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【小5:図形の文章題】文章題が苦手!の原因を分かりやすく説明します!【小5学習法シリーズ⑥】

※この記事は、深澤英雄先生(神戸市の小・中学校で38年間教壇に立ち、教職大学院の特任教授を4年半務める。現在は和歌山大学教育学部の非常勤講師として学生の指導にあたる。久保田学園の第一号の生徒でもある。)をお招きして、久保田学園グループ代表久保田勤とグループ講師宮後のお話をベースに記事にしています。

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図形と文章題が融合したら?

宮後:今回も”文部科学省全国学力テスト”から子どもが躓きやすいポイントを解説していただきたいと思います。深澤先生よろしくお願いします。

深澤:令和5年度に出題された問題から、図形の文章題を見ていただきたいと思います。このような問題が出題されました。

令和5年:文部科学省全国学力テストより

深澤:この問題の正答率は、25.3%しかないんです。

宮後:この問題を”4人のうち3人”も間違えてしまうんですか?正三角形の角度が60度だとわかっていれば、簡単に半分の30度であると考えることができると思うんですが。

深澤:私の経験での話になりますが、これまで指導していて、正三角形の角度が60度であることを知らない生徒はほとんどいないんです。それなのに25.3%しかないというところに、子どもがどういうところに躓いてしまうのかわかるポイントがあると思います。

文章題ができない原因

深澤:子どもたちが、正三角形が60度だとわかっているのに、この問題が解けなかった理由はどういうところにあると思いますか?

久保田:私は、問題の文章の意図が読み取れていなかったのだろうと思います。私は、文章題ができない原因は以下の二つだと考えています。

  • 問題文章についていけていない

  • 計算の意味が分からない

久保田:そもそも、この学力テストの問題は、計算だけで言えば60÷2=30でしかありません。ですがこの問題は、図形や文章が長く問題文章についていけないことが起こってしまったのだと思います。そうなると、正三角形という言葉だけ見て、60度という答えを書いた子どもが多かったのではないかと思います。

深澤:実際に一番多かった誤答は60度というものでした。私も正三角形の角度が60度だという知識に引っ張られて問題をよく理解せずに答えを書いた子どもが多かったのだと思います。

久保田:さらに、やっている計算の意味が分かりにくくなるのも原因になっていると思います。計算の意味を小学校低学年は足し算・引き算・掛け算・割り算の計算など、計算方法を主にトレーニングしていきます。初めのうちは、物の値段や個数などに置き換えて考えることがしやすく、計算の意味が分かりやすくなっていきます。ですが、中学年から高学年になっていくと、図形が入ってきて、角度や面積の計算になると分かりにくい部分がでてきます。特に角度と個数には大きな違いがあるんですよ。

深澤:30個を2倍すると、60個で数が多くなって具体的にイメージしやすいのですが、30度から二倍しても60度となると角度が大きくなるものの、三角形の面積大きさは直接影響しません。大きさに影響を与えるのは辺の長さです。子どもにはここが直感的に難しいと感じるかもしれませんね。

久保田:そういうところから、やっている計算の意味が分からなくなっていくんです。今までは数や大きさが増えていったのに、角度が大きくなったところで三角形の辺の長さや面積が直接大きくなるわけではない…この具体的なイメージができないところから、子どもは図形が苦手になっていくんだと思います。

手を使った経験

深澤:やっていることの意味が分かるようになるかは、手を使った経験があるかも大事だと思います。折り紙をしたことがあるなら、折ることによって角が尖っていくのがわかるでしょう。逆に開くことで角度がなだらかになっていくのもわかると思います。

宮後:鶴を折った経験などは小さいころにはあると思います。私も良く紙飛行機を作って遊んだものです。小学校高学年になって角度の勉強をしたころに、また折り紙をしてみると角度の見方が変わるかもしれませんね。

久保田:学んだことを実際に手を使ってやってみて、実感するというのはとても大事な事ですね。折り紙でなくても、ノートでも何かのプリントや新聞紙・チラシなどでも実践可能だと思うので、是非取り組んでみてもらいたいですね。

子どもに指導する時には

宮後:この学力テストのような問題は、文章が長かったり、計算の意味が分れば解けるようになるというのは分かりました。意味を理解する学力があるかを文部科学省は問うているのだとわかりました。非常に良い問題を作成しているのだなと思います。

久保田:このような問題は、大人からすると簡単に分かる問題ではあります。ですが、子どもにとっては文章が長い、計算の意味が分かりにくいというハードルがあることを知っておくことが一番大切だと思います。

深澤:”なんでこんな問題もわからないの?”と子どもに言ってしまうと、それだけで子どもの文章題嫌い・図形嫌いが進んでしまいますね。今まで何度も伝えたことですが、子どもに適切な問いかけ・質問をするのが大切です。

久保田:”ちゃんと文章読んだ?”と子どもに問いかけるのも良いと思いますが、子どもが”読まなかった!”と返事されると、親としては困ったなとなると思います。どう子どもに指導するのが良いか分からなくなって一から教えるだけになってしまうと逆効果ですからね。”文章のどのあたりからわかりにくくなったかな?”とか、”どういう計算になるかわかった?”などの問いかけでより具体的に聞くのが良いのではないかと思います。

宮後:ありがとうございました。次回以降も学力テストの問題から、小学校5年生ごろまでに学んでおきたいことを、お話いただきたいと思います。よろしくお願いします。

まとめ

▸大人にとっては簡単でも、子どもにとっては文章の意味を理解すること、計算の意味を理解することに高いハードルがあるということをまず大人が理解してあげよう。
▸算数で学ぶ計算の操作だけでなく、意味も理解できるようになることが、文章題攻略のポイント。
▸角度などの抽象的な事の意味を理解するには、折り紙など手を使って角度を意識する経験があるかどうかが大切。