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治験に使えそうなオープンデータを探してBIツールで活用法を検討しました

こんにちは、kudoです。今回は、BIツールのTableauを使って、オープンデータである患者調査データと医師統計データを治験の医療機関選定に活用できないか試してみたので、その内容を紹介します。

結論としては、患者調査/医師統計データと他のデータを組み合わせることで医療機関選定に役立つかもしれないことがわかりました。

背景

前回はDPCデータを使った医療機関選定への活用方法を紹介しました。医療機関選定といっても様々な観点(治験対象患者数や実施体制など)がありますが、治験対象患者数が多いと思われる医療機関をピックアップする目的でDPCデータを使用しました。

そして今回は、他に活用できそうなオープンデータはないか調べてみました。e-Stat(政府統計のポータルサイト)内を調べた結果、DPCデータを使用したときと同じ目的で患者調査データと医師統計データが使えるかもしれないと思いましたので、Tableauを使って試してみました。

DPCデータを使った医療機関選定への活用方法は以下をご覧ください。

e-Statは以下よりアクセスできます。
https://www.e-stat.go.jp/

患者調査データ

患者調査では、傷病分類別の患者数や受療率などの結果を確認することができますが、今回使用したデータは推計患者数(総数)です。以下より使用データをダウンロードすることができます。

推計患者数のデータは4つの変数(傷病分類、都道府県、年齢階級、性別)から構成されています。また、入院患者数、外来患者数、総数(入院+外来患者数)ごとにデータセットが分かれているのですが、今回は総数のデータを使用しました。

Tableauにて可視化した結果が以下になります。

3つの変数(傷病分類、都道府県、年齢階級)に応じた推定患者数を確認できるようになりました。なお、今回は性別を問わない総数を表示しています。

実際に<傷病小分類>にて<腸閉塞>、年齢階級にて<25歳以上>を選択すると以下のように表示されます(降順にしています)。

1.患者調査データ_実例画面

患者調査に関する詳細は、以下の厚労省のサイトにて確認することができます。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html

今回は、確認時点で最新版となっていた2017年(平成29年)のデータを使用しています。ちなみに、次回は2022年(令和4年)の6月下旬に2020年(令和2年)のデータが公表される予定とのことです。

医師統計データ

医師統計(正式名は医師・歯科医師・薬剤師統計)では、医師の従業地(市区町村)や診療科名などの分布情報を確認することができます。今回は、2つのデータ(診療科ごとの医師数、専門医資格ごとの医師数)を使用することにしました。

診療科ごとの医師数
以下より使用データをダウンロードすることができます。

診療科ごとの医師数データは都道府県、二次医療圏、市区町村別に集計されています。

Tableauにて可視化した結果が以下になります。

診療科、都道府県、二次医療圏、市区町村に応じた結果を確認できるようになりました。

実際に、”メタデータ”の<医師数_市区町村区分>において
<診療科>にて<消化器外科(胃腸外科)>を選択
<都道府県>にて<福岡県>を選択
すると以下のように表示されます(降順にしています)。

2.診療科ごとの医師数_実例画面

専門医資格ごとの医師数
以下より使用データをダウンロードすることができます。

専門医資格ごとの医師数データも都道府県、二次医療圏、市区町村別に集計されています。

Tableauにて可視化した結果が以下になります。

専門医資格、都道府県、二次医療圏、市区町村に応じた結果を確認できるようになりました。

実際に、”メタデータ"の<専門医数_市区町村区分>において
<専門領域>にて<消化器外科専門医>を選択
<都道府県>にて<福岡県>を選択
すると以下のように表示されます(降順にしています)。

3.専門医資格ごとの医師数_実例画面

医師統計に関する詳細は、以下の厚労省のサイトにて確認することができます。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/33-20.html

今回は、確認時点で最新版となっていた2018年(平成30年)のデータを使用しています。次回は2021年(令和3年)の12月に2020年(令和2年)のデータが公表される予定とのことです。

活用方法

紹介したデータの活用プロセス案は以下になります。

4.紹介したデータの活用プロセス案

具体的に事例を入れると以下になります。

5.紹介したデータの活用プロセス案(事例)

着眼点を記載すると以下のようになります。"診療科医数、専門医数が多い地域 = 受診する患者数が多い地域" という仮定です。

6.紹介したデータの活用プロセス案(着眼点)

分析・評価

DPCデータを使用したときと同様に、治験対象患者数が多いと思われる医療機関をピックアップする目的で活用できないか試してみた結果、患者調査/医師統計データだけでは難しそうです。主な理由は以下になります。

理由1:
治験対象患者が集中しそうな市区町村を推測することはできても、医療機関の特定まではできない

理由2:
"診療科医数、専門医数が多い市区町村=治験対象患者が集中する" とは必ずしも限らない

なんとか活用できないかなと考えてみたところ、以下の対応をすることで活路がありそうだと思いました。

理由1の対応策:
市区町村から医療機関を特定するために、SMOやKOLにヒアリングしてみる。また、治験依頼者やCROが有用な情報を持っていないか調査する。つまり、既存の医療機関選定の方法を活用するという策です。

MRは担当エリアの医療機関情報を把握していると思いますので、MRにヒアリングしてみてもいいかもしれません。

理由2の対応策:
診療科医数、専門医数が少ないにも関わらず治験対象患者が集中している市区町村・医療機関は、必要に応じて別の方法にて探し出す。具体的には、理由1の対応策と同様に既存の医療機関選定の方法を活用する。

提示した活用方法では、このようなケースの市区町村はピックアップできませんが、レアなケースかなと思っています(疾患によって異なると思いますが)。一般的には、診療科医数や専門医数が多い市区町村に患者が集まると思います。


今回は、医療機関選定での活用方法を検討しましたが、実施中の治験における被験者募集でも活用が可能かもしれません。

例えば、症例エントリーが枯渇した場合、今回紹介したツールにて周辺に診療科医数/専門医数が多い市区町村が存在するか確認し、存在するのであれば、その市区町村内に連携病院や協力要請が可能な医療機関がないか探してみることで症例が見つかるかもしれません。

まとめ

・患者調査/医師統計データをBIツールで可視化し、治験に活用できるか試してみた
・患者調査/医師統計データだけでの活用は難しそう
・他のデータと組み合わせると医療機関選定や被験者募集に役立つかもしれない

最後に

業界では、治験に参加する被験者が思うように集まらないことが課題の一つとして認識されており、各組織にて様々な取り組みがされています。治験対象患者数が多い医療機関を見つけ出し治験に参加してもらうこと、あるいは様々な視点から被験者募集の取り組みを行うことで少しは貢献できると思います。

今回はオープンデータとBIツールを使った方法で試してみたので、皆さんの参考になればと思います。

なお、
・今回使用した患者調査/医師統計データは、3年以上前のデータであるため現状と異なる可能性がある
・患者調査データは推定患者数であるため実際の患者数は異なる可能性がある(当たり前ですが)
上記の理由から、あくまで参考値として使用することがよいと思います。


ご質問等がありましたら以下までお問い合わせください
advance10101@gmail.com

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