彫刻家舟越桂さんの言葉

クチブエの平塚です。

彫刻家の舟越桂さんがお亡くなりになったというニュースを見ました。

もう20年も前のお話になりますが舟越さんにお会いしたことがあります。

広島現代美術館で開催されていた舟越桂展に出かけた時のこと。平日で特にイベント日でも無い午後だったのですがたまたま舟越さんが会場にお越しになっていたのです。

当時私は版画家として活動しながらクチブエを立ち上げようと動き始めたばかりで多くの問題と格闘している時期でした。

その中で立体作品を鑑賞する際にいつも感じる疑問のようなものがありました。初対面で失礼かと思ったのですが舟越さんに聞いてみたくなり話しかけたのです。

まとまりのない疑問をたどたどしく話す私の話を聞き、しっかりと答えてくださったのを今でもはっきりと覚えています。作家として面識があったわけでも、大学で生徒として教わったわけでも、ギャラリーや美術館で繋がりがあったわけでもなく、ただ展覧会に訪れた初対面の一観客だったのですが。

モノヅクリをする人間にはそれぞれ想いがありそれをどう伝えるのか、そんなことを他視点から考えるきっかけになりました。その出来事が今もクチブエのコンセプトのひとつになっています。

思い返せば大胆な行動でしたが今となってはお話ができたことを嬉しく思うばかりです。

心からご冥福をお祈りいたします。