MIT MBA留学で学んだこと(6)~マーケティングの授業で印象に残った話 その2~
前回に引き続き、マーケティングの授業で印象に残った話や言葉の続きです。マーケティングを生業にしている方、専門的に学んだ方でないとわかりにくい部分もあるかもしれませんが、考え方の1つとしてご覧ください。
(11): Capital Market is efficient (資本市場は合理的である)
・Access to capital is reasonable transaction between money and risk/return
(資本市場とは、お金とリスク/リターンが合理的に交換される場所だ)
(12): How can the company have its differentiation sustain longer ?
(どうやって差別化要素を長期的に維持するのか?)
・Spec sheet上に載せにくく他社と比較されにくい差別化要素を多く持つ事
(例1):デジカメ
A: Spec sheetに載るもの:画素数、F値、重量、電池持続時間、
B: Spec sheetに載らないもの:信頼性、使いやすさ、サポートの手厚さ
→顧客がBの価値よりAの価値を重視しがちな市場なので、他社と比較されやすく、参入障壁が維持しにくい市場
(例2):コンサルティング
A: Spec sheetに載るもの:価格、在籍コンサルタント数、案件実績数
B: Spec sheetに載らないもの:信頼性、コンサルタントの質、ノウハウ、業界知識、ネットワーク、サポートの手厚さ
→顧客がAの価値よりBの価値を重視しがちな市場なので、他社と比較されにくく、参入障壁が維持しやすい市場
(13): Niche Market Strategy (ニッチマーケット戦略)
・①: Increase customization to niche customers (ニッチ顧客のニーズへの徹底的なカスタマイズ)
・②: Stay niche (ニッチ市場に留まり、他の市場に拡大しないこと)
・③: Enter multiple niche markets (複数のニッチ市場に参入すること)
(14): Market PowerとBargaining Powerの違い
・Market Power: Influence for competing horizontal players (同じ市場で戦う企業への影響力;競合他社)
・Bargaining Power: Influence for competing vertical players (バリューチェーン上の他の企業への影響力)
(例)AppleにおけるMarket PowerとBargaining Power
Market Power: Apple(iPhone) vs Android
Bargaining Power: Apple vs iPhoneの部品サプライヤー各社
(15): What are Strategic Resources ? (戦略的リソースとは?)
・①: Ownership & Control (オーナーとしてコントロールを持てているかどうか)
・②: Differentiation (競合他社との差別化要素)
・③: Sustainability (長期的な差別化要素の持続力)
・④: Customer Satisfaction (顧客に十分な価値を届ける力があるか)
→ Enter only where you have strong strategic resources compared with competitors (競合他社と比較して強力な戦略的リソースを持つ分野にのみ参入する)
(例): McKinsey & Company (戦略コンサルティング会社)
①: Human Capital (世界中の優秀な人材を採用・育成し続け、雇っている)
②: Network (グローバルに拠点を持ち、長い歴史の中で築かれたノウハウ、知識、ネットワークがある)
③: Brand (世界トップのコンサルティング会社というブランド認知がされており、比較が難しい要素なので持続もしやすい)
④: Proven Track Record: (これまで継続的にグローバル大手企業からプロジェクトを受注し続けている)
(16): How to collaborate vertically with the other player in the value chain ? (バリューチェーン上の他社と協業するには何が必要か?)
・Share information (情報・ノウハウの共有)
・Share technology (Strategic Resource; 技術の共有)
(例): トヨタは自動車部品会社と自動車に関するマーケット情報、調査結果、試験結果など様々な情報を密に共有し、サプライヤーサイドでもイノベーションが起こりやすいエコシステムを構築している。その結果、イノベーションの多くはサプライヤーサイドからの提案で実現している。
(17): Collaboration or Compete ? w/vertical players (バリューチェーン上の他社と協業するか、競うかどうやって判断するか?)
Question 1: Who owns customers ? (どちらが顧客を握っているのか?)
Question 2: Which differentiation customers would care the most ? (どの差別化要素に顧客は最も価値を感じているか?)
Question 3: How much do you want for your partners’ help to create value ? (付加価値を生み出すのに、パートナーのサポートがどれほど必要か?)
→In order to collaborate, integration are the keys to success (良い協業をするにはIntegrationが成功のカギになる)
What is Integration ? (Integrationとは何か?)
→Decide what to standardize or what not to (何を標準化し、何を標準化しないかを決める事)
(18): In order to maintain its differentiation, it is necessary to... (差別化要素を維持し続けるためには。。。)
・①: Innovate differentiation (イノベーションを続けていく)
・②: Destroy differentiation (差別化要素を破壊する)
→It is because competitors persistently make effort to catch up with your differentiation (なぜなら競合は常に差別化部分を埋めようと努力し追いつこうとしてくるから)
(例): ラボグロウンダイヤモンド(人工ダイヤ)が市場に出てきた時にデビアス社が取った戦略
競合が天然のダイヤモンドの約半額で人工ダイヤを販売していた中で、デビアスは別ブランド・別会社を設立し、競合の1/5~1/6の値段で商品を出した(天然ダイヤモンドの1/10の値段)。これは顧客を握っているデビアスだからこそ出来た戦略であり、差別化要素を消した事例
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(19): Communication by media (顧客とどのメディア・手法でコミュニケーションするか)
・Where is the most precious / scarce resource ? (どれが一番貴重かつ少ないリソースか?)
→ at the top (Face to face meeting) 一番上の対面打ち合わせが貴重
→ most valuable customers are approached by the top (最も重要な顧客は対面打ち合わせでアプローチする)
・Bottom(Digital) is commoditized indicator and unmeasurable for performance (Digitalはコモディティ化されており、厳密に顧客との関係性のパフォーマンスを測ろうとすると実は難しい)
(20): Data Analysis
There are four types of data; (データには4種類ある)
1. Characteristics; Demographics etc (特徴;年齢性別などのデモグラフィック情報)
2. Outcome; did they purchase ? (結果;購買データなど)
3. Firm actions; Advertising Impression (具体的行動; インプレッション、クリック率、遷移率など)
4. Experimental; simulate impact of varying firm actions (実験的データ; もし何かのインプットを変えたら、3の具体的行動にどう影響を及ぼす事が出来るか、に関する実験・実証データ)
→このExperimentalデータが存在する事はほとんどない
Goals of analysis (分析の目的)
1. Grouping; which customers are similar ? (グルーピング; どの顧客どうしが同じ属性か?)
2. Prediction; Which customers are most likely to buy ? (予測;どの顧客が最も買ってくれそうか?)
3. Change outcome; How can firm increase likelihood that a customer will buy ? (結果への影響;どうやったら顧客の購買確率をより上げられるか?)
(21): Analytics and AI are good at finding correlation, but not good at causation (分析ツールやAIは相関を見つけるのは得意だが、因果関係の分析には弱い)
(例): アイスクリームの売上と海でサメに襲われる被害件数は相関している。つまり、アイスクリームを売るのをやめればサメの被害を減らせる。もしくは、サメの被害件数が増えてきたら、アイスクリームを売れば儲かる。
→ 相関だけを見ていると上記のようなメッセージになってしまう。→Prediction requires correlation, but doesn’t require causation
(予測には相関データが必要だが、因果関係の紐づけは必要ない)