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情報の見せ方で演出しよう!魅力を伝えるレイアウトのセオリー

本日はえいりな刃物先生から『情報の見せ方で演出しよう!魅力を伝えるレイアウトのセオリー』の記事をお届けします!



こんにちは、えいりな刃物です。普段は映像作家をやっています。

自分の脳内にあるイメージやキャラクターを魅力的に描くのは、本当に難しいことです。デッサンのスキルが必要なのはもちろん、絵を描く前に面白いイメージを構成することも大切ですし、何より「自分が何を見せたいのか相手に正しく伝える能力」が重要になります。


今回のテーマは「レイアウト」

レイアウトとは「視線誘導のしくみを土台に、情報の優先順位をつけてモチーフや色を配置していくこと」です。キャラクターやモチーフの配置・画作りを工夫し、正しい視線誘導を行うことで人物の心情やストーリーを説明せずとも伝えることが可能になります。

そして、イラストの内容やストーリーを読み手にストレスなく理解させることがレイアウトの役目になります。

魅せたいストーリーを構築することについては、フジワラヨシト先生の記事「人の心に残る作品を。“ストーリーを宿す”イラストの描き方」を参考にしてみてください。

レイアウトのルール

まず情報の見せ方について、情報を読ませるものなら「視線は上から下へ流れる」というセオリーがあります。

ビジュアルの視線誘導にはある程度の型があります。

・均一なテキスト情報に対して、視線は左上から右下へ流れる(グーテンベルグ・ダイアグラム)
・文字情報の中に画像があるとそこに注視する
・大きいものから小さいものへと視線は流れる

これらのテクニックの組み合わせで、画面を見やすく整理することが可能になります。

上記の図をテクニックを元に先ほどの画像を分析すると、左上から右下へ流れるZ型の視線誘導に基づいていることが分かります。

さらに文字以外に注視するポイントを見てみると……

人物が大きく描かれていることから、左中央にあるイラストが起点になって視線が分散しているのが分かります。

上記以外にもたくさんのテクニックがあります。イラストの基本的な視線誘導については、kaito先生の記事「つい惹かれるイラストに! サムネをクリックさせる「視線誘導」のコツ」を参考にしてみてください。

さて、テクニックの組み合わせで視線誘導を操作すると説明しましたが、これをイラストに活かすことで、誘導された視線の流れのぶつかり合いがイラスト内での演出やストーリーを産み出します。

こちらのイラストは、漫画や舞台の「上手(かみて)・下手(しもて)」の概念から派生した演出方法を用いています。「上手・下手」とは、舞台用語でステージや座席の場所を指す言葉で、客席から舞台に向かって右側のことを上手、左側を下手と言います。上手はポジティブなイメージを、下手はネガティブなイメージを持っており、これを演出に活かすことができます。

右から左へと進行方向に向いている人物は、視線の流れ方とモチーフの向きが合わさって力強くポジティブな演出効果になります。反対に、左から右へ向かう人物やモチーフは、流れに対して立ち向かったり逆行したりするイメージになります。

こちら2つ、並べると分かりやすいです。

2つとも人物のポーズをあまり変えずに表情だけ差が出るようにしていますが、まるで「ヴィランVS主人公」のような構図になりましたね。これがレイアウトが生む演出効果です。

こういった演出意図の持たせ方については、普段からいろいろなイラストやポスターを分析して、自分の中に何個か引き出しを持っておくと良いでしょう。

実際にイラストを分析して、描いてみよう

レイアウトにおいて大事なのは視線の流れを考慮して演出意図を差し込むことで、それによりイラスト内のモチーフやストーリーに見る人が反応する速度を操ることです。情報の視認性を操ることが、イメージを魅力的に見せる鍵になります。

ストーリー重視のイラストを例にお話しします。

こちらは女の子が愛を訴えるテーマのイラスト。人物の顔とバックのハート型の雲が一直線に中心に並び、コントラストが映えるレイアウトになっています。

自然な視線の流れで女の子に目を向けると仄暗い印象ですが、下から上へと視線の流れに逆流するように見るとハートがあります。人物の重力と視線の流れの進行方向が同じなのに対して、心理状態を表す背景が逆行することから、女の子の激情を思わせる力強い構図になっています。

続いては趣向を変えて、描き込みの多いイラストです。

画全体の不安定さと描き込みの圧を見せるイラストになります。

レイアウトのルールとして読み手は均一な描き込みに対しては目が泳いでしまうため、描き込まれた模様を利用し、主題になる人物の顔に焦点が合うように集中的に線が描かれています。とはいえ視線の流れが気持ち悪くならないように、注視するモチーフを上重心に配置し、人物の重力感と視点の流れ方のセオリーを守るようにしています。

また、「描き込んだイラストの背景にあまり注目してもらえない!」ということを逆手にとった疎密による視線誘導を狙い、周りの描き込みはあまりムラの無いようにして、人物描写を気持ち強めにデフォルメしています。

さて、こんな感じに演出意図の分析をしたところで、これまでにお伝えしたことを応用して実際に描いてみましょう。

今回はキャラクターの魅力を伝えるイラストを描くことを目標に制作してみます。

まずはザックリとラフです。

今回は、自分が過去に自主的に制作した映像に登場する主人公の男を描いていきます。

レイアウトの演出意図としては、背景を地獄にするため重力を感じさせる構図にしつつ、右上の人物の顔が視線の起点になるように考えており、視線の流れに対して主人公の目線だけが反対方向を向いた描写でキャラクターの心理状態を表現しています。

今回はキャラクターを魅力的に見せることだけを考えて、余計な情報は増やさないようにしています。

下描きの段階では、わざと視線誘導を無視して描き進めてみました。いかがでしょう?

主人公の足元に空間が広がって安定感と画面の奥行きは出ましたが、当初の「地獄の重力感を見せる」というコンセプトからは少しずれてしまっています。

こちらが完成品になります。周囲のパーティクルで空間の広がりを持たせつつ、画面の重心も操っています。パーティクルを散りばめずに人物の顔の横に集中線の役割として配置したことで、一点透視のような効果も狙っています。色彩構成についても、コントラストをあげることで顔の周りを視線の起点として注視させています。

さいごに

今回はイラストのレイアウトについてご紹介しました。要約すると、イラストの見え方のセオリーを守った上で、画面の注視点を操ることができたら、いくらでも構造が生まれてくる!その中に自分の魅せたい演出を重ねていこう!ということです。

レイアウトの引き出しが増えると作れる作品の幅も表現もドンドン広がっていきますので、楽しんで色んな作品を分析していきましょう。

〇プロフィール
えいりな刃物

映像作家としての多数のMVを制作。 最新作に『死神』を自主製作映像として公開。
Twitter https://twitter.com/eiri7hamono
映像の過去作 https://youtube.com/playlist?list=PLRg53M_EyTU0aGz7MK1adUfT2rF7Xq_8C


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