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新しいピタゴラス数が見つかる姿を「見る」方法

「見る」とは?

自然数$${a,b,c}$$が、$${a^2+b^2=c^2}$$という関係を持っている時、この三数をピタゴラス数といいます。前回は、

$${(-x-2y+2z)^2+(-2x-y+2z)^2-(-2x-2y+3z)^2=x^2+y^2-z^2}$$

という恒等式を用いて、プログラム的に無限にピタゴラス数を生成する方法を紹介しました。その時、「幾何的意味」として書いたものは、上の恒等式の一つの解釈法であり、頭の中でイメージしてもらいやすいようするためです。目を閉じて、上下無限に広がる円錐を思い浮かべ、そこに直線を突き刺す、そんなことを思っていただけで、リアル化など想定していませんでした。


立方体や正八面体、正二十面体などは紙で作ることができます。
球やラグビーボール(回転楕円体?)の様な立体は紙で作ることはできません。あるいは、極めて困難です。理由は曲面があるからです。
しかし、曲面があっても、紙で作ることができる立体もあります。
円柱や円錐です。そして、$${ x^2+y^2=z^2 }$$で表されるものは、幸運にも円錐です。


透明なフィルムか何かで、$${ x^2+y^2=z^2,z≧0 }$$が表す円錐を作ります。対称性を考えれば、$${z<0}$$側の円錐は除いてかまわないでしょう。

$${(a,b,c)}$$をピタゴラス数とし、それに対応するフィルム上の点に、光を通さない障害物を置きます。そして$${N}$$を大きな値として、$${(N,N,N)}$$に光源を置きます。光源を出た光は、$${(a,b,c)}$$で遮られ、
$${(a-t,b-t,c-t),t>0}$$で表される座標はずっと影になります。この影が円錐に重なるのは、$${t=2(a+b-c)}$$の時。その座標は

$${(-a-2b+2c,-2a-b+2c,-2a-2b+3c)}$$

です。文頭で紹介した恒等式を使って、円錐上にあることが確認できますね。$${a,b,c}$$は自然数なので、格子点であることは確かです。$${x}$$座標、$${y}$$座標が、負になる場合を考慮して、

$${(|-a-2b+2c|,|-2a-b+2c|,-2a-2b+3c)}$$

という別のピタゴラス数が見つかったと言えます。
なお、$${z}$$座標の$${-2a-2b+3c}$$は常に正です。明らかに正である$${2a+2b+3c}$$を掛けて変形すると、$${5(a-b)^2+2ab+9(c^2-a^2-b^2)}$$となり正であることが確認できます。


$${(a,b,c)}$$が円錐$${ x^2+y^2=z^2,z≧0 }$$上の点なら、$${(-a,b,c)}$$も円錐上の点です。同じくここに光を通さない障害物を置き、今度は、$${N}$$を大きな値として、$${(-N,-N,-N)}$$に光源を置きます。光源を出た光は、$${(-a,b,c)}$$で遮られ、$${(-a+t,b+t,c+t),t>0}$$で表される座標はずっと影になります。この影が円錐に重なるのは、$${t=2(a-b+c)}$$の時。その座標は

$${(a-2b+2c,2a-b+2c,2a-2b+3c)}$$

冒頭の恒等式で、$${x→-x}$$と置き換えた式を考えると、やはり、円錐上にあることが確認できると思います。

$${(a,-b,c),(-a,-b,c)}$$についても、同様です。


前回、幾何的意味として紹介したのは、別視点からの説明のためであり、頭の中でイメージ化して欲しかったからです。リアル化など思っていませんでした。
しかし、円錐は紙で作成できます。実際に、$${ x^2+y^2=z^2,z≧0 }$$の表す円錐を工作し、光源、障害物を用意して、上のような実験を行うことが可能です。そうすると、$${(a,b,c)}$$という一つのピタゴラス数から、四つの別のピタゴラス数が影として現れる様子を将に「見る」ことができるのではないでしょうか。
夏休みの工作として、面白い題材になるのでは、...と、ちょっとだけ期待して投稿を閉めたいと思います。

#ピタゴラス数 #夏休みの工作 #視覚化 #恒等式 #円錐 #数学がすき


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