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世界に一つだけの花

ナンバーワンにならなくてもいい もともと特別なオンリーワン

良いワインは良いブドウからできる。なんとも当たり前な話である。
では良い生産者の持つ畑のブドウはそのすべてが極上の品質なのだろうか。
そうではない。またそうならワインはもっとつまらない飲み物だっただろう。

畑の位置やその土地の気候、土壌や樹齢によってもその品質は変わる。
翻せば均一な品質のブドウなどこの世に存在しないとすら言える。
そのワイナリーにとって最上のブドウで造られたワインはファーストラベル、
少し質の落ちるものや若木のものはセカンド、またはサードラベル用となる。

ここからがワインの面白いところで、セカンドやサードラベルのワインが
ファーストラベルのものと比べ味わい的に劣っているかと問われると
一概にそうとは言えないのである。価格差は下手すれば数倍にも上るのに。

これはまた別の機会でも触れることになるであろう「ヴィンテージ」でも
同様のことが言えるのだが「恵まれた条件で造られたワインは美味しい」と
言い切れないところがワインという飲み物の不思議かつ魅力的なところだ。

極上の畑の上質なブドウで造られたいわゆるグラン・ヴァンや
天候に恵まれたチャートで言うところのグレート・ヴィンテージのワインは
そのポテンシャルを発揮するまで、つまり美味しくなるまでに年月を要する。

逆に若木や一般的なレベルの畑のブドウを使ったセカンド以下のワインや
生産者を悩ませることになるバッド・ヴィンテージと言われる年のものは
比較的早いうちから開き、その線の細さから繊細な旨みを呈することが多い。

それぞれのワインの実力や飲み頃を適切に読み取りサービスするわけだが
これが実に難しい。経験値はもちろん膨大な知識も必要となってくる。
ソムリエにとって飲み手としてのキャリアやセンスが問われるところである。

ファーストからサードまで、それぞれのクラスのワインを飲めればいいのだが
現在の高騰したボルドーやブルゴーニュではなかなか難しい話である。
そこでお勧めしたいのはイタリア、トスカーナのサンジョヴェーゼだ。

モンテヴェルティーネ、個人的にも大好きなサンジョヴェーゼの造り手。
キャンティ・クラシコというブランド名を捨てた冷涼感のあるワインを産む。

ファーストラベルとなるレ・ペルゴーレ・トルテは毎年異なるラベルが有名。
女性をモチーフに描かれるアートラベルはそれだけでも味わいが向上する。
但しご多分に漏れず凝縮したブドウのワインらしく若い時はグリップが強い。
飲み頃までリリースから数年は待ちたいところだ。できれば10年以上。

セカンドが写真のモンテヴェルティーネ。ワイナリー名を冠したワイン。
個人的にこの生産者のワインではこれが最もバランスに優れていると思う。
サンジョヴェーゼらしいチャーミングな果実味と標高の高さを思わせる酸味。
早いうちから美味しく飲めるが少し熟成させるとブルゴーニュ的に感じる。

サードはピアン・デル・チャンポッロ。樹齢の若い木のブドウから造られる。
リリース直後からとても美味しく飲めるパフォーマンスに優れたワインだ。
一体何本カジュアルな会でこのワインを開けてきたか覚えてないほどである。

それぞれのクラスのワインにそれぞれの良さがあり、値段や飲み頃も異なる。
あらゆる価格帯のワインをまんべんなくテイスティングし、評価することが
結果的にソムリエとしての技量をアップさせることになるだろう。

ラベルやワインのランクにこだわることなく正当に評価できるようになれば
世界には想像以上に素晴らしいワインが存在することに気づくはずである。

小さい花や大きな花 一つとして同じものはないのだから。

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