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ウォーズ初段くらいまでならこれだけで勝てます。対居飛穴浮き飛車戦法

こんにちは。ヤマンザ子です。どっかのバズレシピみたいなタイトルですが、今回は将棋のことについて書きます。

この戦法は、居飛穴に対して四間飛車が石田流に組み替える作戦です。正確に指されると互角ないし振り飛車が不満〜作戦負けくらいの形勢になりがちなので最近のプロ棋界では見ませんが、ウォーズ初段くらいまでのガバガバ居飛車穴熊に対しては無類の強さを誇ります。
そして、四段くらいまででも対策を知らない居飛車党は多いので刺さりやすいです。まあ大概地力の差でごまかされて負けるのが世の常なんですが。

浮き飛車から居飛穴対策を始めて、上達して相手も強くなり、うまくいかないなあと思い始めたらシステムなりミレニアムなり、別の対策に手を出せばいいと思います。結構捌きの手筋とかがあって勉強にもなります。ただ、厚みを使った指し方は学べません。それはウォーズ初段になってから学びましょう。

また、藤井猛先生の「四間飛車を指しこなす本2」や藤倉勇樹先生の「よくわかる四間飛車」などにも書かれていますので、興味を持たれた方はそちらを読むことをお勧めします。居飛車党の方は佐藤天彦先生の「居飛車穴熊必勝ガイド」などを参照なさると良いと思います。

浮き飛車戦法のコンセプト

浮き飛車戦法は打ち込みのない低い陣形で飛車交換を挑み、自分だけ桂香を拾うというのが理想のパターンです。

「居飛穴相手に捌きあってはいけない」そういった固定観念を打破してくれる戦法です。

居飛穴相手だから捌きあってはいけないのではなく、相手の方が主張が大きい状態で捌きあってはいけないのです。

浮き飛車は居飛穴の「堅さ」に対して、「低い陣形のバランス(美濃なのでそこそこの堅さもある)」+「桂香を拾う駒得」でアドバンテージを得るのが狙いです。主張の数が2対1で勝ってますよね。

基本図までの駒組み

本戦法は後手番の方がやりやすいので、盤面を反転させてあります。24手目△4五歩の局面を基本図とします。△5二金型でも良いです。棋理的には4一金型の方が手広く、正しい気がします。ただ、5二金型は超実戦的(せこいとも言う)な理由での強さがあります(後述)。

ここまでの駒組みの注意点

・▲9八香の瞬間に△4五歩
▲9八香の時が居飛車陣が一番隙だらけな上、香車を上がっているため左美濃にもしづらいのですかさず角交換を挑みます。相手は▲6六歩と止めてくるのが居飛穴の基本的なテクニックです。角交換してくる変化は「四間飛車を指しこなす本2」に詳しいですのでそちらをご参照ください。

・△3二銀型にする
じゃないと△4五歩が突けないですからね。

・8〜5筋の歩を突かない。
浮き飛車戦法の名の通り、この戦法は飛車を四段目に浮きます。その時に歩が邪魔にならないようにする意味です。

後はまあ普通に四間飛車美濃囲いに組んでおけば問題ないかなぁと思います。

戦いへ

基本図以下の指し手
▲6六歩△3五歩▲8八銀△4四飛▲7九金△3四飛

△3五歩〜△4四飛〜△3四飛で石田流になりました。良い形ですね。
△3五歩と△4四飛は手順前後が利きませんので気をつけてください。

△3四飛(上図)以下の指し手
▲7九金△3六歩▲同歩△同飛▲3七歩△3五飛

飛車先を交換して△3五飛が主眼の一手。後に狙いがわかります。

△3五飛(上図)以下の指し手

▲6八金右△1四歩▲1六歩△1三桂▲7八金寄△2五飛▲同飛△同桂(結果図)

突然△1四歩と端歩を突きます。居飛車側は「なんじゃそれ?」と思いながら玉を固めたり端を受けるくらいですが、△1三桂〜△2五飛で見事飛車交換に成功です。

結果図は後手陣には飛車の打ち込みがなく、一方で先手陣にはいっぱい打ち込める隙があるので後手良しです。桂香をゆーっくり拾って相手が暴発してきたところを咎めましょう。

余談(△5二金型の場合)

図は△5二金型で全く同じように進めた場合です。私はこの将棋を何局も指しましたが、ウォーズ初段くらいまでだとめっちゃ高確率で▲3一飛と打ってきます。ノータイムで△4二金と寄ればあら不思議。次の△4一金が防げず、飛車が詰みます。

本当は△4一金型の方が△3二金型の余地がある分得なのですが、棋力帯によってはこういった誘いの隙を作る高等(下等?)テクニックもあります。本当に余談ですね。面白いように引っ掛かるので、一回試してみてください。ここまで来たら形勢自体も振り飛車が良いですし。経験的に24よりウォーズの方が引っ掛かります。

終盤のポイント

先程の結果図で振り飛車良しなのですが、そこから終盤に入っていく上で2つコツを紹介したいと思います。かなり実戦的なものです。

・丁寧に指す(辛抱強く相手の自爆を待つ)
確実に相手玉が寄る時以外端攻めをしない

形勢自体は振り飛車が良いとはいえ、あの手この手で居飛車側も暴れてきます。丁寧に対処しましょう。

また、端攻めをしてしまうとどうしても戦線が拡大してしまうので逆転のアヤが増えてしまいます。これは私の経験則なのですが、端を攻めなくて良い時に攻めると結構逆転されます。そういった経験も大切だとは思いますが、やはり皆さんも勝ちたいと思うので端はあまりいじくらないようにしましょう。

居飛車側の対策

振り飛車側にとって虫がいいことを言っても仕方が無いので、居飛車側の対策をチラッと触れておきたいと思います。

1つは▲7八金と引き締めてから▲6五歩と突く対策です。▲7八金に変えて▲9九玉だと6五歩に△8四飛が先手になって失敗します。
△3四飛を牽制していることがおわかりかと思います。(角交換から▲4三角や▲2二角がある)。

もう1つは△3五歩に▲3八飛と回る対策です。
△4四飛に▲3六歩を用意して牽制しています。
そして、この類型局面はタイトル戦でも現れています。(第9期竜王戦7番勝負第1局)

どちらも有力な対策で、現状は居飛車側に手段を凝らされると振り飛車側が作戦負けしやすい印象です。
AbemaTVトーナメントで羽生先生が佐々木勇気先生相手に浮き飛車戦法を採用していた記憶がありますが、うまく対応されて敗れていました。

ぶっちゃけこういう対策を知っている相手はおそらく私やあなたより強いのでその時は諦めましょう。この対策を食らった時は「自分もこんな強い相手と指せるくらいになったんだ!」と喜び、そして新たな対策を勉強しましょう。

最後に

今回紹介したのは浮き飛車戦法の触りの部分といった感じで、興味を持っていただけた方は冒頭に紹介した棋書を参照いただければと思います。

知らない相手にはめっぽう勝ちやすい戦法に思います。居飛穴対策に悩まれる級位者の方は試してみる価値はあるかと思います。

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