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有機化学と薬学部その2

記事の趣旨: 基礎研究で培われた能力

基礎研究がなんで重要なのかは前述した前の記事を参考にされたい。
この記事で伝えたのは、臨床に出てからでも基礎研究を行った知識、特に有機化学は役に立つという事だ。

物質の安定性に関する感覚

多汗症の治療薬の一つに古くから使われる塩化アルミニウム(Ⅲ)水溶液がある。作用機序としては、塩化アルミニウムが汗腺に作用し汗腺自体を壊すだけでなく正常化させることで手汗や脇汗の分泌を正常化させてくれると考えられている。
これは有機化学を少しまともに勉強した人であるなら、塩化アルミニウムという物質自体の作用は何らか聞いた事があるであろう。「酸」の種類のうちのルイス酸試薬の一つである。あまり大学で科学に携わってない人にも伝わりやすいように、それがなんであるかは深堀はしないが、つまり勉強したことはあるのである。しかし、それは紙面の上の話だけのことである。決してその物質の結晶性がよく扱いはしやすいが吸湿性が多く、市販は水和物で韓方されており、こぼした顆粒を放置してしまうと潮解し、やや肌をピリつかせる(おそらく微量ながら塩酸が発生している)。こんな事は大学の授業でもさすがに出てこない。
私が言いたいことはここにある。いくら勉強しようともそれはあくまで誰かが考え実証し、誰かによって確立された理論理屈のお勉強なのである。すなあわち「科学という学問が生まれる場所は教室にはなく、研究室にあるのだ。」
とかっこよく名言ぽいことを言ってしまったが、私は切にそれを感じ、思い、それがおざなりにされようとする風潮と理解し得ない同僚が多くいることをすごく悩ましく思う。もちろん、それをすべての人間がやる必要はないがあくまで大学という場所が国家資格のための専門学校に成り下がってはならないのだ。

研究によって培われる論証能力

研究室に配属されて何をするのか?それはいままで、その研究室が行ってきた研究の紹介を指導教員が行うだろう。そこからテーマ を渡されて、研究が自己意思ではなく、指導教員の頭脳の中のうちで展開されていく。
そんなの悔しくないですか??って私なら思ってしまうんですよね。全員は想わないと思うのですが自分の人生の貴重な時間を使ってやるのにも関わらず、自己意思が反映されていないなんてと。まあ、事前に研究とはどういうものでどういうことがやりたいなどとか強く想わなければそういう発想は生まれにくいのかもしれませんが。
研究は、特に「有機化学」は実験が料理みたいです。つまり反応時間がどれだけかけたかとか非常に重要な研究データとなるため、適当な時間配分はできませんし、お皿にもる際にこぼしたなどとなっては、材料費を管理するお母さん(教授)に大変叱られます。まあ、そこはそこなのですが、なんどか実験をしているとなんとなく流れがつかめます。すなわち、まず実験を行い、実験結果を検証し、何に問題があるか検討します。過去の論文や、類似の専門書などを読み漁り、なんぞなんぞを繰り返します。その先に、実験成功を手に入れられたならもうそれは、論証能力の成長期を手にいれたようなものです。つまり、研究室生活で得られるものとは、社会人として大事な能力の一つの考え方であるPDCAなのです。そして、指導教員への報・連・相です。

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