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新Mmの憂鬱、フェーズ3失敗を栄養に、FDA希少病助成を鷲掴みにした窪田CEO

こんにちは。
窪田製薬ホールディングス広報の市川です。

窪田製薬は、”世界から失明を撲滅する”ことをミッションとし、目に関わる創薬、デバイス開発を行っています。創業者の窪田については(こちら)にまとめてありますのでご覧ください。

今回は、2020年10月に「新Mmの憂鬱」という会員制ウェブメディアに掲載いただきました記事を、特別な許可をいただき転載させていただきます。


※以下全て、「新Mmの憂鬱」より文章を抜粋させていただいております。

「新Mmの憂鬱」このコラムの狙い

日経バイオテク、Biotechnology Japan、コンセンサスエンジンなどを創刊、40年間日経グループなどで、先端バイオや先端医療の最前線を取材してきた科学ジャーナリスト、宮田満のコラムです。2020年9月末に日経BP社を完全に卒業、やっとサラリーマン・ジャーナリストから憧れのフリーランスになりました。また、2020年6月15日からベンチャー・キャピタリストとしてヘルスケア(HCI)1号ファンドを創成、傍観者としての隔靴掻痒を打破して、より深くイノベーションの実相に当事者として迫ります。当然、投資案件には愛情も募り利害相反(COI)も生じ、コラムのバイアスは避けられません。下記に示したCOIをよくお読みになって、読者自身「これは言い過ぎだ」などと、ご判断してお読み願います。ここでは私は私の意見を信ずるまま正直に申し上げます。

皆さんの忌憚ないご意見や情報提供を期待いたします。

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新Mmの憂鬱、フェーズ3失敗を栄養に、FDA希少病助成を鷲掴みにした窪田CEO

2020年10月27日

皆さん、お元気ですか?

メッシ選手の退団騒動後初めてとなるクラシコ(バルセロナVCレアルマドリード)は、審判のおかげで最高のゲームが最低のゲームになってしまいました。後半14分のPKの判定で1:1の均衡が破れ、最終的には1:3でアウェイのレアルが勝利することになりました。今回の主審の判定は極めて疑問で、このPKを取るなら、前半、ペナルティエリア内で足を蹴られて倒されたメッシ選手をVR判定もしなかったことは大いに批判されて良いと思います。疑惑のPKまでは、息もすることも忘れる緊迫した試合が続いていたので、誠にもったいないことをしました。しかし、いつまでも審判がアマチュアという体制を続けることは難しいのではないでしょうか?ビッグ・ビジネスとなったサッカーでも、他の仕事をせずに審判に専念できるプロ制度と十分な報酬を約束すべきであると思いました。なんとも後味が悪い週の初めです。

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2020年10月9日、米国食品医薬品局(FDA)が今年の希少疾患臨床試験助成対象6件(5年間総額1600万ドル)を発表しました。その中に我が国のベンチャー企業である窪田製薬の米国子会社(Kubota Vision社)の名前があったのです。採択率僅か15%のこのプログラムに日本人の研究責任者が通ったのは歴史上初めてのことでした。FDAそのものが希少疾患の患者のために、今までの治験データから安全性と有効性の可能性を実証することを後押しするプログラムです。同社が開発中の「エミクススタト」の希少疾患スターガルト病治療薬認可に大きく一歩踏み出したといえるでしょう。何故、そんなことが実現したのか?その背景を探ってみると、同社が一度失敗したフェーズ2/3治験の安全性データの蓄積が鍵を握っていました。加えて「大塚製薬には本当に感謝しかない」という窪田製薬の創業者、CEOである窪田良という挫折から立ち上がったタフな経営者もいたのです。

◎関連リンク
https://twitter.com/SteveFDA/status/1314294028331081729

「かつて、宮田さんが成功するベンチャーの経営者に唯一共通する特徴は成功するまで止めないといっていた」(窪田CEO)

確かにそんなことを言った覚えもありますが、それだけをナイーブに信じて慶応大学医学部出身の眼科医がタフな経営者として変貌したとは信じられない。窪田CEOと最初にお会いしたのは、1997年、緑内障の原因遺伝子の一つであるミオシリン遺伝子を窪田CEOがクローニングに成功した時でした。あの時は今も変わらぬ好奇心いっぱいの目をキラキラさせていた虎の門病院に勤める眼科医でした。それ以来、いかに自分の発明を患者に貢献させるかを一心に考え、米Seattleに留学、2002年にバイオベンチャー、Acugen Neuropeutics 社(2003年にAcucela社に改名)を米国で創業するのです。私の分析では、窪田CEOは起業家の優性遺伝子を元々持っていたと考えています。

