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2023年怪談イベント金沢 第2部 初めての呪い返し

2023年7月16日怪談イベント金沢主催 営業のK(怪談作家)
第2部 私件が語ったもの 
一部追加あり
人を呪わば穴二つ

他人を呪うものは相手の墓穴を掘っているつもりでも実は自分の分も掘っていたという例えだが、これが返された時も考えておかねばならない

知り合いの拝み屋さんから聞いた話

拝み屋さんは当時、鍼灸按摩の資格を取り、師匠の元で跡取りとして修行中だった

師匠(便宜上ご隠居とする)が施術中に一緒にお客さんに触れ、こりやツボを探り当てたり、お客さんの付き添いとお喋りするのが当時の仕事だった

いつものようにお客さんが来て、付き添いのお客さんの奥さんに話しかけていて妙なことに気づいた

その奥さんはいつも化粧をしていて、良い香りがするのに今日はおかしな匂いがする

植物の腐ったような不快な匂いと血生臭い匂い

「怪我してる?絆創膏いる?」

と聞いた拝み屋に

「怪我はしてませんよ」

と返す奥さん

おかしいなと思いつつご隠居のそばに行くと

「おいお前ー、奥さんにおかしな物が付いてるのに気付いたんか?」

とご隠居が聞いてきた

ご隠居も霊感があり、ぼんやりとした視界の中におかしな物が見えるタイプで、拝み屋をしていた

「怖いこと言わんで」

と逃げようとしたが

「逃げるな。これはおばけじゃなくて悪い風が吹いてるんだ」

と言われた

ご隠居曰く、病気と一緒で呪いも風になって飛んでくる

それが相手の顔にかかり、呪う相手だと確認したら攻撃したい所に来る

「奥さんは女に呪われとるから返すぞ」

お客さんと奥さんに説明すると2人は心当たりはないが気味が悪いのでご隠居にお願いした

「今回はお前が見つけたからお前がやれ」

頼まれたはずのご隠居は拝み屋に呪い返しを押し付けてきた

勿論怖いのが嫌いな拝み屋は拒否した

しかし

「これから嫌でもこういうことに関わるしお前自身も口も性格も悪いから呪いを受けることになる。だったら呪い返しを覚えた方が良い」

半ば脅され気味に拝み屋の初めての呪い返しが始まった

詳細は伏せるが、呪い返しは風と呼ばれる呪いを捕まえ本人に向かって同じように風で飛ばす

ご隠居はそれを視覚で捉えたが、拝み屋は見えないのが当たり前で、見るという事ができない

代わりに他の感覚が優れているので嗅覚や触覚で捉える

それを全て本人に正確に返す

1欠片でもも残せば風は拝み屋に帰ってきて、依頼者もと拝み屋は最悪死に至る

危険かつ高度な技でかなりの集中力がいると言う

「正直今も緊張する。できればやりたくないが、やらないと神様に怒られるし、臭い」

と凄く嫌そうな顔で語っていた

今回は初でしかも生き霊も一緒に返さないといけないという

「お前は俺よりそう言う世界に敏感だからうまく行く」

とご隠居に後押しされ、風を捕まえ生き霊と共に押し返したという

「ぬるぬるした気持ち悪いのと、冷たくて妙に痛い風の感触が気持ち悪くて」

無事に返せたようで空気が一気に変わるのを感じ、お客さんの奥さんも重しが取れた様な感覚があったと連絡があった

それから約1ヶ月後

ご隠居に件のお客さんから按摩のキャンセルの連絡があった

何でもお客さんのお母さんが急逝されたという

お悔やみをのべ、キャンセル処理した1週間後にまたお客さんが奥さんを連れてこられた

「呪いをかけたのは同居していた姑でした」

姑は誰にでも厳しい人だったが、特に仲が仲が悪いわけでもなく

これといったイビりもなかった

「姑の死因は心不全で、元々心臓に持病があったので不審な点もありませんでした」

死に顔も怪談話で良くある凄まじい形相でもなく、安らかで眠るような物だった

「姑の仕業だと思ったのは、亡くなった姑の胸の上に黒い小さな竜巻の様な物が見えました。あれが呪いなんですよね?」

それで呪いが無事に返ったと言うのを確認した


「人間生きてたら恨み辛みもある。恋愛も拗れたら皆風を吹かせる(呪いをかける)それは普通に生活をしていたらすぐに忘れて消えてまた生まれる。それが強くなったら人が怪我する」

時に人が死ぬこともあるそうで、呪いが強くならないように面白い物とか恋とかやっとけと

呪い返しが嫌いな呪い返しの天才(師匠であるご隠居が認めた)である拝み屋がそう語った


終わり


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