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クリームパンだから断れなかった

「朝食は抜いてきて下さい」と書かれている注意事項を忘れないように、午前中は慎重に白湯だけ飲んで過ごしていた。予約の時間の10分前には到着。血圧を測って呼ばれるのを待つ。今日は年に一度の健康診断。

はじめに問診。陽気な女医さんで、朝は白湯だけで済ませましたと言ったら褒めてくれた。ちょっとしたことでも凄く肯定してくれるというか褒めてくれるというか、その言い方がまたわざとらしくなくて、なんか良かった。

尿を取って、着替える…といっても、靴をスリッパに履き替えるだけ。
検診してもらう為、数十分待つ。
待ってる人は私含めても2人や3人。
去年はもう少し多かった気がするから比較的空いてる日だったのかもしれない。

呼ばれて検診。ニコリともしない女医さん。嫌味はなく、ただただ淡々とこなしていく。ただ、一通りの検診が終わったあと(胸の音聞いたりとか)の会話で少し笑っていたので、なんだか安心した。ギャップ。ペンは恐らくだけど、ジェットストリート(黒単色)を使っていた。

その後は採血。きっと看護師の方から見ても私の血管は採血しやすい部類の浮き具合なのではないか?と自負している。スッと刺されて、すぅーっと血の気が引いていくのが分かる。痺れとかはないけど、なんとなく居心地が悪い。
今朝からにしん蕎麦が食べたくなっていた。絶対終わったらエネルギーと魚(食べたい)欲を満たす為に、私はにしん蕎麦を食べるんだ。血が減っていくのを感じながら、願望はほぼ決定事項になっていた。

採血が終わったあとは簡単な身体検査。
身長体重を測り、聴覚と視力を確かめ、心電図を取る。

「何か運動されてましたか?」と、心電図をとるたびに毎年聞かれるので、その旨を問診の時に伝えたら「何か運動されてたんですか?」と聞かれた。
いやまあ当たり前だよね。私にとっては何度やったことでも、その女医さんは初めてなんだから。
「3歳から11歳まで水泳をしていました。」と伝えると「じゃあ、スポーツ心臓の可能性もありますね」と納得してくれて、カルテに(おそらく)そのことを記してくれた。

ということもあって、今回は必要以上心配されずに心電図も終わった。45とか言われて、いつもどおりだなという感じ。

最後は胸部のレントゲン。柔和な男性が丁寧に説明してくれてすんなり終わった。
問診からレントゲンまで約30分。
結果は郵送で頼んだから今日はこれだけ。
人が少ないのを差し引いたとしても、凄くスムーズ。有難い。

スリッパから靴に履き替えて受付へ。
実は、この施設は健診が終わったあとパンと飲み物を無料でくれるのだ。
以前はイートインスペースを設けていて、そこで食べて帰るという形だったが、今はその空間は封鎖されている。

なので、ここ数年は帰りしに受付でくれるのだが、今日は断ろうと思っていた。
なんせ私は、これからにしん蕎麦を食べるのだから。
「お疲れ様でした」と渡されたパン。
断ろうと思って見たそのフォルムに、一瞬固まった。

だってそれがクリームパンだったから。

パン屋に行ったら必ず買ってしまうパンリスト上位、いや、例外を除くとほぼ1位なのです、クリームパンって。
やさしくなめらかで、「小さな幸せ」って言葉が似合うと思うんですよクリームパン。「やけ食い」するには最も遠い場所にいる。栄養素云々考えなくて良いならちょっとした幸せ感じたいと思った時にいつでも食べたい。

そんなクリームパンが目の前に出現したので、「パンは要りません、ありがとうございます」と言えなかった。
どうしたものかときょどっている私を見た受付の方が、きょとんとした顔でこちらを見ていた。

悩むも束の間「…ありがとうございます」とクリームパンと乳酸菌飲料を手にして、その施設を後にした。

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