子供の頃なりたかったもの

娘がおもちゃのキーボードを弾くのにはまっている。最初は私が弾いた音をひとつひとつ真似しながら。
段々ひとりでも弾けるようになってきたけど、まだ楽譜は読めないから、「ドレミかいて」と私に頼んでくる。

メリーさんのひつじ、かえるのうた、きらきらぼしの、音階をカタカナで書きながら、自分が鍵盤をさわっていた日々を思い出す。

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4歳から高校卒業するまで、音楽教室に通っていた。

4歳の私は、エレクトーンが載っている楽器屋さんのチラシをみて、「これやりたい」とはっきりと言ったらしい。両親はエレクトーンがやりたいという私を音楽教室に入会させてくれた。

ちなみにその頃の将来の夢は「バレリーナ」。
でもバレエを習ったことも、劇場で見たこともない。
なりたかった訳は、衣装が素敵だから。4歳女子らしい理由である(だけど、バレエを習いたいとは言わなかったらしい)。

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小学校に入ると、授業かなにかで「あなたの将来の夢」という問いがあるときに、「ピアノの先生」と答えていた。卒業アルバムにも残っている。

そのうち、今考えると恐ろしい値段のピアノを買ってもらった。その頃は、そのゼロの多さにピンと来ていなかったけれど。

中学の頃だったか、もし音大に行きたいなら、音大出身の先生について毎日何時間もレッスンをする必要があるんだけど、どうする？と先生に言われた。

私がやりたい、と言えば、両親は多分協力してくれただろう。でも私は、ピアノがなきゃ生きていけないと思ったこともないし、そこそこ弾ける程度だってことも、なんだかわかっていた(練習だって、そこそこしかしていない)。

"上手く弾く才能"も、"努力する才能"もないと思った。それに、"将来を決める勇気"も、私は持ち合わせていなかった。

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だけど別に後悔はしていないし、好きな気持ちは変わらない。

ピアノの先生は仕事にできなかったけれど、あの頃は想像もしなかった、「自分の娘にピアノを教える」という未来があったこと。

娘が、大きいピアノがほしいと言ってくれる日を、預金通帳とにらめっこしながら、今は楽しみにしているのだ。