その拝み屋は名前は覚えない(実話怪談)

知り合いの拝み屋の話
拝み屋の本業はあんま
近所の人は本人が居ない所では拝み屋さん
本人の前ではあんまさんと呼んでいる
私もそれにならってあんまさんもしくはおいさん(方言でよそんちのおじさんと言う意味)
頼りたい時はイケメンやお兄様と呼んで機嫌を取る
拝み屋の本名は知らないし、私も教えていない
それで上手くいっているし友人でもないので
あくまで知り合いで呑み友の関係

拝み屋のスタイルも同じで、お客さんの名前は覚えず、年齢、職業構わず
「お前ー」
で統一
付き添いの人(頭が上がらない人)には
「モシモシ」
身の回りの面倒を見てくれるご近所の奥さん達や美人には
「あなた」
私は普段は
「お前ー」

「アレ」
美人の霊を連れていたりご機嫌とりの時は
「お嬢さん(揉み手付き)」
拝み屋は全盲のため、行動範囲が狭いので大体これで通じるが、初対面の人は怒る
私も怒った

付き添いの人が名前を覚えきれないと言う説明をしてくれるが、口の悪さで十分喧嘩を売っている

口の悪さは今は亡きあんまの先生の影響と言う話を聞いた(あまり納得できないけど)

もう一つ名前を覚えない理由は拝み屋に成り立ての頃に遡る

以前は名前で呼んで、予約制でも無かったそうで一見さんの客も来ていた
マッサージの仕事の時には金銭管理で付き添いの人が一応居たが、トイレや他のお客さんの対応で席を外す事もあった
その隙を突かれ、あるお客がマッサージ料を誤魔化した
良くある手口で金額の低いお札を偽って渡す
相手が全盲だから油断したと思われるが拝み屋はちゃんとお札の判別が出きる
それを指摘された客は逆に
「目が見えないくせに客から金をだましとろうとしている(実際は差別用語のオンパレード)」
と騒いだ
元々短気な拝み屋もその発言に怒り、暴言を吐き、喧嘩になった
警察にも通報したが、拝み屋と客しか居ない部屋で、お釣りとしてお札もあったのでうやむやになった

結局付き添いの人が数え直したら、足りなくて、被害届を出しても、拝み屋の証言の信憑性の無さで結局泣き寝入りになった

短気かつプライドも高い拝み屋は客と警察を恨んだ
どうにかして謝らせたいと思った時にある神社を思い出した
以前、別のお客さんの悩み事に関わった神様

付き添いの人に頼んでそこの神様に、
「(お金を誤魔化した)客の名前と対応した警官の名前に病を移してやってください」
と頼んだ(本当はいろんな手順があるが、拝み屋より省略済み)

1週間後に例の警官が上司と共に謝罪に来た
警官の上司が拝み屋の知り合いで
「あんまさん、あんた呪いかけたでしょう?」
と聞いてきた
例の警官は
あれから謎の湿疹と痒みに悩まされ、病院に行ってもストレスが原因と言われ、軟膏を塗っても良くならなかったと言う
そこで霊障じゃないかと占い師を頼ったら呪いじゃないかと言われ、上司に話したら
「君、拝み屋さんを怒らせたね?」
と言う事で拝み屋を再度訪ねたと言う
警官はそこで一緒に神社に行き、神様と話して終わった

警官は

あのお客はあれから姿を見せず、住所の書かれた場所に行っても誰も居なかったそうで

「アレがどうなったかは俺も知らん。神様に聞いても『俺のやりたいようにやらせろ。お前に返る事はない』と言われた。これ以上聞いたら俺もただじゃあすまん。だからこれで終わりだ」

拝み屋が拝んだ時はただ困らせる為なので、当然拝み屋にも返しはあった
下半身が湿疹と痒みで苦しんだそうだ
拝み屋曰く
「俺があいつを恨んであの神社に行ったのも神様に仕組まれたかもしらん。あいつは俺だけでなくあの神様も怒らせることをした。だから俺は神様に悪いことを頼まないように名前を覚えなくした。頼まなくても心に持ったら利用される」
それ以降は完全予約制と一見さんお断りにした

神社に呪いを頼んではいけない

終わり

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