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片ペン読書録 『133キロ快速球』

山本昌 著 『133キロ快速球』 ベースボール・マガジン社新書027 2009年

1.読書の意図
 私が野球を見始めたのは2008年、中日ドラゴンズは「守り勝つ野球」で黄金期を迎えていた。そんな野球を最高に面白いと思わせてくれた1つが、著者のピッチングだったと思う。あの味わい深い投球は何であったのか、そんな思いで着手した。

2.内容
 著者の野球人生は「留学前」まではマイナスの連続だった。まず股関節のつくりから速い球が投げられない。また、プロに入る前は何度もの繰り上げを通して投げる機会を得てきた。そして、プロに入れば戦力外通告に怯え、かつ、事実上の戦力外通告ともいえるマイナーリーグでの留学も経験している。しかし、これらが質の高い変化球を投げることに、また代名詞となるスクリューボールを習得することとなる。このような「マイナス×マイナス」によるプラスが、著者の野球人生をつくりあげていったのである。

3.感想
 著者の軌跡、考え方は本書を読んでいただくことにして、感想として特筆すべきことは著者の謙虚さであろう。スクリューボールはマイナーリーグの内野手から教わった。けがをしたときには、野球経験者ではない人物の教えを受けた。また、ラジコンにおいても、そのプレイヤーたちから努力を学んでいる。そして、その人柄はアマチュア、プロでのライバルとの向き合い方においても表れている。さらに、この謙虚さが今の自分にとって何が必要かといった分析力を高めていき、この力が野球人生の「長寿」を成している。
 私が野球を見始めたのが2008年。著者は43歳にして11勝を挙げている。あのピッチングは謙虚さとそれによる「自分の強み」をふんだんに生かした、まさしくプロのピッチングだったのだと思う。

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