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お絵描き機材を買う時に一番大事ことは? 初心者向け、機材の選び方|refeia

KUAイラストアドベントカレンダー、12月18日はイラストレーターのrefeia先生から『お絵描き機材を買う時に一番大事ことは? 初心者向け、機材の選び方』です!


こんにちは!refeiaです。京都芸術大学通信教育部イラストレーションコースでは「書籍イラスト」と「ゲームイラスト」の授業を担当させていただいています。

さて今日の記事は、デジタルイラスト機材の買い方についてです。実は私、USBもまだ無いような昔に、何だかよくわからないままWacomの板タブを買ったてしまったことがあります。そうしてガジェット趣味が高じてデジ絵の道に入り、色々いじっているうちにプロになっていました。

絵師としてもガジェットオタクとしても長いので、今日の記事は皆さんの参考にしていただけると思います。よろしくお願いします!

製品過多と情報過多の時代の泳ぎ方

この記事は、これからデジタルイラストに入門する人が何を買ったらについて、以下のような疑問に答える形式で進めていきます。

「iPadでシンプルにやりたいけど大丈夫?」
「やっぱりPCのほうがいいの?」
「液タブ? 板タブ? どうすれば……」
「左手デバイスとか使ったほうがいいの?」

そのなかで、皆さんにお願いしたいことを最初に書いておきます。

1番大事なのが、迷うあまり後回しにしすぎないこと。

現在は、買える機材も情報もあふれかえっています。iPadもなくタブレット製品も1社しかなかった昔と比べて、目移りしがちです。選択肢が多いのは良いことですが、迷ったあげく始めるのが遅くなってしまっては元も子もありません。

買い物で失敗したくない気持ちは、誰しもがあります。ですが、買ったもので多少モヤモヤするよりも、それを恐れて始めるのが遅くなるほうが大きな失敗です。

1番大きな上達の機会は、自分が最も若くて吸収力が高い直近3か月に転がっています。それを1回、また1回と逃すのに比べれば、制作環境が多少ベストじゃないぐらいのことは誤差のようなものです。

次に大事なのが、買った後も自分にぴったりの機材を探す工夫を続けてほしいこと。

機材に「最強」はありません。もしあったらこの記事は1行で終わりますしね。

ただし、ある人ある時期に「最適」なものはあって、究極的には本人にしかそれは分かりません。そして「自分にとっての最適」は急に見つかるものではなく、何かを使い始めることで「自分にとっての最適」を見つける旅が始まるのです。

「iPadでシンプルにやりたいけど大丈夫?」

それでは本題に入っていきましょう。

まずはiPadについて。最近は若い絵師さんを中心に、iPadとApple Pencilをメイン機材としている方をよく見かけます。ですが、イラスト機材と認められるようになってからまだ数年で、本当にiPadでいいのか心配だというのも当然でしょう。

これだけ描けるのはやはり気軽で、魅力的です

画集「ILLUSTRATION」に載るような、若くてアーティスト志向が強い人は特にiPad率が高いようです。

私個人はiPadをメイン使いしているわけではありませんが、ProとAirの2台を持っていて、常にオススメする立場を取っています。手の込んだイラストを最後まで描き上げるのに十分な機能があるだけではない、万能さがあるからです。

仮に最終的にPCをメインに使うようになったとしても、iPadは、PCを使いづらいシチュエーションを埋める機材として持っていて損になりません。それどころかイラスト以外でも便利なので、万が一iPadではイラストを描かなくなってしまったとしても、「Apple Pencil代はもったいなかったな……」ぐらいで済むでしょう。

iPadの1番のメリットは、圧倒的に煩わしくないことです。単に小型でシンプルなだけでなく、PCにありがちな難しい設定や意味不明なトラブルをほとんど避けられるのも大きいでしょう。

「アイビスペイントX」や「メディバンペイント」のような優秀な無料アプリだけでなく、PC版と同等で超多機能の「CLIP STUDIO PAINT」、iPadの操作性を突き詰めた「Procreate」など、上級者が満足できるアプリも揃っていて、PCに劣らない品質で作品を描きあげることができます。

価格についても有利だと思います。iPad Proなどの上位モデルを買えばそれなりの出費ではありますが、液タブや板タブを別途買う必要もなく、アプリもPC版より低価格が多いので、総合的には安いと思います。無印のiPadならなおさらですね。

ただし気をつけておくべきこともあります。突き詰めたときの制作スピードや、できることの幅はPCに勝てません。シンプルな分、深くカスタマイズしたり、追加デバイスや大画面ディスプレイを導入して制作効率を上げるにも限界があります。

また、イラスト分野では良質なアプリが揃っているので忘れがちですが、クリエイティブ全般となるとPCと同等とは言えません。業界スタンダードのPhotoshopも機能が削減された物しかなく、もし仕事にすることを考えているならば死活問題になりえる問題です。

「iPadでは仕事ができない」というわけでは全くありません。ですが、できうる業務の幅、成しえる制作速度、この両方で限界が少し下がることは覚えておきましょう。

逆に、自分のイラストを収入源として見ていない場合や、まずは満足できる作品を作るのに集中したい場合は、購入候補の筆頭にして問題ありません。

機種は古くなくて小さすぎないものなら、無印からProまでどれでもOK。どの機種でも、基本的にイラストに関して使える機能は大差なく、学ぶのに十分です。それにiPadはリセール価値が高いので、別の機種のほうが良いなら買い換えれば良いだけです。

「やっぱPCのほうがいいの?」

次はPCについてです。

ここ数年でiPadが台頭してきたとは言っても、数年前から描いている人や、イラスト制作を収入源として考えている人は、PCをメイン機材にしている人が多いと思います。自分もそうです。

