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人事データ分析の切り口(基本戦術)

人と組織

ピープル・アナリティクスで扱うデータは人事データには人に関わるさまざな情報が含まれています。例えば採用に関する情報や生年月日、職種、地位、所属といった人事属性情報です。さらに、日々の勤怠の実績、業績やコンピテンシーの評価、エンゲージメントなどのサーベイで得られた情報などが積み上がって行きます。実際に分析を行うときには、これら人にまつわる様々な情報を分析の切り口として活用していくことになります。

一方、ピープル・アナリティクスで重要になるのが組織に関する情報です。どのような企業であっても何らかの組織構造を持っています。例えば機能別組織を採用している企業では管理部、営業部、製造部のような機能別の部門に分かれ、各々更に細分化された構造を持つでしょう。事業部制組織を採用している場合は、経理部や総務部といった共通機能を持ちつつ製品やサービス部ごとに事業部がおかれます。いずれにせよ何らかの階層的な構造を持つことになるわけですが、こうした組織のまとまりも重要な分析の切り口になります

このように、ピープル・アナリティクスでは組織の階層を意識しながら個体差を考えつつ切り口を見つけて分析していきます。そして、ある程度まとまりのある層に共通する傾向を洞察して人事施策につなげるわけです。

エンゲージメント分析の例

典型的な例として、従業員エンゲージメントの現状を把握することを考えてみましょう。この場合、人の属性に着目すれば以下のような切り口で調査をはじめることが多いと思います。

  • どのような年代でエンゲージメントが低下しているか。

  • 新卒採用者と中途採用者で違いはあるだろうか。

  • 従事している仕事によって傾向は異なるだろうか。(職種など)

一方、組織の構造に着目すると以下のような切り口で分析したくなるかもしれません。

  • どのような部門でエンゲージメントが低下しているか。

  • 階層の上下で認識のギャップがおきていないだろうか。部下と上司はどうか。

そして、人と組織の切り口を複合的に掛け合わせて分析していきます。今回の例で考えると、部門毎に年代別のエンゲージメントの状況を集計・可視化してみるようなアプローチです。

このような形で人に関わる属性と組織に関わる属性をクロスさせながら分析していくことがピープル・アナリティクスの基本戦術となります。

人事施策に落とし込める切り口で分析を

ところで、同じ人事属性を有する従業員が必ずしも同じような考え方や特徴を持っているとは限りません。分析を進めていくと、場合によっては基本的な属性を跨る隠れたグループが見つかることもあります。こうした発見は分析者にとってとても興味深いことに思えるのですが少し注意が必要です。

たとえ、興味深い隠れグループが見つかったとしても、人事施策に落とし込めなければ実務に活かすことができないからです。

したがって、複雑な分析の切り口で分析を進めたとしても、最後にはわかりやすい人事属性に立ち返って考察していく必要があります。このように、ピープル・アナリティクスのプロジェクトでは人事施策との接続性を常に意識する必要があるわけですが、これはどのような分野のデータ分析でも共通することではないでしょうか。

ただし、データ活用の目的が施策の検討でなく、何らかの予測やレコメンドモデルを構築するようなプロジェクトの場合は異なります。こうしたプロジェクトのゴールは調査ではないため、予測やレコメンドの精度が重要なポイントになります。したがって、解釈よりも精度を担保するために様々な特徴量を活用していくことになります。

このように、データ活用の分野ではその目的によってアプローチが変わってくることを頭に入れておく必要があります。

まとめ

  • 人の基本属性と組織構造に着目して切り口を見つける。

  • 複数の切り口の組み合わせで分析する。

  • 常に業務との接続性を意識し人事施策につながる切り口で分析する。

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