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【小5学習法⑧ 概算の利用】なぜ概算が便利なのか、意味の理解が大切です!

※この記事は、深澤英雄先生(神戸市の小・中学校で38年間教壇に立ち、教職大学院の特任教授を4年半務める。現在は和歌山大学教育学部の非常勤講師として学生の指導にあたる。久保田学園の第一号の生徒でもある。)をお招きして、久保田学園グループ代表久保田勤とグループ講師宮後のお話をベースに記事にしています。

※この記事は、深澤英雄先生(神戸市の小・中学校で38年間教壇に立ち、教職大学院の特任教授を4年半務める。現在は和歌山大学教育学部の非常勤講師として学生の指導にあたる。久保田学園の第一号の生徒でもある。)をお招きして、久保田学園グループ代表久保田勤とグループ講師宮後のお話をベースに記事にしています。

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まるで国語?学力テストの概算問題

宮後:今回も”文部科学省全国学力テスト”から子どもが躓きやすいポイントを解説していただきたいと思います。深澤先生よろしくお願いします。

深澤:今回は令和4年度に出題された問題から、非常に興味深い問題がありましたのでピックアップ致しました。非常に正解率が低かった問題ですが、非常に良問だと思いますし、子どもの思考力を測るうえで非常に良い問題ですので、是非ご覧になってください。尚正解率は34.9%です。

令和4年全国学力テスト算数より

宮後:この問題はまるで国語の問題ですね。意味をたどるのが難しいように思います。答えは”ア”ですが説明は難しいように思います。

久保田:この問題の答えの理由を説明できたらかなり優秀なのではないでしょうか?

深澤:そうですね。この問題の正解率は34.9%ですが、これが3択問題ではなく、自分の言葉で説明しなさいという問題なら、もっと正解率が下がったのではないかと思います。

買い物をする経験:より安く買おうと思えば

宮後:この問題はまずそもそもの買い物経験をしているかどうかが大事ですよね。

久保田:確かに、スーパーなどで物を買う時に1つだけ買うよりも、同じものをたくさん買った方が割安になっているはずです。そのような経験をしているかどうかが大事ですね。

深澤:そうですね。まず買い物をするときに、たくさん買ったら1つだけ買う時よりもお得になっているかどうかが気になりますよね。まずその発想が根底にないとなんでこんな計算をするの?と思ってしまい、やっていることの意図がつかみにくいのではないかと思います。

久保田:その発想でいけば、お得かどうかを考える際に高い値段や多い個数を想定することが意味のないことだと思いますよね。

深澤:その通りなのです。小学校で、このような概算の問題を扱います。ただ概算の操作だけ学ぶと、単に計算しやすい数字に調整することや、検算に使うものだと思ってしまいます。

久保田:概算はおおよその数字を求める計算法ですが、これを現実に使う際には、目的を意識しないといけませんね。問題に書いてある、必ず大きくなるという言い回しは子どもにとっては抽象的で分かりにくいのではないかと思います。

宮後:要は”1つずつ買うよりお得かどうか”を考えるということになるわけですよね。問題文をよく読んで太字の部分の必ず大きくなる、を”より安くなる計算方法で見積もったとしても1つずつ買うよりお得である”と理解できれば、あとは早いのではないかとおもいますね。

計算そのものより大切な事

深澤:この問題は文部科学省が作成したものですが、とても大切なメッセージが込められています。それは計算結果を出す力よりも、計算式を考える力を重視しているということです。

久保田:計算結果を正確に出す力は、現代ではコンピューター、AIに勝てるはずがありません。これらはどんどん普及していくなかで、子どもがどのような能力や感性を磨かなければならないか、この問題は問いかけていると思います。

宮後:たしかに、この問題を教える上で、85×21の計算方法を教えたところでなんの実りもありませんね。それなら、”たくさん買う時には1つずつ買う時と同じ値段なのはいやだよね?”など問いかけて、計算の意味を考えてもらう方が子どものためになりますね。

深澤:その通りだと思います。この小5学習法シリーズでは算数を計算して結果を出すだけでは破れない算数の苦手意識を克服する方法をお話したつもりです。それは子どもに対する問いかけ方であります。やり方ではなく、やる意味を理解しているかが問われる時代になっており、子どもにやる意味を伝える方法の中で最も効果的なのは、問いかけて一緒に考えることであると私は考えています。

久保田:指導する立場としては、子どもたちに問いかけ、意味を考えてもらう場をできるだけ多く提供することが大切であると、再認識できました。ありがとうございました。

まとめ

▸計算方法でなく、計算の意味を考えよう。
▸子どもが意味を理解を促すには、問いかけこそが最も効果的
▸具体的な言葉をかけよう。
 「必ず大きくなるのは?」⇒「比べるとお得なのは?」