ダブルバインドに疲れ果て。(毒母と友達の間で揺れる私)その7
さて、妙子ちゃんである。
彼女とは、中2で再び同じクラスになった。あれだけ仲が良かったのに、今度は違うグループに属していた。
私は部活中心の毎日を送り、妙子ちゃんは不良とみなされている女子たちと10数人のグループを作り、時に喫煙事件などを起こして、先生に呼びだされたりしていた。
その時私は、
「あーあ、不良にならないって言ってたのになぁ」
と悲しくなった。
けれど、きっと妙子ちゃんにはそうせずにはいられない深い事情があったのだと思う。それは、私にはわからない。
けれども、クラスの女子でただ一人誕生日パーティに招かれなかったなんて、たとえ大人になっても、ものすごく嫌な思い出となっているだろう。自分だったら、何度思い出しても、落ちこんでしまうと思う。
現に中2の時、席替えをすることになって、何人かのリーダーが好きな人を選んで班を構成していくと言う方式を取ったことがある。花いちもんめ、と似ている。私は、結構前半である男子に選ばれたのだけど、それを書記の係が書き忘れ、結局最後の一人に残ってしまった。
他でも書いたけれど、中2から越境通学を始めてものすごく消極的になってしまった私は、
「もう選ばれてるよ」
の一言が言えず、最後の一人に甘んじて、人数合わせの班にお情で入れてもらった。選んでくれた男子も、そのことを忘れているらしく、何も言ってはくれなかった。
この事実は、今でも痛い。「余った」イコール誰からも必要とされていない、という現実を突きつけられた気がした。
妙子ちゃんのそれは、それ以上に悲しく辛いと思う。
どうしてあの時、もっと強い調子で妙子ちゃんをかばってあげられなかったのか。
「離婚してたって、そんなの妙子ちゃんに何の関係もない。妙子ちゃんは、私の大事な友達なんだから!!」
母に向かって、言えていたら。でも、言わなかった。言えなかった。こんな私には、弟が母に反抗できなかったことを責める権利などないのかもしれない。
今から10年ほど前、中学時代の大規模な同窓会があった。すっかり男性恐怖症を克服した私は、友達と誘い合って参加した。
妙子ちゃんは‥‥。来ていなかった。
けっこうたくさんの人が来ていて、妙子ちゃんと仲の良かった女子を見かけたので、話しかけてみた。幸い私のことも覚えていてくれたので話が弾み、妙子ちゃんの消息を尋ねてみた。
「それが、よくわからないの。10年位前までは、それでもたまに連絡を取り合っていたんだけど、ご主人と一緒に新興宗教に入っちゃって、しつこく勧誘してくるから、私も距離置くようになっちゃって・・・」
そんなことになっていたのか。
妙子ちゃん。
少女時代を、どう思っているのだろうか。ご主人は、妙子ちゃんを支えてくれているのだろうか。少ない情報なので、その宗教がどんなものだかわからないけれど、心の平安を保って、毎日幸せでいてほしい。
状況は全然違うけれど、同じように辛い少女時代を過ごした私からの、せめてもの願い。
いくつかの母の奇怪な行い、考えを紹介したけれど、今でも理解できないし、同調するつもりもない。
ただ、このような病的な思考回路を「おかしい」と思える私は、まだなんとかまともなのだと思う。こんな話を毎日のように聞かされていたのに、正気を保っていられたのは、奇跡のようだ。自分で、言ってしまおう。
それはきっと、母の呪縛から逃げる日まで、
「今の現実は、本当ではない。いつか必ず明るい明日が来る」
と念じていたから、生き延びられたのだと思う。
離れたのは、大正解。
私の周囲には、
「でも家族なのでー」
と実家から離れられずに、結婚しても新しい家庭をうまく切り盛りできなくなってしまった人が、少なからずいる。
それじゃ、一生台無しにされてしまう。もうじゅうぶんに被害を受け、涙を流したのに。
いいかげん、自分を解放してあげて。何度でも、言う。あなたを蔑み、貶してくる親からは、距離を置いてください。
躊躇なんてまったく不要。
あなたの人生を邪魔して良い人なんて、この世に一人もいないのだから。そう、一人も。 それから、これだけは大きな声で申し上げたい。シングルファミリーで育った人を傷つけようという意図は、微塵もない。母がいかにひどい考えをしているか伝えたかっただけ。けれど、読んでいて不快だった部分も多々あると思うし、過去に他人から言われて傷ついたことを思い出させてしまったかもしれない。そう感じてしまったら、本当にごめんなさい。心から謝ります。シングルファミリーの原因が離婚でも死別でも、子供には何の責任もないし、後ろ指さされることでもない。その指から出てくる「憐れみ光線」を背中で感じて、嫌な思いもたくさんしてきたと思うけど、育った家庭の中だけは温かい雰囲気だったら良いなと思っています。
こんなに長い文章を最後まで読んでくださり、本当にどうもありがとう。今苦しんでいる人がいたら、少しでも明るい希望が訪れますように・・・。
そうして、またアップしたら他のエッセイもぜひ読んでほしい。
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