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パラソムニア

半分くらいの記憶が無い。
確か、卒業してから久しぶりに友達と家で酒を飲みながら、大学で一緒に講義を受けていた時の話を面白おかしく喋っていたはずだ。
ゼミで同期だった奴の研究の進捗を話したり、教授の理不尽さを話したりしていたはずだ。

朝起きて、先に寝てしまった事を詫びるために、先日、共に酒を飲んだあの友達に連絡した。その友達は「昨日はお前の家にも行ってないし、アルバイト先で面倒くさい客に絡まれてた」と言う。
でも確かに私の朧気な記憶ではこいつと話していたし、自分の持ち物であるiPhoneの端末の中にもこいつの写真がある。
この記憶は何なのだろう。

自分のiPhoneの写真欄を見ると友達のふざけた一枚の前後に知らない場所の写真が残っていた。
今まで見たことも、行ったことのない場所の写真だった。
初めは、一人で酔い、自分の知らぬ間に酒でも買い足しにコンビニエンスストアに行く途中に知らない所を撮影したのだろうと思っていた。

最近は同じ夢を見る。夢だからかあまり詳しくは、その内容を覚えていない。どこかのアパートに入って行き、そこで過ごすという夢だった。あまりに現実的で、夢を見ていると思っていても、どうにもそれが夢だとは感ずる事が出来なかった。
そのアパートは今住んでる六畳間の一室にどこか似ているが、どこかが決定的に違う気がしていた。

最近は酷く忙しい。初めて配属された現場は新人の私にはとても目まぐるしく、以前見ていた夢など忘れさせるには十分だった。
導入するシステムの検証を行っており、私の先輩はそれ以外の仕事で手一杯のため、ここ三週間はその検証を私一人で行っていた。しばらくは酒を誰かと飲むことも出来ずに、ただ仕事を自宅で黙々とやり続けていた。

友達から酒を飲もうと誘いの連絡が来た。以前に私が記憶を曖昧になっていて、居なかったはずなのに謝罪の連絡をした奴だ。
久しぶりであることや、仕事が一段落したこともあり、すぐに返事をした。

あまり記憶が無い。
確か、昨日は友人と酒を飲みながら、今の職場の愚痴を言い合いながら酒を飲んでいたと思う。
しかし、疲れていたこともあり、すぐに酒に酔い、潰れてしまったため、その友達に謝るために仕事が始まる前に連絡をした。
友人は昨日会った覚えもないし、残業をしていたと返した。
私のiPhoneには、友人がネクタイを緩めてビールを飲む姿が写真に残っていた。その写真の前後には知らないアパートの入口が写されてていた。

最近、よく同じ夢を見る。
住んだことは無いが、どこか懐かしさを覚えるアパートで過ごす夢だ。
六畳の部屋は狭くも広くもない。ただ懐かしさの様な違和感があり、胸につかえて取れない何かがあった。今日も友人に誘われたから、酒を飲む。

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