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オンリー・ザ・ブレイブ(2017)

衝撃的なラストが話題になった隠れた名作。

自然災害と聞いて日本人が思い浮かべるのは
地震・津波・台風・火山噴火だろうか。

アメリカではハリケーン、
そして山火事である。

日本でも山火事のニュースはたまに流れるが
そこまで大きな話題にはならない。

大陸の大きな国では、
自然発火や落雷で起こる山火事が
とても身近な脅威なのである。

地平線まで覆い尽くす森林に
少し火がついただけで、
辺りは火の海と化す。

勢いは木から木へと燃え移り、
あっという間に街一つを飲み込む
大火災へと繋がるのだ。

そんな炎の魔物に立ち向かう
対山火事の精鋭部隊ホットショット達の話。

2013年に実際にアリゾナ州で起きた未曾有の巨大山火事に20人の若者たちが挑んだ。

主人公の名は、ブレンダン。

ドラッグ中毒者で逮捕歴もあるクズ男なのだが、元恋人の妊娠をきっかけに自分を変えるため森林消防隊の面接を受ける。

エリックは森林消防隊の指揮官。

市で活動している彼らは、国が認めた部隊ではなく、地方自治体のチームであり、いわゆる自警団的なポジションに位置する。

能力と知識を兼ね備えるエリックは、自分たちの消防隊を農務省が認めるエリート精鋭部隊「ホットショット」に昇格させるため、20代の若者メンバー達を束ね、日々鍛錬に励んでいる。

過酷な訓練と厳しい審査テストの末、晴れてホットショットとなった隊員達を史上最大の山火事が襲う……。

【感想】

まず、この映画を観なければ山火事の消し方など知ることはなかったと思う。

消火活動といっても、
水や消化剤を撒く訳ではない。

森林火災の鎮火は、
通常の火災とは訳が違う。

初めにクワで迫り来る炎を食い止めるために長距離の溝を掘る。

そして火のついた油を撒き、火災が燃やそうとする木々を先に燃やし尽くして無くしてしまうのだ。

少量の犠牲で大量の犠牲を
防ぐというわけである。

ホットショットが放った炎は、
猛威を振るい進んでくる森林火災とぶつかり
炎が炎を打ち消し合う。

つまり彼らの仕事場は必然的に
大火災の最前線であり、
この世で最も危険な職場なのだ。

劇中、炎の中に生きる彼らならではの哲学が語られる。

死に近い「恐ろしい美」。

エリックはまだ新人だった頃、
消化活動中に
この世で一番美しい物を見たと言う。

それは、火だるまになった熊である。

身体を炎に包まれながら
目の前を颯爽と走り抜けていく熊の姿。

生と死を共存したような姿は
この世の物とは思えない美しさを
纏っていた。

分かるようで分からない話だが、
この不思議な相反した美しさこそが
ホットショット達を
危険な仕事に取り憑かせている。

新人たちが入隊した日、
死ぬ程に長い地獄ランニング訓練で
山の頂上まで上がり、
広大なパノラマを前にエリックが放つ言葉。

「この美しい眺めを見ろ。しかし、一度現場を体験した後では、これがただの燃料源にしか見えなくなる。それでもいいならこの仕事を選べ。」

渋いぜ、エリック。

そんな頼れる教官であり、
隊員たちの親父であり、
全員の目標でもあるエリックなのだが、
しっかり家に帰ると嫁さんに
危険な仕事のことで
こっぴどく叱られ
たびたび夫婦喧嘩をしている。

隊員たちに見えないところで
苦悩するエリックがまた可愛いのだ。

嫁さんに心配はかけたくない気持ちと
男のロマンである職場に生きたい気持ち。

頭を抱えるエリックがかっこよくて可愛い。

主人公ブレンダンや他の隊員たちもまた
家庭と仕事について悩みを抱えている。

現場を離れると彼らはただの20代の若者。

しょうもないノリでじゃれあい、
女や酒の話ばかり。

そんな彼らがクワを片手に
炎の中に入っていく姿の美しさ。

男のロマンです。

この映画は、単に巨大山火事の記録映画となっていないのが良い。

登場人物のキャラクターをしっかり掘り下げ、
しっかりと人間ドラマとしても面白い。

あらすじの印象とは違い
観てて微笑ましい青春群青劇です。

構えずに観てくださいね!

最初はお互いにいがみ合ってた奴らが
困難を共に乗り越えるうちに
命を預け合う同士となる。

ダメな奴たちが努力と忍耐で
のし上がっていく。

そんなんみんな好きなやつですやん。

そして物語は衝撃的なラストを迎える。

これはもう他言厳禁です。

もう一度言いますが、これは事実です。

僕としては絶対にWikipedia等で
ネタバレは見ずに鑑賞してほしい。

そして涙を流さざるを得ないエンドクレジット。

異国の文化・歴史を知ることができるという映画の醍醐味が全て詰まった作品です。

観てよかったと思える一本。

おすすめです。

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