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一度失敗した化合物「エミクススタト」再び注目されるワケ

こんにちは。
窪田製薬ホールディングス広報の市川です。

窪田製薬は、”世界から失明を撲滅する”ことをミッションとし、目に関わる創薬、デバイス開発を行っています。創業者の窪田については(こちら)にまとめてありますのでご覧ください。

2020年11月、窪田製薬ホールディングス株式会社(本社:東京都千代田区、以下、「当社」)は、当社の 100%子会社窪田ビジョン・インク(本社:米国ワシントン州、以下、「クボタビジョン」)が、開発している治療薬候補「エミクススタト塩酸塩」のスターガルト病患者に対しての治療効果に関する論文が、眼科関連情報を掲載する医学雑誌「British Journal of Ophthalmology」に掲載されたことをお知らせします。

この論文では、多施設共同無作為化二重盲検試験で、スターガルト病患者に対するエミクススタト塩酸塩の薬理作用、安全性および忍容性を評価することを目的に実施した結果、用量依存的で最大90%を超える抑制効果が見られたこと、および投与用量における安全性および忍容性が確認されたことが掲載されています。

この試験は、2018年に終了しておりますが、今回改めて学術誌に掲載されました。

エミクススタト塩酸塩は、2020年8月に、FDA(米国食品医薬品局ーFood and DrugAdministration)より、Orphan Products Clinical Trials Grants Program の助成プログラムに選定されたことにより、研究自体があらゆる専門家から着実に評価されてきています。

FDAのこの助成金プログラムは、1983年に開始されており、37年間で667件の研究開発が採択されていますが、その殆どが大学所属の研究者で、企業の採択率は全分野のうち3%、さらにこれまで、日本人社長、日本のグループ企業が採択された実績はありませんでした。

また2020年10月にはFDAの長官自ら、個人のツイッターでも、本件について紹介してくれています。

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FDAは、米国民の税金を使用しているからこそ、「なぜそのプロジェクトに投資したか」という説明をする責任がありますが、長官自ら、個人のtwitterでPRする、それほどまでに当社の化合物をサポートしてくれているということに大変感謝しています。

一度失敗したからこそのエミクススタト塩酸塩

2016年、エミクススタト塩酸塩は第2b/3相臨床試験として、508例のドライ型加齢黄斑変性患者を対象に24ヶ月にわたり、プラセボ群(本物の薬のように見える外見をしているが、薬として効く成分は入っていない、偽物の薬)とエミクススタト投与群の比較で有意差が見られませんでした。

多くの期待が集まっていた試験であり、この結果に多くの医師、患者様、株主の皆様には失望させてしまいました。のちに、株価は暴落し、応援いただいた方々に多大なご心配をおかけしてしまいました。

そのエミクススタト塩酸塩が、なぜ今、再び期待されているのか。
わたしたちが信じるエミクススタトの可能性についてまとめていきたいと思います。

1.高い安全性が証明されていること

薬の承認を目指すには、主に安全性薬理作用という二つの評価基準があります。2016年に行われたドライ型加齢黄斑変性患者を対象とした臨床試験では、薬理作用こそ認められませんでしたが、高齢者が2年間飲み続けても、大きな副作用を起こすということがないということが証明されました。また、同じ薬を飲み続けると体に抗体ができてしまい、次第に薬が効かなくなる可能性も懸念もされましたが、エミクススタトは、仮説の根本となっていた視覚サイクルを2年間継続して抑制することが可能であることを証明しました。

このデータは、薬の開発に取っては大きなメリットであり、この結果があってこそ現在の単一遺伝子疾患であるスターガルト病への臨床試験が進められています(加齢黄斑変性は、多因子疾患であり、遺伝子異常だけの問題ではないことが知られています。単一遺伝子疾患・多因子疾患についてはこちら)。

エミクススタト塩酸塩は、前臨床試験(動物での試験)の段階で、視覚サイクルの抑制に対し、有用性があると証明されていましたが、動物は、ヒトのように50年、60年と生きる訳ではありませんし、また生活習慣病の原因と言われる活動もしないため、正確に加齢黄斑変性を再現することはできません。
つまり、動物モデルで証明されているのは、若年性黄斑変性で、さらに単一遺伝子疾患であるスターガルト病への有用性です。