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PCの良さは懐の深さです。

1つが、ハードウエアとしての懐の深さ。板タブや液タブも小型のものから超大型のものまで選べ、キーボードや左手デバイスで操作を高速化したり、良いモニタを接続して自分なりの快適性・生産性・品質へのこだわりを求めたりもできます。

もう1つが、ソフトウエアとしての懐の深さ。PCは高度なイラストだけでなく、アニメーションや3D、音楽、動画、Webサイト、はたまたゲームそのものの制作など、クリエイティブ全般をカバーするアプリがあふれています。自分に生まれる様々な「作りたい気持ち」や「気持ちが生まれる可能性」そのものを大事にすることができます。

選択肢の多さは人の強さです。iPadの項でも書きましたが、PCは圧倒的に煩わしく、初心者ならば難解さにくじけそうになることもあるでしょう。それでもなお、使いこなそうと努力する価値がPCにはあると、私は思います。

PCは良いものを導入すれば、業務上の要求、自分なりのこだわった制作、幅広いクリエイティブをやりとげる力になります。イラストを仕事にしていきたい人や、イラスト以外の制作にも興味が出るかもしれないと思う人は、優先して検討しておくと良いでしょう。

下位モデルのゲーミングPCであれば、業務レベルのイラスト制作は余裕をもって対応できる上に、スペックが必要なイラスト以外の制作も十分学べます(なんとPCゲームも遊べちゃいます)。薄型ノートPCでも良い物を選べば、イラスト制作だけなら、業務レベルも対応可能です。

(写真準備中)2019年製の薄型ノートです。イラスト仕事用のメインPCとして使っていました。

「液タブ? 板タブ? どうすれば……」

さて、PCで描くことを選んだ人にはもう1つの難題が待っています。「液タブがいいのか、板タブがいいのか」問題です。

私は「Cintiq Pro 16」と「One by Wacom」をよく使用しています

一般的には「板タブは下位で、液タブは上位」「予算があるなら板タブを買う意味は無い」といったイメージがありますが、実はそれほど簡単ではありません。

液タブの最大のメリットは、画面に直接描けることですね。じゃあ液タブの最大のデメリットは? というと、画面に直接描かなくてはならないことです。

首や肩が疲れやすい、画面が近い、画面を正面に捉える設置が難しい……。 液タブをしっかり使い込もうとすると、常にこの問題がつきまといます。長期間・長時間の作業では首や肩を痛めたり、近視が悪化するおそれがあります。

一方、板タブは長時間作業でも疲れづらく、自分の好きなディスプレイを選べますし、距離を取って、正面から絵を見て描けます。

十分に習熟していれば、板タブも(液タブほどではなくとも)正確に描けて、長時間・長期の作業の負担が小さいです。 ……つまり、安くて入門向けというイメージに反して、実は上級者や業務利用に向いているのでは?という気がしますね。実際に、プロの中にも板タブをメイン使いしたり、工程によって使い分けたりする人が少なからずいます。

とはいえ、これから入門するなら安価な液タブが第一候補で良いでしょう。初心者でもある程度思ったように線が引けるのは、圧倒的なメリットです。

費用を抑えたい場合や、素早くて正確なポインティングデバイスとして多用途で活用したい場合には、板タブを優先して考えるのが良いでしょう。上に書いた通り、それぞれにメリットとデメリットがあり、どちらを選んでも一方的に不利になることはありません。

「左手デバイスとか、使ったほうがいいの?」

イラスト用途の製品もありますが、ゲーム用の製品をイラストに使用している例も多いです

ペンタブ以外にもイラスト機材として見かけるのが「左手デバイス」ですね。カチャカチャと素早く操作している様子は格好良いです。これは買った方が良いのでしょうか?

まず大前提として、PCの人もiPadの人もできるだけキーボードショートカットは使ってください。

キーボードショートカットを覚えると操作が速くなります。別に操作それ自体が楽しいことではありませんが、もし上手くなりたいという思いがあるなら、「操作の速さは試行回数の多さ」「試行回数の多さは上達の早さ」という意識を持ちましょう。

その上で、設置のしやすさや姿勢の改善、複数の操作を一括入力できる「マクロ機能」などに利点を感じれば、導入しても良いでしょう。

個人的には、左手デバイスをいくつか試した上でキーボード派になりました。入手しやすく、キー配置を覚え直す必要もなく、そのまま文字入力もできますし、普段と違う環境でも同じように手が動くので気に入っています。

中・小型の液タブなら小ぶりのキーボードを2台、潜り込ませるような配置がおすすめです。

板タブなら、斜めに軽く乗っかるような配置でよく使っていました。

まとめ

さて、ここまで色々話してきましたが、結論の無さに自分でもびっくりしました。そのなかでもやっぱり言えるのは、後回しにしないことの大事さですね。

「早く始めるのが良い」とはいえ、できるだけ良い買い物をしたいものです。この記事で最初の1歩、または途中の数歩の精度を上げるのに役立てていただけたら嬉しいです。

また、こちら( https://www.itmedia.co.jp/author/213849/ )に色んな機材のレビューも書いています。PR記事もいくつか混じっているのは注意してほしいですが、それ以外は中立に書いています。お目当ての機種がなかったとしても、何に注目して検討すべきか、何に惑わされてはいけないかなどの参考になると思うので、お時間に余裕がある人はチェックしてみてくださいね。

ではでは!

プロフィール

refeia
https://twitter.com/refeia

京都芸術大学 通信教育部 イラストレーションコース 講師


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