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米国著作権局、AIが創作した絵画は著作権登録の対象とはならないと判断

アメリカ合衆国著作権局は、2022年2月14日、人工知能(AI)が創作した絵画は著作権登録の対象とはならないと判断しました(決定原文)。

今回、問題となった作品は、「A Recent Entrance to Paradise」と題する絵画(本件絵画)です。
申請人であるSteven Thaler氏は、本件絵画の著作者は機械であり、本件絵画は職務著作であって同機械の所有者であるThaler氏が著作権を有するとして、2018年11月3日、本件絵画の著作権登録の申請をアメリカ合衆国著作権局に対して行いました。

画像1本件絵画(決定原文より抜粋)

これに対し、著作権局は、本件絵画は著作物に該当しないとして、登録を拒絶しました。Thaler氏は、著作権局に対し、登録拒絶の再考を求めましたが、著作権局は登録拒絶を維持する決定しました。これを受けて、Thaler氏が2回目の再考を求めたのに対し、著作権局が行ったのが今回の決定となります。

著作権局は、著作権による保護の対象となるものは「original work of authorship」であるところ、これに該当するためには人間による創作である必要があり、機械により創作された本件絵画は「original work of authorship」には該当しないと判断しました。著作権局は、その判断の根拠として、人間ではないスピリチュアルな存在により創作されたとされる言葉が記載された書籍について著作物性を否定した裁判例や、猿により撮影されたとされる写真について著作物性を否定した裁判例を挙げました。
結論として、著作権局は、本件絵画の著作権登録の拒絶を維持しました。

米国においては、著作権は著作物が創作された時点で発生するものの、著作権侵害訴訟を連邦地方裁判所に提起するためには、原則として、著作権局に申請して著作権登録を受ける必要があります。著作権登録の申請があると、著作権局は、申請にかかる作品が著作権による保護の対象となるか否かについて実質的な審査を行い、著作権による保護の対象とならないと判断した場合には登録を拒絶します。
今回の著作権局の決定は、米国法上、AIは著作物の著作者となることはできず、AIにより創作されたものは著作権による保護の対象とはならないことを示したものになります。

なお、AIによる創作が知的財産権による保護の対象となるか否かについては、特許の分野においても問題となっており、南アフリカやオーストラリアにおいてはAIを発明者とする特許出願を認める判断がなされる一方、米国、欧州、英国および台湾においては、これを否定する判断がなされています。

(文責:乾 裕介)


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