ChatGPTを用いてお笑いのネタを書く方法
先日5月7日に『途中で書くのやめたネタの続きをAIに考えさせてみたver2.0』というライブを行いました。名前の通り、芸人が途中まで書いたネタの続きをAIに書かせるという内容で、各芸人からもらったネタをChatGPTを使って(面白いかは別として)完成させるというものでした。
アーカイブはこちらです。よかったら見てください。
https://twitcasting.tv/butaisode_katoh/shopcart/229388
これまでに色んな芸人がYouTubeなどの媒体でChatGPTを使った企画をやっていますが、うまく活用できていないことがほとんどでした。その問題点と原因についてはこちらの記事で考察しています。
今回のライブを通してどうすればChatGPTにお笑いらしいふるまいをさせることができるのか、いくつかの知見が得られたので共有しようと思います。せこいですけど途中から有料です。
高性能AIと「整合性の鎖から解放する」ことの相性の悪さ
「大喜利β」という大喜利を行うAIがあります。正確なリリース日は不明ですがTwiterアカウントは2016年から運用されており、現在はLINEでも利用できます。お題に対して回答を行い、精度はまちまちですが面白い回答をすることもあります。
「面白いとは何なのか」をここで論じることは難しいのですが、少なくとも大喜利においては、満たすべき最低の条件として「お題の趣旨に沿っていて、なおかつ『(お題から論理的に導かれる)普通のこと』を言わない」必要があります。よってこれを満たした回答を繰り返していれば、ある程度ランダムな言葉の組み合わせであっても面白い答えが確率上出るわけです。この大喜利βはそこからさらに大喜利の思考回路や面白い回答と学習させているので、けっこう”模範解答”ことも答えたりします。
対してChatGPTは、与えられたセンテンスに対して「整合性の高い回答」をすることがウリなので、「普通のこと」しか言いません。つまり非常にお笑いと相性が悪いです。例えばこのような文章で大喜利を出してみましょう。
回答。
ダメですね。では「面白い怪奇現象」を考えさせるために、こういうお題に変更してあげましょう。
回答。
まだ駄目です。というかまさに大喜利の調子が悪い時の脳内って感じです。
このように、単に「面白いことをやってくれ」という指定ではChatGPTは面白くなりません(それは実際の芸人でも同じですが)。AIにはAI用の指示を考える必要があります。AIイラストの界隈では「呪文」と呼ばれていますね。
本記事で取り扱わない傾向のネタ
以下、AIにどんな指示をすればどんなことができるようになるのかを書いていきますが、二つだけ取り扱わないものがあります。一つは「この世にある既存の面白い事象を編集しただけのネタ」。もう一つは「言ってることは正しいのに、なぜか面白いネタ」です。
前者の例でいうと、「世界各国の面白い法律を紹介するフリップネタ」などです。これは編集や紹介の仕方にはユーモアの入る余地があると思いますが、「世界各国の面白い法律」については既存の情報収集法で対応可能であり、「AIでお笑いをやる」という趣旨に含めないこととします。
後者の例でいうと、ブラックマヨネーズさんのネタがそうです。二人の会話が論理的に破綻していたり、極端にナンセンスなことを言ったりするわけではないのに、なぜか面白い。これをAIで扱わない理由は二つあります。一つは「論理的にはまっとうなのに面白い」というニュアンスをAIに理解可能な形で提示することが極めて難しいから。もう一つは、そうしたネタはたいてい演じる側の「人間力」みたいなものに依存していることが多いからです。ブラマヨさんのネタは、小杉竜一と吉田敬という人間の(肉体的・精神的両面の)パーソナリティの寄与が大きいからであり、文字情報しか出力できないChatGPTには再現できないと考えるからです。
では本題に入りましょう。
ここから先は
¥ 500
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?