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秘密特許制度ついに導入か

昨年より政府が導入を検討してきた所謂秘密特許制度について、読売新聞などの報道によりますと、政府が来年の通常国会への提出を目指す経済安全保障推進法案(仮称)に盛り込まれるとのことです。(https://www.yomiuri.co.jp/politics/20211113-OYT1T50277/)。

現行の特許法では、原則として、出願日から1年6ヶ月経過後に、その出願内容が一般に公開されます(特許法第64条1項)。
しかしながら、国防上の機微技術などに関する発明の情報が公開されること、また、外国出願を禁止する法制度がないことから、経済安全保障上重大なリスクがあると言われ、出願内容を非公開とするなどの秘密特許制度の導入が検討されてきました(なお、先進7カ国のうち、秘密特許に関する制度をもたないのは日本だけです)。
出願公開のメリットとしては、他者の行う発明に対するけん制になることや、当該特許の設定登録前に他者が当該出願に係る発明を実施している場合には、警告後(特許出願に係る発明であることを知って実施した者には不要)、特許権の設定登録までの間に業としてその発明を実施した当該他者に対して、実施料相当額の補償金の支払いを請求することができること(特許法第65条)などが挙げられます。
また、出願した者は、後になって出願した者に対し、出願公開後、いわゆる拡大された先願の地位(特許法第29条の2)も与えられます。
既に秘密特許制度を導入している諸外国では、非公開対象に指定された出願人に対し補償金を支払う制度を設けていることが一般的であり、また、上記記事によりますと、政府も、出願人に対し補償金を支払う仕組みを検討しているということです。
しかし、未だ出願段階に過ぎない発明に対しその補償金の算定基準をどのようにするのか、そもそも非公開対象となる発明を誰がどのように決定するか等議論が待たれるところです。
(文責:中野正文)


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