モガの資格

モダンガールに必要なものとは

 先日、モボ・モガについて調べていてモダンガールの資格十箇条というものを見つけた。
読んでいて、当時の女性達がモダンガールとしてモダンライフを送るために必要な身構え、心構えがあったのだろうと考え込んでしまった。
こういった十箇条という思想はジェンダーレスな権利(男女の権利の差別を撤廃)を訴える女性達の叫びだったのかもしれないと考えると、フェミニズムを体現した女性達がモガだったのかもしれないという解釈もできる。

因みにモダンガールの資格十箇条は、調べていくとどうやら大正 15年に発売された婦人世界という雑誌に掲載されていたようだ。

モダンガールの資格十箇条

□第一条
第一に彼女はしとやかな女らしさの敵でなくてはならない。
断髪の剃りあとがどんなに青々しているかなどと苦にすべからず。
隣に座ったお嬢さんに対しては、わざと両膝を組んで傲然とするくらいの
勇気が必要です。

□第二条
どんなに「お汁粉」が食べたくても我慢して喫茶店に入らなければならない。
ひょっとすると、女学校時代の癖が出て「田舎」などを食べたがるものだが、モダンライフには古典と野趣は大禁物。
味覚もあくまで近代的であり、都会的でなくてはならない。
喫茶店に入ったらまず「ジンジャエル」を注文すること。

□第三条
どんな蓄音機でもいい。ジャズのレコードさえあるなら。
そこで足踏みしながら「ゴールデンバット」をふかさなければならない。
少々むせるくらいは仕方なし。
「敷島」や「大和」や「なでしこ」は大の禁物。
客間用、外出用としては金口をかならず用意すること。
もっとも外出用のときは安い金口で結構。

□第四条
洋酒と名のつくものはひと通り飲んで、しかも名前を覚えなければならない。
これは少々資金がかかるのでときにおごらせる必要がある。
「ボーイさん、まああなたは可愛らしいロビンだこと」などと言い寄って、魅惑的なやわらかいところを見せるべし。
彼はマネージャーに内緒にカクテルを調合してくる。

□第五条
外国の流行雑誌は少なくとも五種類ぐらい見なければならない。
丸善の店頭でめくってもよし。
そのなかから半日がかりの辛抱強さで、帽子からコルセットにいたるまでの気に入りを見つけ出すべし。
一本のピンなりとも軽率に買ってはならない。
パリーやホリウッドの最新流行を調べたうえで、最も新奇なものを買うこと。

□第六条
「ねえ、ここにもトーキーがいよいよ来るんですってね……だけどあれはどうかしら。あら!ドロレスコステロはずいぶんひどいわ、だってジョン・パリをとっちゃうんだもの……」恋人の存在などを忘れて、シネマに熱中する癖をつけなければならない。
彼もまたシネマに熱中すべければなり。

□第七条
踊れても踊れなくても、とにかくダンスホールへ出入りし、いつもあっちこっちのホールの「御招待券」を持っていなければならない。
もしペーブメントで知り合いのモボちゃんに会ったら、一枚ずつ寄付すること。
そしてその雰囲気のデカダンスを誇張して吹聴すべし。
ただし二三日したらまた返してもらうべし。

□第八条
土曜日曜の夜は、必ず銀座へ散歩に出なければならない。
そしてたまには、どんな男でもいいから、ゴルフ・マンの支度をさせて同道する。
相手が疲れたらソーダファウンテンでプレーンソーダをおごること。
味ものは野暮なり。
かくして少なくとも十一回は往復すべし。
ただし夜店ショーウインドをのぞくべからず。

□第九条
伊勢屋のノレンをくぐるのに、ヘキエキしてはならない。
そしてどんなに無理しても間服をつくるべし。
冬服から夏服にうつる間、ちょっと行方不明になるごときはモガの恥なり。
伊勢屋の番頭は甘いから、たんまり貸してくれます。公設質屋ならなおよからん。
ただしこの際はつけほくろの位置に注意することを要す。

□第十条
己に利害関係のある男性のすべてに、まず唇を提供すべし。
彼がどんなにハゲチャビンたりとも醜男たりとも、躊躇してはならない。
そしてその際必ず「あなただけよ」とささやくべし。
なべて男は甘きものなり。ただし「貞操」を提供すべからず。
「貞操蹂躙」「慰謝料請求」の訴訟沙汰は、もはや過去の遺物でもある。


 上記のモダンガールの資格十箇条から外国から入ってくる文化を含め、流行を地でいくために全力で格好つけ、自身を世に主張した姿が想像できる。
当時の女性達がモダンガールであるために、強い女性であるために、女性としての立場や権利を主張するために多少の無理や我慢も必要だったのだろう。

 現代の女性に置き換えて考えてみると、十箇条のような仰々しいものはないにしても必死に流行を追い続けて輝く自分を模索していることに変わりはない。
インターネットやSNSが普及して情報を容易にキャッチできるからこそ、流行を追いかけるという行為は加速しているように思える。
そして、当時のモダンガールの様に1つのジャンルに縛られるのではなく、様々なスタイルが今の世にはあるからこそ多種多様な女性が確立されている。
こうやって、スタイルは変われどもいつの世にも流行を追いかけるという文化は廃れることなく女性達に影響をもたらしていくのだろう。

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