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データドリブン組織開発というアイデア

組織開発への関心

4月から新しいポジションとなり、組織開発への関心が高まってきました。変化が激しく複雑な組織の中にあって、人との対話や文化作りの重要性と難しさを痛感したからです。必要に迫られて悩みながら考えてきたというのが正直なところです。

ここ数年ほどピープル・アナリティクスに傾倒していたのですが、その中で出会った「対話」「組織文化」「組織開発」という言葉は、それまでの業務で捉えていた機能のとしてのコミュニケーションとは何か違うのではないかと感じていました。

そして、プレイングマネジャーを脱して組織運営に足を踏み入れたとき、対話や組織開発による組織文化作りの大切さを身に沁みて実感することになったのです。ベン・ホロウィッツの言葉が度々胸に刺さる1年でした。

・優れた文化をつくるということは、状況にあわせて自分たちを変えるということだ。
・リーダーが率先して行動しないかぎり、文化は花開かない。
・組織の文化には、リーダー自身の価値観が反映される。

引用元:Who You Are 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる,ベン・ホロウィッツ,日経BP
 

ピープル・アナリティクスと組織文化

ところで、ピープル・アナリティクスをはじめとしたデータドリブン経営の実践においては、分析的・計量的なアプローチが重視されます。その成功の鍵は経営目標に根ざしたKGI-KPIの設計と組織全体を巻き込んだPDCAサイクルの実現にあると考えています。

ファクトに基づいたPDCAサイクルを実現するためには、仕事に対する問いを高めながら仮説ベースで試行錯誤的に施策を回すことが重要となります。これを実現するには、失敗も許容して学習・実験を優先する懐の深さが重要です。

これを突き詰めると組織文化の変革にたどり着くのではないかと常々考えていました。分析ツールやデータ基盤が整備されたとしても、それが業務にビルドインされなければ効果を発揮しないからです。この話題についてはOODAの観点で過去に記事を書いています。

こうして、数年来考えてきたデータドリブン経営における組織文化の変革と、自らのマネジメント業務に必要な組織文化作りが交差してきたわけです。そのため、組織開発というものについて改めて勉強していくことになりました。

組織開発とデータドリブン経営

独学で組織開発の歴史や方法論を学んでいくと、データに基づく診断的なアプローチから対話重視のアプローチへ発展してきたことがわかりました。組織診断のようなアプローチから入っても組織開発の目的を達成しにくいという話もあり、それはデータ分析屋として現場で長年経験してきたことと一致する知見でもありました。

それでは、データドリブン経営は組織開発と馴染まないのでしょうか?

私は、主にピープル・アナリティクスの実践を通して、データを活用した組織開発は十分にありえると直観しています。

具体的には、データを用いて外から診断するのではなく、組織開発の当事者が共通話題の一つとしてデータを見ながら相互理解を促し議論を深めるというものです。データという客観的な情報をもとに、次のようなものを見て議論するわけです。

  • 組織として見るべきものを見る。問題を直視する。

  • わかっているようでわかっていない隣の人の仕事を相対的に理解する。

  • 施策の効果を定量的な視点で見る。

当事者自らが情報を見てお互いの立場を理解し、心理的安全性を持って議論を深めながら改善施策を考える――。こうしたファクトを共有しながら対話を重ねることが、データドリブン経営における組織開発で重要なのではないかと感じています。それは、ピープル・アナリティクスでのアドバイザリ経験に加えて、自組織のマネジメント課題に取り組む中で気づいたことでした。

データドリブン組織開発による「学習する組織」の実現

組織のビジョンを実現するには、共通の目標に向かってメンバーひとりひとりが強みを発揮しなくてはなりません。そして、管理職はそうした場を作り、必要な経営資源を集約しながら、様々な意思決定を行うことが求められます。これは、プロフィットセンター、コストセンターを問わない話かと思います。

この課題に取り組む中で、ひとりひとりが強みを発揮できる場を作ること、すなわち組織文化の醸成が何よりも重要ではないかと感じました。心理的安全性、学習する組織の話題とも言えます。

そして、組織のサイロ化を解消し、組織の学習サイクルを柔軟かつスピード感をもって実現するための一つの手段として、データドリブン組織開発が効果を発揮するのではないかと考えています。


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