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夢の断片

いつもの駅。南口から出ると、あるはずの無い街並み。
あれ、この街並みは⋯?
まるで赤線に来たような入り組んだ、何故か見覚えのある様な無いような⋯。

腹がへっていたので店に入ろうと、辺りを見渡してみた。どうやら俺の行きつけらしい木造の小料理屋が見えて来た。
あ、ここは⋯。
知らないところなのになぜだか知っている、この店に当たり前のように入ろうとしてのぞいてみた。
すると引き戸の入り口に付近で鍋を囲んだるり子が見えて仲間と手招きしている。
「こっちこっち!早く来てよ〜。」
待ってましたと半ば強引に隣に座らせられた。
店内は賑やかだ。カウンターも満席。ありがちなねじり鉢巻をした大将が忙しなくお客の注文を捌いてる。
るり子が一升瓶でなみなみとコップへ酒を注ぐ。
「ほらぁ、駆け付け1杯、乾杯!」
それをあおる様にグッと呑み干して矢継ぎ早に渡された鍋の具を突つきながら話す。
「今日も活気があるね。最近元気だった?」
「中々来てくれないんだもん、嫌われたかと思っちゃった。あ、沢山食べてね!」
と若干辻褄の合わない返事を早口で返してきた。
飲み干すコップにまたなみなみ注いで、雑に俺の腕に絡みつきながら、
「ねえ、今日はゆっくり出来るんでしょ?」
溢れそうなコップ酒を口から出迎え
「おいおい溢れるよ⋯。お前飲み過ぎじゃねぇのか?顔真っ赤だぞ。」
「いいじゃない私が呑むんだからぁ!勝手でしょ。じゃあ決まりね!」
髪の香りがくすぐったい。

店の真中にある奇妙な地下に降りる石の螺旋階段。おかしいな、あいつまだ戻らねえな、そんな事を感じて先に用を足しに行ったるり子が気になった。
二三段降りてみると、下の方の狐火の様な灯りの元の手摺にもたれかかっているるり子がいた。
「大丈夫かよっ⋯て、お前早い時間から飲み過ぎなんだよな。気持ち悪いのかよ?」
「あたし、酔っ払いだねぇ⋯。でも好きで呑んでんだから酔うも酔わないもいいじゃないさぁ。」
俺にだらしなくしなだれかかって来ながら同じ言葉を繰り返して言うと、唐突に
「好き。」
とキスをして来た。

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