しかし、若年性黄斑変性であるスターガルト病の臨床試験(ヒトでの試験)を行うには、病気が進行中の若い方への薬の投与が必要になります。世界各国では、子供への臨床試験を始めるには、大人の試験よりも、更に高い安全性が担保されていることが条件になりますので、まずは、同じ黄斑変性で、効果がある可能性がある加齢黄斑変性で臨床試験を進めていました。

結果的には残念ながら、加齢黄斑変性の治療候補薬としては、 臨床第2b/3試験で 求められる結果を得ることができませんでしたが、そこで認められた高い安全性のデータがあったからこそ、今、スターガルト病を対象とした臨床試験が進められています。

2.オーファンドラッグであること

創薬開発のリリースを見ていると「オーファンドラッグ」という言葉をよく耳にします。エミクススタト塩酸塩については、2017年に米国FDAから、2019年には欧州EMAからオーファンドラッグ認定を受けています。

このオーファンドラッグとは、希少疾病用医薬品のことで、日本においては、患者数が5万人未満であること、米国においては患者数が20万人以下と定められています。もともと、患者数が少ないために製薬会社が積極的に開発してこなかった希少疾患領域に1970~1980年代にかけて、先進諸国を中心にオーファンドラッグの研究開発に対する公的援助制度をつくる動きがみられるようになりました。

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米国は1983年、日本では1993年、欧州では2000年に施行された制度により、市場の独占期間、迅速承認制度、申請費用の優遇、助言・指導の優遇、税制措置という手厚い支援制度が設けられました。また、オーファンドラッグはどの国でも高い薬価がつきやすいことが知られており、発売当初の売り上げは小さくても、グローバル展開や適応拡大に成功すれば大型品に成長する可能性があるとされています。

実際、非ホジキンリンパ腫治療薬「リツキサン」の2011年売り上げは65億ドル、慢性骨髄性白血病や消化管間質腫瘍の治療薬「グリベック」は46億ドル、発作性夜間ヘモグロビン尿症治療薬「ソリリス」は7億ドルに達しています。また、最近ではノバルティスファーマの脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」が1患者あたり1億6707万7222円の薬価が収載され、保険適応になったことが話題となりました。
参考【日経メディカル】:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/201307/531792.html
参考【ゾルゲンスマ】:https://answers.ten-navi.com/pharmanews/18401/

【トレンド】オーファンドラッグ✖️ベンチャー企業の波

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2009年以降、FDAに承認された薬剤のうち、オーファンドラッグ指定を受けている薬剤の数が増加傾向にあります。2018年には、全体の半数以上がオーファンドラッグ指定された薬であることが明らかになっています。

またここ数年で承認された薬は、大手製薬企業で開発されたものではなく、バイオベンチャーで開発された薬が承認されるケースが増加しており、米国では、ベンチャー企業に対して投資をするというトレンドが生まれつつあります。

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スターガルト病治療薬候補「エミクススタト塩酸塩」
第3相臨床試験、被験者登録完了

当社は、2018 年 11 月7日(米国時間)の最初の被験者登録 (FPFV, First Patient First Visit) 完了後、グローバルに当臨床試験を推進してきましたが、2020年5月1日、最終的に世界 11 カ国、29 施設において登録された被験者の総数は 194 名となりました。当初の被験者登録目標を 162 名と設定しておりましたが、多くの患者様、医師から高い期待をいただいていること、また新型コロナウィルスの感染拡大等の影響を踏まえ、被験者登録数を若干積み増すこととしました。

電球を発明したトーマス・エジソンの言葉に「私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、うまく行かない方法を見つけただけだ。」という言葉があります。創薬開発は一般的に、化合物の1/30000しか世にでないと言われています。

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それでもこの第3相試験をできるまでエビデンスを積み上げてきたこの化合物が世に出る瞬間に立ち会えるかもしれない、この貴重な機会をわたしたちは逃したくありません。

絶対に成功するという確証は、最後の最後、成功した瞬間までありませんが、これからも世界から失明を撲滅するために、研究開発に取り組んで行きます。

窪田製薬ホールディングス(4596)
https://www.kubotaholdings.co.jp/index.html


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