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知らぬ間に覗き見する側になっている「彼女と彼氏の明るい未来」の余韻が凄い。

本編の再生が終わり、CMが流れ
始めた画面に向けて、私は一人、
余韻ひたひたおひたし状態で(?)
「構成うまあ……」と呟いていた。

心掴まれたのはいつだっただろう。
気付くと、2人の行き着く未来に
釘付けになっていたように思う。

あらすじ
小学校教師・青山一郎は、平凡で
冴えない人生を歩んできたが、
人生最大の奇跡が起こり、佐々木
雪歌という、最愛の彼女ができた。
自分には贅沢すぎるような…幸せな
同棲生活をおくっていたある日、
親友でITアドベンチャー社長の
西野洋平が開発した≪過去が
見られるVRマシーン≫を試す
ことになる。半信半疑でVRを手に
取った一郎だったが、目を疑う
ような絶望に出会ってしまい…!?
それは、自分の知らない、知りたく
ない!?雪歌の過去だったー。
超・清純に見えたはずの彼女に、超・
破天荒な“黒歴史”があったとしたら…。
彼女のすべてを受け入れて、今の
彼女を愛することができるのか!?
2人の幸せ~な毎日が少しずつ
変わり始める…!?最愛の彼女の
驚愕の≪過去≫を知ってしまった
主人公の≪絶望≫から始まる!?
急転直下のブラック・ラブコメディ!

ホームページから引用

【一郎目線で描かれる前半】

前半は基本、一郎の目線で描かれる。
仕事でも親や上司に気を遣い、
子どもたちからも舐められる一郎。
それでも毎日をこなせているのは、
愛おしい大好きな彼女がいるから。

だけど、親友が発明した≪過去が
見えるVR≫を試したことで、一郎の
幸せな日々は急激に崩れていく。

一郎が見たのは、恋人がいたことは
ないと話していた純粋な彼女が、
複数の男と関係を持っている過去。
これは現実?どうしてあんなこと?
彼氏はいたことないんじゃ?
だとしたらどうしてあんな映像が?
予想だにしなかった彼女の一面を
見てしまった一郎は、次第に疑心
暗鬼になり、追い詰められていく。

子どもたちの「走れメロス」の
音読を聞き、暴君側の台詞に、
「分かる-!」と声を漏らすほど、
一郎は彼女である雪歌のことを
信じられなくなっていた。

知らなければ、変わらずに雪歌と
幸せな日々を過ごしていけたのに
知ってしまった以上、これまでと
同じようには振る舞えない。
気になって、雪歌の過去を全て
見てしまいたい衝動に駆られる。

一郎のどうしようもない葛藤に
見ているこっちまでもどかしい
気持ちになった。

それでも一郎は、人のことを信じて
待つことなんてできるのかという
児童の問いに対してこう答える。

「人のことずっと信じて待つなんて
 無理だわ」
「それでも大切だと思う気持ちを
 大切にしよう」

そして、その言葉とともに、VRを
見ることを封印し、目の前の雪歌を
大切にすると決める。

〇雪歌目線で描かれる後半

一郎が決意をした辺りからは、
雪歌の視点で物語が描かれていく。
それは、あまりにも悲痛で残酷に。

雪歌の視点に切り替わって最初に
起こる出来事が「VRの発見」だ。

一郎が、今の、自分の愛してきた
雪歌を愛していこうと決めた頃、
雪歌は、一郎が自分の過去をVRで
覗き見していたことを知ってしまう。

雪歌を愛していくと決め、前向きに
帰ってきた一郎を待っていたのは、
ものすごい拒否反応を示す雪歌。

謝罪と説明をしようとする一郎に
雪歌は泣きながら、こう告げる。

「気持ち悪かったよね」
「でも、私は今あなたが気持ち悪い」

この段階では、雪歌の過去に何が
あったのかはまだ描かれていない。
だけど、雪歌がどれだけ自分の
過去に嫌悪感を抱いているかはその
反応を見ればすぐに分かる。

そこまでは、
「雪歌、何であんなことを…?」
「一郎が探りを入れても隠そうと
する過去には何があるの?」
「今の雪歌は嘘なの?」
と一郎とともに疑心暗鬼になって
雪歌を懐疑的な目で見ていたけど、
後半は雪歌の視点を体感させられた。

雪歌の過去についてはここでは一応
伏せておくが、雪歌の立場になった
場合、私も一郎には絶対に隠す。
自分ですら「気持ち悪い」と思う
過去を一郎には知られたくない。

だけど、一郎はそれを知っていた。
忘れたい過去から離れさせてくれる
存在だった一郎が、勝手に、何度も、
何日も自分の過去を覗き見していた。
そして、現に少し距離を取っていた。
どれだけ好きだったとしても、それ
以上に「気持ち悪い」が勝つのも
無理はないと思う。

そして、あんなにも想い合っていた
2人は、決裂し、そのまま関係は
終わりを告げる。

【ふと気付いた最終話手前】

どんな過去があっても、どんな
雪歌も、受け止める自信があるから
ただ話して欲しかっただけの一郎と、
嫌われたくなくて、思い出したくも
なくて、今の幸せを壊したくなくて
話すのが怖かった雪歌。

2人が涙ながらに怒りや、想いを
ぶつけ合うシーンは本当に辛くて、
進んでいくストーリーを見ながら
どうすれば2人は戻れるかを考えた。

だけど、一郎は知ってしまったし、
雪歌は知られてしまった。
その時点でもうどうすることも
できなかったのだと思う。
どちらの気持ちも分かるのに、
見ていることしかできない。
その状況に置かれたとき、私は
あることに気が付いた。

「あ、私、今、一郎と同じなんだ」

【2人を覗き見している視聴者】

その気付きは最終話で確信に
変わった。

最終回では、1年の月日が流れ、
2人が再会するところが描かれた。
雪歌は1年前には話せなかった
自分の過去の事を打ち明けられる
ようになっていて、一郎もずっと
聞きたかったことを雪歌に真っすぐ
聞けるようになっていた。

お互い何か言いたげで、でもどこか
現状に納得していそうな、つかず
離れずのリアルな距離感。

それまでは、視聴者に2人の過去や
現状を伝えるように描かれていたが
最終話は、少し違うように見えた。

「彼に見られたくない過去を勝手に
見られてしまった」彼女と、
「彼女の過去を勝手に見てしまった」
彼。そんな2人の今を視聴者が
勝手に覗いているような、変に
ドラマチックにしていないリアルな
時間の流れ方と、余韻を持たせた
ラストに私はがっつり心を掴まれた。

甘酸っぱいような、ほろ苦いような
何かが始まりそうだけど、何にも
始まらない気もする、そんな絶妙な
空気感で描かれる最終話。

自分が覗き見している側だと
認識した瞬間のぶわーっと広がる
あの感覚を是非味わってみて欲しい。

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