何故、スターガルト病からエミクススタトの治験を始めなかったのか?今回のFDAの発表を聞いて、最初に思った疑問でした。エミクススタトはスターガルト病(ABCA4 遺伝子の異常による希少疾患)のモデル動物で、有効性を示していました。

実は2016年5月26日、加齢黄斑変性を対象としたエミクススタトのフェーズ2/3治験は統計的な有意差を示さず、失敗に終わった苦い経験があったためです。2014年に東京証券取引所マザーズに上場、アキュセラインクと名乗っていた窪田製薬の株価はエミクススタトの治験成功の期待から2016年5月までに7倍以上も高騰、予想外の治験失敗の発表で6日連続取引停止の暴落の結果、7分の1まで下がってしまったのです。加齢黄斑変性やその他の眼科疾患の治療薬で共同研究をしていた大スポンサーである大塚製薬が16年6月に撤退、その後、企業詐欺で危うく経営権を乗っ取られそうになる数々の危機を窪田CEOは乗り越えてきたのです。アキュセラを支えてきた大塚製薬の会長と社長が相次いで亡くなるという不運にも会いました。しかし、どん底にも救う神も現れました。SBIホールディングスの北尾吉孝代表取締役社長CEOが経営権を巡る紛争でも、一貫して窪田CEOを支持したのです。2016年12月にAcucela社を日本の子会社が買収、2016年12月にマザーズに窪田製薬として再上場する離れ業を見せました。

◎関連リンク
http://ryokubota.jp/home/2016/5/26/2b3

窪田CEOの答えは非常にシンプルでした。「スターガルト病は小児の疾患だ。しかし、まったく新しい化合物であるエミススタットを最初から小児疾患で治験することはできない。結果的には失敗に終わったが、加齢黄斑変性のP2/3データで安全性を担保でき、スターガルト病の治験や今回のFDAの希少疾患治験資金を受けることができた」というものでした。その後、加齢黄斑変性症をスポンサーした大塚製薬への感謝を付け加えるのを忘れませんでした。多分、もう20億円追加投資できたら、スターガルト病の治験をすることができたはずです。多様な遺伝子変異やライフスタイルが原因である加齢黄斑変性症の治験成功確率は五分五分。これに比べ、たった一つの遺伝子の疾患であるスターガルト病の治療薬開発の成功確率は極めて高いのです。

しかも、加齢黄斑変性の治験で、エミススタトが治療標的であるビタミンAの代謝酵素RPE65をヒトの体内で投薬量10mg/日が100%阻害することも確かめていました。スターガルトの原因遺伝子はビタミンAが代謝されて生じる有毒物質を分解する酵素です。エミススタトは有毒物質の生産を抑止することで、スターガルト病を治療します。ビタミンAの代謝は眼が光りを受けると起こる視覚にはどうしても必要なプロセスです。本来夜行性動物であったヒトが、文明化により急速に昼行性に転じた結果、明るい環境で有毒物質が大量生産されてしまい、遺伝変異でその分解能力が低下した人々にスターガルト病が発生します。小児の失明原因ではトップの疾患です。8000人から1万人に一人発生します。日米欧で約15万人の患者が存在すると推定されています。2027年にはスターガルト病の治療薬市場は1600億円に達するともいわれています。患者は毎日10mgのエミススタトを服用する必要があります。ビタミンAの光代謝反応を抑止するため、飲むサングラスともエミススタトはあだ名されています。

窪田製薬は、2020年8月にスターガルト病を対象にしたフェーズ3治験の患者登録を修了、2年間のフォローアップに着手しました。順調にいけば、2023年には発売できる見込みです。今回のFDAの希少病治験支援研究費獲得は、商品化を加速すると考えています。創業から20年、窪田CEOが心から快哉を叫ぶ日も近づきつつあります。

皆さんもどうぞ、バイオベンチャーの評価は長い目で見ていただきたい。ころんでも、諦めず、しかもただでは起きない起業家こそ、次の産業を成長させる貴重な人材です。

今週もどうぞお元気で。

宮田総研代表取締役 宮田 満

COI

 株式会社ヘルスケアイノベーションは株式会社宮田総研と株式会社大滝総研が折半で設立した合弁会社です。我が国のバイオベンチャーキャピタルの草分けである大滝博義氏と一緒に、我が国のバイオ・ヘルスケア産業の成長の頸木であるミドルステージのベンチャー企業の支援に7割を投資、さらに次世代の技術シーズを生むイノベーターに3割を投資いたします。現在までに、第一三共株式会社と大日本住友製薬株式会社、兼松からHCI1号ファンドに出資いただいています。現在、投資先の有望企業を選定中で、まだ出資企業はありません。

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