お前のことがピーー××なんだー!!

この投稿は
#100文字ドラマ
#テレ東ドラマシナリオ
募集用の投稿です。以下【月がきれいですね】着想したものです

なんでもない日常が訪れるはずだった朝、テレビでアナウンサーが速報を伝える。

「速報です。私達の言語から、相手に好意を寄せる発言が軒並み自主規制音に変換されるという現象が発生しております。なお、現象は発言だけでなく書面にも黒塗りになるという形で発生している模様です。このような異常現象に対し政府は…」

朝食を食べていた和夫は、トーストのかけらをまきちらしながら叫ぶ。
「ウソだろみねちゃんー!!ピーー××!」
お気に入りの女子アナへの愛の叫びは、見事に自主規制音に変換される。
「まじだったー!!!」
「食べてる最中に叫ばないの和夫ー!!」
和夫よりもよほど大きな声で怒る母の声と、お玉が頭にぶつかる音がこだました。

いつも当たり前にできる事ができなくなる、始まりの朝だった。

…とはいえ、身体的にもインフラ的にも何ら問題もない状況では別に学校が休みになるわけでも会社が休みになるわけでもない。
和夫は普通に登校し、
「うーっす。」
とクラスメイトの清に声をかけた。

「よー、カズ。ニュース見た?」
「ピーー××だろ。見た見た。見た瞬間叫んだわ」
「お、マジかほんとにピー音なんだな!俺初めて聞いたわ」
「きちんとピーー××って言ってるはずなのになんでかピーになるんだよ。ちなみにまだ書くのはためしてない」
「まじでー?やってみようぜー!」

ノートに「す」を書くとなんともない。でも「き」になるといきなり黒塗りになった。
清が「んー?」と言いながら、ゆっくり「すきやき」と書いたときには何も変わらなかった。
「…どういう基準なんだ?」
ちなみに「好き」は黒塗りだが「好物」は残る。「愛」「愛情」はどちらも駄目だ。
「おもしれー。けど、わっかんねーな…」
と考え込む清。
「キヨあったまいーなー!俺全然思いつかなかったわー、でもまあピーー××って感情で書いたらだめなんじゃん?」
「…そうかな?」
「だってこっちがなんも考えなくてもピーー××って言ったらピーになるんだぜ?書くのだって勝手に変わっても不思議じゃないだろ」
「そっかなー…ま、日常的には困らないからまあいいんだけどな…」
「困るよ!」
ガタン!と音を立てつつ立ち上がりながら大声を上げる和夫。
「お…おお…」
「だって俺!告白できないじゃーーーん!!」
困る、大変だ、緊急事態だ、と大騒ぎの和夫と、「まぁまぁ落ち着けよ…」と引き気味になだめる清だった。

和夫の好きな人は、
隣のクラスの一番後ろの窓側の席に座っている女子、
山田雪さんだ。
いつも爽やかな笑顔で成績優秀、スポーツも万能の女子バスケ部主将。和夫は男子バスケ部だが、実は入部したその日に隣の女バスをちらっと見た瞬間の
一目惚れ
と言うやつ。
「ショートカットがよく似合ってさあ、目は大きくてちょっとツリ目で、んで笑うと可愛くってさぁー」
もう…もう…
「ほんとピーー××!」
「あーはいはい。きたねーから叫ぶな」
お弁当のご飯粒を振りまきながら喋り続ける和夫に、若干面倒臭そうな清。

「だってさー…初めて告白するのに…」
「ピーー××です!なんて、なんか恥ずかしくね?」
「な、なんかAVみたいだし…」
と、座り込んでちょっとモジモジしながらしゃべる和夫。
清は
「あー…なあ?」
ニヤニヤしながら
「ぴーぴーぴーぴー連発したら、誰だって萎えそうだよなぁ」
と言った。
和夫の顔は赤く染まっている。
「もー!やめろよー!…でもさ、ほんとなんか、ふざけて聞こえんじゃん。ぴー音てさ…俺なんで昨日までに告白しなかったんだろー…」
「ま、後悔ってのは後からするもんだ。…いーじゃん、なったもんは仕方ねーんだし、ぴーぴー言わずに告白する方法考えようぜ」

こうして、和夫の告白大作戦が始まる。
ちなみに、月がきれいですね、は、相手が意味がわからず見事に失敗。馬鹿なところもかわいい。
お付き合いしてください!→うん、わかった、どこに?で、部活の買い出しに。
結局、率直に

「お前のことがピーー××なんだー!!」
と、告白することになる。
が、結果は
「うん、ありがとう。でもごめんね?付き合ってる人いるから」
であえなく玉砕。

うぉー!と泣き崩れる和夫の肩を抱いて清が一言。
「まあ、そう泣くなよ。俺はピーー××だぜ?」
お前のこと。

「それ、どういう意味ー!!??」

という和夫の絶叫で終わる、基本的にはコメディタッチのお話。

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