、このゲームをプレイしていて面白いなあと思ったのはアイテムが存在しないことだ。唯一入手できるものはただ一つ「知識」のみ、というゲームデザインも素晴らしい。
実際このゲームはチュートリアル以外フラグすら存在しないので、真相さえ知っていればクリアに直行することも可能。まさに知識だけがエンディングに導いてくれる鍵となる。
得た知識は旅行記録としてしっかり記録されていくので、その記録とにらめっこしながら謎と向き合い、次はどこを探索しようと考え、宇宙に飛び立つのだ。

OUTER WILDSの何が凄いか

とはいえ探索や謎解きを楽しむオープンワールドゲームはたくさんあるわけで、じゃあOUTER WILDSはどこが他のゲームより凄いのかと言われると、これをネタバレ無しで説明するのは難しいんだけど、僕の感想としてあるのは「こんな凄いものをテレビゲームっていうプラットフォームで作っちゃって良いんだ」という衝撃だった。

このゲームは良く、SFの超名作映画『インターステラー』を引き合いに出して語られがちなんだけど、SF作品としての完成度や革新性、壮大さや神秘性はまさに「ゲームで『インターステラー』の感動を味わえる」と言って差し支えないレベルだと思う。
インターステラーとは全く違うプロットだけど、あのレベルのSF体験をゲームで味わうことができるのは間違いない。

個人的には、自分も大好きなSF超名作小説『星を継ぐもの』を思い出した。はるか昔に滅んだ文明へのロマンと、想像が追いつかないほどの壮大さ。
これらの超名作と肩を並べても全く引けを取らない内容だと思う。

この宇宙では一体何が起こっているのか?

それでいて、映画や小説といった一方向へのストーリーテリングではなく、ゲームという「プレイヤーが介在するプラットフォーム」だからこそできるストーリーテリングになっているのも素晴らしい。

これは『十三機兵防衛圏』をプレイした際にも感じたことだけど、十三機兵も非常に完成されたシナリオで、選択肢による分岐などが無いにも関わらず「プレイヤーがシナリオを見る順番を選択できる」という一点のみでゲームでしかできない表現を実現していることに感動した。アニメや漫画では実現できない領域の面白さを描いている。

OUTER WILDSもまた、映画や小説では描けない、自らの好奇心によって真相に辿り着くというゲームならではの魅力を最大限に活用したシナリオとなっているのも素晴らしいと思った。
自分もプレイしながら、ゲーム終盤はもうプレイするたびに鳥肌が立ち、エンディングではあまりの凄さにしばらく放心してしまった。

OUTER WILDSの人に薦めづらい点

ここまで鼻息を荒くして魅力を伝えてきておいてアレだけど、このゲームを友達のオタク全員に勧めるかと言われると、正直ちょっと薦めづらい。

薦めづらいポイントは一言で言い表せる。難しすぎるのである。

謎解きはちゃんと考えれば解けるくらいのレベルになっていると思うけど、そもそも操作自体も難しく、時間制限もあり、探索も迷いやすい作りになっていて、行き詰まりやすすぎるのではないかと感じてしまった。

着陸すらまともにできず、宇宙船が木に引っかかってしまった回

自分は15時間くらいなるべく情報を入れずに自力でプレイしたところで完全に行き詰まってしまい、そこからはもうネタバレ無しでヒントを書いてくれているありがたいサイトを頼りまくることになった。
自分はあまりまとまった時間を取れず、1日1〜2時間程度のプレイ時間だったため、一度のプレイで全く進展がない状況が続くことに耐えられなかったのだ。

誰かが「OUTER WILDSはストレスを好奇心で上書きしていくゲーム」と表現していて言い得て妙だと思った。あえてストレスがかかる作りになっていて、それゆえに好奇心を掻き立てようというゲームデザイン自体はとても面白いのだけど、自分の場合は好奇心がストレスに勝てなかった部分が多かったというわけだ。

ほぼ解答といって良いくらいのヒントを見ながらクリアしてしまったので、自分で謎を解いて未知の場所に辿り着くという快感をあまり得られなかったのは悔しかった。自分で答えに辿り着くことこそこのゲームの魅力だと思うので、妥協せざるを得なかったのは100%このゲームを楽しめなかった気がして、とても残念だ。

自分が下手だったというのももちろんあるが、時間がない中でプレイする人にとっては自分と同じ気持ちになる人も多くいるのではないか、と感じる。
(頭の切れる配信者が初見でサクサク謎解きしてる動画も見かけたりするのでこの辺りは本当に人による。サクサク進められる人ほんとすごい)

また、ゲーム難易度の難しさだけでなくプロットもとても難しい。クリアして「これって結局どういうことだったの?」となる人も多いと思う。実際、自分もエンディングでとても感動こそしたものの、後でしっかり解説サイトを徘徊して補完しないと十分には理解できなかった。
その上で、じっくりとテキストを読んで考察してある程度理解できる人じゃないとクリアに辿り着けない難易度でもある。

高難易度なゲームに抵抗がなく、ハードSFをある程度理解できる人……となるとどうしても薦められる人は限られてしまう。

とはいえ、「量子力学」とかが大好きなSF事象オタクなそこのお前とかは間違いなくブッ刺さると思うので、そういう人は今すぐやってください。

DLCもやらなきゃね

ここまで書いといて自分はまだDLC未プレイである。DLCは何やらホラー要素もある?のかな?全く情報を入れていない。

本編では多少ヒントを見てしまい最大限の楽しみ方ができなかった後悔を少し残しているので、DLCはできる限り自力で楽しみたいところ。
しかし本編がこんなに完璧なのに一体なんの追加要素があるというのか、それも楽しみだ。

クリア後はやくもOUTER WILDSロスを味わっているので、完全な「OUTER WILDSゾンビ」と化してしまう前にもう少しこの宇宙を味わう所存。

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