RPAで治験業務が削減できるか検証してみた -書式10(変更申請書)の作成-


こんにちは、kudoです。今回は、RPAで治験業務がどれくらい削減できるか検証してみました。書式10(変更申請書)の作成業務において、一定の効果が認められたので、ポイントとなる部分を中心に検証内容について紹介します。

背景と目的

私は前職でCRAとして治験に携わる仕事をしていました。治験は、開発中の薬に関する有効性、安全性などを確認することが主目的となり、関連する職種(CRC、CRAなど)では専門性が要求されます。

しかしながら、実際の治験業務では専門性が必要となる業務だけでなく、機械的・定型的な作業が中心となる書類作成の業務も発生します。書類作成の作業を削減することで、治験にかかわる職種の業務価値が高まると思っています。

そこで、今回は機械的・定型的作業の削減を実現する仕組みとして、RPAを使用し、治験書類の作成作業がどれくらい削減できるか検証することにしました。

そもそもRPAとは、

「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の頭文字から取った略語で、「ロボットによる業務自動化」を意味します(以下引用)。
https://rpa-bank.com/report/7318/

検証の流れ

今回は以下の流れで検証を行いました。

1.検証の流れ

対象業務の分析・選定

対象業務は、治験で発生する書類の特徴とRPAの得意分野/不得意分野を照らし合わせて、書式10(変更申請書)の作成に決定しました。書式10の作成に決めた主な理由は以下になります。

・機械的、定型的な作業が中心
・作成頻度が他の書式(例:書式3、書式11など)に比べて多い

なお、RPAの得意業務は以下の記事が参考になると思います。

書式10(変更申請書)の様式は、以下のサイトに掲載されている[統一書式の電子ファイル]からダウンロード可能です。
http://www.jmacct.med.or.jp/plan/gcp.html

RPA導入前/後の業務プロセス

書式10(変更申請書)の一般的な作成プロセスは以下になると思います。

2.書式10(変更申請書)の一般的な作成プロセス

そして、今回の検証では以下のプロセスに変更しました。

3.検証用プロセス

上記2つのプロセスにおいて、1施設分の書式10を作成する時間を測定・比較しました。検証用プロセスでは、RPAの作業効率を上げる目的として、以下のようなRPA用のExcelデータを用意しました。

4.RPA用のExcelデータ

なお、書式10の様式テンプレートには、 エラーが発生しないように予め処理を施しています。

RPAのワークフロー

検証用プロセスをベースに作成したRPAのワークフロー(RPAの処理手順)は以下になります。

6.RPAのワークフロー画面(全画面)

なお、今回はUiPathの無料版を使用してワークフローを作成しました。UiPath(無料版)のセットアップは、以下の記事が参考になると思います。

検証結果

7.検証結果

1施設分の書式10の作成が完了するまでの時間は、一般的な作成プロセスに比べて長くなりましたが、作成者が作業する時間は、RPA導入により35%削減されました。

検証結果の分析・評価

今回は、1施設分の書式10を作成する時間を測定しましたが、仮に30施設分をまとめて作成する場合には、約1時間18分の作業時間削減が見込まれます。

まとめて作成する数が多いほど削減時間も大きくなるため、第2相や第3相の大規模試験での活用が効果的だと思います。

具体的事例としては、治験実施計画書や説明/同意文書(ICF)の変更時には全施設が変更申請の対象になると思いますので、そのようなケースにおいてRPAを活用すると有効だと思います。(治験実施計画書やICFの変更時は、やるべき業務が増えるため、RPAの活用によりCRA等の業務負担の軽減になると思います)

また、RPAによる自動化を行った場合、RPA用のExcelデータに間違いがない限り、入力ミスは、ほぼ発生しないため修正作業の削減も期待されます。

今回は、書式10の作成をRPAの対象業務としましたが、書式4(治験審査依頼書)、書式5(治験審査結果通知書)、書式16(安全性情報等に関する報告書)の作成もRPAによる効果が見込まれると思います(書式10の作成を対象業務とした理由と同様であるため)。

本格導入に向けて

検証内容の紹介は以上になりますが、一般的には今回のような検証を経て、RPA本格導入の可否を判断することになると思います。

ちなみに、本格導入に先立って対応が必要となるポイントは以下になります。
・実際にRPAを使用する端末で検証を行う
・RPAを推進する体制を構築する(組織での導入の場合)
・RPAの運用ルールを制定する

今回は、個人的に検証を行っていますが、本格的にRPAの導入を検討している場合には、対象業務の分析・選定からスタートする必要があると思います。

まとめ

・書式10(変更申請書)の作成業務にRPAを導入して効果を検証してみた
・RPA導入により作業時間が35%削減された
・大規模試験での活用が効果的だと思われる

最後に

非定型で専門的な業務(症例モニタリング、データマネジメントなど)に集中しすぎて、機械的・定型的な書類作成業務(IRB審議用書類の作成など)で凡ミスする…なんてこともあると思いますので、今回紹介したようなRPAなどの活用を検討してみてもいいかもしれません。

RPAの活用により人件費の削減や従業員満足度の向上が期待できると思います。

今回紹介した内容以外にも業界内でのRPA活用事例は増えてきているので、活用の幅は今後広がるかもしれませんね。


ご質問等がありましたら以下までお問い合わせください
advance10101@gmail.com

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