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「寄り道」「道草」

「寄り道」

悲しくもないし
可笑しくもない

寄り道もしない僕はいったい
何に成りたかったのだろう

小さな小さな種を
小さな花壇にそっと植えて
毎日水を差し
芽が出た朝にそっと微笑む
そんな穏やかな昨日を重ねたいのに

生まれ落ちた瞬間から
この道はまっすぐと死に向かっている

息が切れてたって、怪我をしたって
なんでもなかったあの頃に

平坦な道を足元ばかりを見つめて歩いていた

振り返った時
僕の歩いた道は音もなく、瞬きもなく
ただ夕闇の向こうに消えていった
これが過ぎるということか。

こぼれ落ちた時間を嘆いてる場合じゃない

遠回りをしよう
寄り道をしよう
道草くって、迷子になろう。

怒ったり泣いたり
怪我をしたり絶望しよう

ねたんだり嫌ったり
けんかをしたり失望しよう

だって・・・


「道草」

ぼくは迷惑をかけない子供だった
大人の言うことを素直に聞くし反抗もしない
ただ心のなかで
自分は本当は天才で
いつか誰かが僕を見つけてくれると信じている
普通の少年だった

部活帰りのコンビニで肉まんを買った
バスを待つ間、口をやけどする。

はじめてのキスは味なんかしなかった
舞い上がってたくさんの勘違いをした
傷つけられてばかりで
傷つけていたことを知らなかった

はじめてのゲームセンターで
ぼくはただただ眺めているだけだったけど
悪いことをしているようでなんだかドキドキした

卒業式の夜、公園でギターを弾いた
どこにもぶつからない音が
月に吸い込まれて消えていった
家には帰らなかった

はじめてのライブハウスは音が大きかった
頭から足の裏まで全部が音に殴られていた
タバコと汗の匂いが髪や服に染み込んでいた
そこではみんな夢を見ていた

バイクではじめて雨に打たれた
まるで石が降っているように痛くて
わけもわからず笑いながら歌っていた

はじめてギターを弾いた時
僕はどう考えても無敵だった

道草を食ってまとわりついた「余計なもの」だけが
ぼくだった。

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