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ジャックフロストが見せた冬と春。

※以下ネタバレあり

毎日放送のドラマシャワー枠6作目として
放送されていた「ジャックフロスト」。

イラストレーターの奥沢律と営業マンの
池上郁哉。古びた喫茶店で知り合い、
やがて恋に落ち、幸せな同棲生活を
送っていた。しかし自由気ままに生きる
律とそれに振り回される郁哉の関係には
次第にすれ違いが生じてくる。
ある冬の日、喧嘩をして家を飛び出した
律はアクシデントに遭い、意識を失う。
目覚めると律は郁哉に纏わる記憶だけを
失っていた。
2人の関係をゼロからやり直したいからと
郁哉は、付き合っていた事実を伏せて
共同生活を再会する。なくした記憶を
思い出すべく馴染みの場所へ行きたがる
律と、気が乗らないながらも付き合い、
2人で過ごした時間が脳裏を過る郁哉。
一方の律は、記憶を失ったまま郁哉に
惹かれていく自分に気が付いていく。

ジャックフロストホームページあらすじより

【ジャックフロストとは】

そもそもタイトルにもなっている
ジャックフロストって何なんだろう
と思い調べてみた。

冬が厳しいときには笑い声を
上げて寒さを振り撒き、春には
霜の模様を残して溶けて消える
霜の妖精

これがジャックフロストらしい。
この話を知ってから最終話を見て
演出凄~っ…ってなった。

【冬の寒さ】

律が約束してた日に仕事を入れた
ことから郁哉が不満をぶつけて、
律がそれを好きだよって軽く流した
ことが更に郁哉を怒らせて、

「そういうので誤魔化すなよ」

って喧嘩になって、郁哉に別れを
切り出された律が家を飛び出して
事故に遭って。

関係を伏せたまま一緒に過ごして
ようやく上手く行き始めたと
思ったら、付き合っていたことに
律が気付いてしまう。

「俺のこと嫌いになったから、
 忘れたままの方が都合が
 良かったってこと?」

嘘をつかれてたことにショックを
受けてしまって、もう一緒に
居られないと同棲していた家を
出て行ってしまう律。

ここまでの流れは完全に冬。
2人の関係性には亀裂が入って、
その亀裂を直すきっかけにと郁哉は
嘘をついたけど、その嘘が更に
亀裂を深くしてしまった。

【春の霜】

家を出てから、新居に行くまでの
時間。1人でこの辺を回りたいと
言った律が立ち寄った思い出の
喫茶店。窓には霜がついている。

でもそのあと、律が少しずつ
郁哉との記憶を思い出し始め、
ふとカーテンをめくるとそこには
郁哉の姿。その瞬間、その周りの
霜が溶けていく。記憶を取り戻した
律と、律といたいと思って走って
探しに来た郁哉。2人の想いが互いに
通じたとき春が戻ってくる。

それをジャックフロストの妖精が
残したかもしれないと連想させる
霜で表現するのが何とも綺麗。
この演出に物凄く惹かれた。

【完璧すぎるキャスティング】

ジャックフロスト最大の魅力は

キャスティング!!

特にメイン2人は目を引いた。

《鈴木康介編》

1話初見で見たときの郁哉は、
穏やかで優しすぎて損しそうな子
という印象だった。

他の作品だと、この手のタイプは
律みたいなタイプに振り回されても
しょうがないな~って付き合うし、
とことん甘やかしそうなイメージ。

でも郁哉は違う。多分普通に自我が
強い。それが分かるのが律の元カレ
圭吾が仕事で家に来ていたシーン。
圭吾に対して敵意むき出しで、
空気をピリピリさせる。それは、
圭吾が帰ったあと律に対しても。

「ていうか元カレ呼ぶんだったら
 連絡しろよ、知ってたら俺だって
 気遣って」

「仕事…ね」

「仕事って言ってもわざわざ家まで
 呼ぶ必要ないしぶっちゃけ
 下心あったんじゃないの?」

と凄い勢いで畳みかけるし、
かなり余裕のなさが滲み出てる。
なんたって郁哉は、律にも

「郁哉って意外と独占欲強いんだね」

と言われるくらい独占欲が強い。

意外な面は他にもあった。

「郁哉くんってジャケット似合うよね」

って律に言われたとき、「何急に」とか
言って照れるのかなと思ったら、

「何を今更」

って平然と言う。
さらに律が絵を描いているのを見て

「何だ、また俺書いてるのかと
 思ったのに」

って普通に言ってくる。ちらほら
自信家な一面が見え隠れするのだ。

でも、支配したいタイプなのかと
思いきやそうでもなかったりする。
律に対して普通に

「最近寂しかったんだもん~」

とか言う。郁哉は結構面倒くさい
彼女タイプだと思う。
ただ優しくて穏やかなだけじゃない、
ヘタしたら衝動的に律のことを
閉じ込めておきそうなくらいに重い
独占欲と嫉妬心があって、
「言わないでも分かってよ!」
みたいな面倒くさい一面もある。

その二面性みたいなところを、
鈴木康介くんは繊細すぎるくらい
繊細に演じていたような気がする。
横からそれは郁哉にも問題あるよ?
って女友達的意見をしたくなる
くらいの人間っぽさがあって、
郁哉という人が生きているって
感じがした。

《本田響矢編》

そして本田響矢くんも凄かった。
少女漫画から飛び出してきたような
綺麗で愛嬌のある顔立ちから、
ツンデレ王子的な役柄も多いけど、
本田響矢くんは天性の人タラシが
一番似合う気がしてる。

「うん…でもやっぱりご飯は一緒に
 食べた方が美味しいかなあって…」

と郁哉に言うシーンの律はこの世の
あざとい詰め込んだのかってくらい
あざとかった。だけど、律もただ
甘くあざといだけじゃない。
郁哉との関係に気付いたとき、
弟の柊路に対して、

「俺これ以上嘘つかれたら
 何するか分かんないよ?」

と言うシーンがある。
柔らかい口調ではあったし、
その後の声色は全然優しいけど、
郁哉のことになるとリミッターが
外れる感じが垣間見えた。

別れ話のシーンも、

「片付ければいいんでしょ?」

って風船を雑に落としていたし、
元カレの圭吾にも

「こうなると全く聞かないもんな
 律って」

と言われてた。

基本ベースは自由でのほほんとした
律が郁哉のこととなると余裕が全く
なくなる。その辺を感じさせながら
事故に遭って記憶がない時の不安や
動揺を印象づける本田響矢くんの
儚さ、脆さに引き込まれた。

一見、郁哉が握ってるように見える
主導権は実は律が裏で操っていて、
でも決定権は結局郁哉が持ってて…
みたいな掴めないふみりつの関係は
ジャックフロストが操る冬と春くらい
移ろいやすいのかもしれない。

でも、幸せそうに見つめ合う2人の
春がどうか末永く続きますようにと
願わずにはいられない最終回だった。

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