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神様に呪いを頼まれた話(実話怪談)

私が住んでいる場所は水神(竜神)信仰がある
日照りは数十年に1度あるかないかだが水害は毎年あっている
降水量が多いため簡単に川が氾濫し、田畑も水で作物がしおれる事もある
こういった自然災害に対応するため我々の祖先は神を祀り、水神の怒りを鎮めた
水神は気性が荒いので祀っていても気を付けないといけない
私の生まれ故郷の産土神社も水神が祀られている
気性が激しいのと、森の中の神社のため、不審者も出没したため、1人では立ち入りは禁止されている
また水神が住むと言われる井戸も大切にされる
農家にとっては井戸の水は生活用水の他に作物を育てるためにも利用される
特に稲は苗に成長させるのにも大量の水を要する
そのためにも井戸から水を汲み出す
役目を終えた井戸にも神は残るため、神事を行い引っ越して貰う
井戸にまつわる出来事でこう言う事もあった
通勤中にも井戸があり、蓋と息抜き用の穴を空けた竹の棒が設置された
役目を終えたんだなと通勤の度に見ていた
息抜き用の竹も外されいよいよかと思ったら野ざらしとなっていた井戸の回りに木枠が設置され、あっという間にプレハブの物置が設置された
井戸は今もそこに残っている

命に直結する井戸は粗末に扱うと命に関わる祟りがあると言われており、いろんな方から井戸にまつわる話を聞いた

その中から拝み屋から聞いた話
拝み屋は普段は按摩をしており、按摩の客からの相談に無料で対応している
ただ徐霊は出来ない
得意とするのはかかって来た呪いを返す呪い返し
相手さえいれば相手が死んでいても返せると言う
そして神様から借りた能力
神様の話を聞く耳
普段はその2つの悩み事を聞いて、神様からの願いも聞いている
この日も客から相談があった
その客の息子が原因不明の高熱を出して寝込んでいるとのこと
その客から水の匂いがしたので水神が関わっているのでは?

と感じた拝み屋は原因を探るために客の家に向かった
客の家は以前農家だったが今は廃業していた
「この家に井戸はあるか?」
拝み屋の問いに
「あります。使わなくなったので埋めるために息抜きを行って、神事の日取りを考えていましたがどうかしました?」
「水神さんが物凄く怒ってる。この家は寒くないか?」
拝み屋はその家に来た瞬間、重圧感と水の匂いを異常なほどに感じていた
「確かに寒いです」
「この家に小さい子どもがいたら真っ先に寒気に当たってたな」
庭にあると言う井戸に行くと、息抜き用の竹が抜かれ、蓋を閉められた井戸があった
「どうなってる?俺は目が見えないんだ」
客は状況を説明すると
「お前、何て事をしたんだ」
「俺じゃないよ。水神さんが怖いのはよく知ってるから」
怒る拝み屋に客は否定する
「兎に角蓋をずらして空気穴を空け直すよ」
何か重いものが動く音を聞いてると
『ねえ、俺ここに住んでるイケメンなんだけど』
若い男の声が聞こえてきた
「イケメンさん。あんたは井戸蓋をした阿呆が誰か分かりますか?」
自称イケメンが何の神かは分かったけれど名前を出さずに聞いてみた
『この家のバカ息子の仕業だ。とっとと井戸を潰そうとしたんだ。だから水神さんが怒った』
「それはすみませんでした」
『でもこの家の水神さんがあのバカ息子を呪い殺す訳には行かないからお前に託す』
自称イケメンの言葉に拝み屋は嫌な予感がした
『お前ちょっとあいつ呪い殺してくれる?』
まるでお使い行ってくれる?のような軽いノリの神様に
「出来ません。こちらにも道理があります」
きちんと断った
『そう言うことはちゃんとこっちがやるから。お礼もちゃんとする』
『お前が殺したいと思う奴がいたら代わりに俺が殺してやる』
家に帰っても自称イケメンはずっと語り続け、拝み屋の
自身も呪われた状態になった
今は普通に話しかけているが、いつ機嫌を損ねるか分からない
自身の命の危険にも曝された拝み屋は再度客の元を訪れた
「寝込んでるバカ息子を連れて来い。家の神様と氏神様にお願いに行くぞ」
重症の息子は何も言わず付いてきた
息子の方も自分が何をしたのか理解したようで
「すみませんでした。お願いします」
と謝罪してきた
家の神様と氏神様にお伺いを立てると承諾をしてくれたが
『相手はかなりご立腹なので供物も十分に。後、説得に失敗する事もあるから腕の1本は覚悟してくれ。命の保証だけはする』
と言われた
神主にも協力して貰い、祭壇を設置し説得して貰い、漸く怒りは収まった
「あの時はは本当にラッキーとしか言いようがなかった」
と拝み屋は語る

こうやって神様に呪いの依頼をされることはたまにあると言う
「相手にとって俺達の命は鼻紙みたいに軽いからな。簡単に殺そうとしてくる」
と拝み屋は念を押してきた

因みに神様の喋り方は人間に近い神様は人間の喋り方を真似るそうなので、自分をイケメンや美女、時に美少女等名乗る方もおられるが、言動で油断すると痛い目をみる
また神様の居場所を侮るならば自身もだが身近な人の命も捨てると心に留めて欲しい

終わり

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