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子どもに”ウザい”と言われてショック...「困ったときの反抗期ハンドブック①

※この記事は、深澤英雄先生(神戸市の小・中学校で38年間教壇に立ち、教職大学院の特任教授を4年半務める。現在は教育学部の非常勤講師として学生の指導に当たる。)をお招きして、久保田学園グループ代表久保田勤とグループ講師宮後が対談を記事にしたものです。

自立に向けてもがく気持ちとは:「反抗期」の心理の不思議

久保田:私は小学校4年から高校三年生までを指導していますが、一番指導が難しいのは12歳~15歳の3年間、いわゆる反抗期の時期ですね。

宮後:たしかに、私もやはり中学二年生の子どもを指導する際は特別に気をかけたように思います。私も”先生うるさいわ!”って言われた覚えが何度もあります。

久保田:まだ塾だと気を遣って大人しくしている方だと思いますよ。私も子育ての経験があるのでわかるのですが、家庭ではもっと苦労されているのではないかと思います。お互い家族だからか、遠慮のない物言いや暴言を子どもからされて、保護者の方々も困っておられる事だと思います。

宮後:保護者の方から”子どもにきつく言われることがある”とか”子どもが全く口をきいてくれなくなった”などの相談されることがあります。深澤先生にそのあたりのことについて伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

深澤:小学校高学年から中学生の間、親は子どもから突然「なんでそんなことするん?」や「そんなん嫌や」という反応を示されてしまい困ることがあります。この時期は一般的に反抗期と言われ、精神発達の過程で子どもが親や他人からの指示に抵抗を示す段階です。”なんでこの子はこんなことを言うのだろう”とイライラしてしまったり、子どもに対してネガティブな感情を抱いてしまい、子どもの気持ちがわからないというように感じてしまうことがあると思います。

久保田:幼少期の子どもは親の言うことを素直に聞く時期です。これは親に依存している時期ともいえます。ですが、小学校6年生頃からその様子は変わり始め、自立しようとし始めます。親は子どもとの関わり方を適応させる必要があります。この時期を一般に反抗期といいますが「反抗期」というよりも、依存期の終わりと捉える方が適切かもしれません。

深澤:この時期は、思春期とも呼ばれており、体の変化や学習内容、学校生活の変化に伴う人間関係の変動が重なり心理的プレッシャーが大きくかかります。

久保田:脳科学的にも、この時期の子どもは感情の変動が大きいとされています。思春期には脳の偏桃体が活発化します。この偏桃体はいわゆる〝古い脳〞とよばれており、動物が天敵に出会ったときに「闘うか、逃げるか」という生存に関わる状況判断に関係する部位であり、この部位が活発化するとどうしても攻撃的になってしまうものなのです。

深澤:そのとおりです。これらの要素が相まって、自立しようとしつつもつい反抗的な態度を取ってしまいがちなのがこの時期であるといえるでしょう。この時期には、やはり保護者のサポートが必要なのですが、従来のようにやることを指示・命令していくだけでは反発してしまいます。ですので従来の指示・命令型のアプローチから、より柔軟なコーチングのようなアプローチが求められます。

久保田:このような依存と自立の関係は、この図をイメージするとわかりやすいかもしれません。(下図参照)子どもは成長にともなって自立度があがっていき、依存度は下がっていくのです。その転換期がくるのが12歳~15歳頃なので、その時に子どもに対するアプローチを変えていく必要があるのです。


12~15歳あたりに自立心が上回り始める

宮後:なるほど、自立と依存の転換期が従来よく言われている反抗期なんですね。

久保田:そうですね。この時期に依存度が高かった頃の接し方を変えて自立を支援する接し方に転換するのがよいと思います。

宮後:この図で考えると、この時期に子どもに指示命令を続けてしまうと、子どもがいつまでたっても自立しない、依存度が自立よりも高い状態が続いてしまうという恐れもありますね(下図参照)。


自立心が高まっていかないと…?

久保田:そうなんです。子どもの自立こそを願っている保護者の方は多いと思います。だからこそ、コーチング的な支援を心掛けていく必要があるんですね。

深澤:こう考えてみると、反抗期という言葉はあまり適切ではないのかもしれません。反抗期といってしまうと、子どもとの対決の時期というイメージを持つ方がいるかもしれません。この時期は子どもの自立心を育む時期ですので、”自立支援期”といったような表現がより適切かもしれません。

宮後:なるほど、よくわかりました。自立を支援するためにコーチング的な接し方をしていきたいと思いますが、その実践にも難しい部分もあるとは思います。そのあたりについても次回お話を伺いたいと思います。