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輪廻の風 第3章

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2022年7月の記事一覧

輪廻の風 3-42

メレディスク公爵を撃破してすぐに、バレンティノの両頬に刻まれた赤褐色の2本の十字架はスーッと消えた。

それでも尚、バレンティノはスカーフを巻いて顔半分と首を隠した。

どうやら、十字架が有ろうと無かろうと関係なく、スカーフを巻いている方が落ち着くらしい。

人前で素顔を曝け出すのはまだまだ抵抗があり、隠している方がしっくりくる様だ。

長年根強く続けてきた習性というのは、そう簡単には治りそうもな

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輪廻の風 3-41

「フフフ…参ったねえ…。」
バレンティノは呑気な口調で、まるで他人事の様に呟いた。

するとメレディスク公爵は、バレンティノの顔面を思い切り蹴飛ばした。

バレンティノはそのまま倒れ込み、地に背中をつけたまま天井を仰いでいた。

「おいおい、まさかの無抵抗か?つまらねえ奴だなあ。このままなぶり殺しにしてやってもいいんだぜ?」

メレディスク公爵は踵でバレンティノの顔を踏みながら言った。

「フフフ

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輪廻の風 3-40

魔族10万対バレラルク4千で幕を開けた此度の戦争。

バレラルク側は圧倒的数の不利の中敵幹部を拘束し、魔界城内部ではマルジェラとアベルを筆頭とした天生士、そしてバレンティノやラベスタ等の強戦士の奮闘もあり、数多の魔族達を撃退することに成功していた。

しかし、ルキフェル閣下により結界が破壊されたことで3体の冥花軍主要メンバーが解き放たれ、戦局は大きく傾いた。

現在の魔界城の戦況は、魔族8万対バレ

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輪廻の風 3-39

「アベル君!!」
ラーミアは悲痛な声色で叫んだ。

しかしアベルは、血を流したままうつ伏せになり、うんともすんとも言わなかった。

「あなた…一体何をしたの?なんの能力なの…?」
アマレットは血の気の引いた顔でルキフェル閣下に尋ねた。

しかし、ルキフェル閣下がその質問には応えるはずもなく、事態は悪化する一方だった。

突然結界が破壊されたことにより、バレラルク側は動揺を隠し切れず、士気もみるみる

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輪廻の風 3-38

「やったか!?」

背を地面に着けた状態でピクリとも動かないヴェルヴァルト大王を、カインは恐る恐る凝視していた。

そしてその直後、ロゼは膝からガクリと崩れ落ちた。

両膝を地につけたまま、全身をガクガクと小刻みに痙攣させながら滝の様な脂汗を流し、過呼吸状態に陥っていた。

どうやら純白の光が放たれた聖槍ヘルメスを扱うのは、相当身体に負担を強いる様だ。

「ロゼ国王!大丈夫ですか!?」
「うわー!

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輪廻の風 3-37

ロゼは剣術の才覚がまるっきり無かった。

自分自身でそれに気が付いたのは幼少期の頃だった。

ロゼは幼少時代、当時王室近衛騎士団の団長を務めていた男から連日の様に剣術を習っていた。

小さな身体で自身の背丈とそう変わらない長さの剣を両手で持ち、覚束ない足取りで懸命に素振りをしていた。

しかし、その才能は一向に開花する気配がなかった。

しかし、才能の無さを埋めるべく、毎日一生懸命修行に勤しむロゼ

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輪廻の風 3-36

エンディに殴り飛ばされたヴェルヴァルト大王は、暫く仰向けのままあっけらかんとしていた。

そしてムクリと起き上がり、現在自身の肉体に生じている感覚の正体が何なのかを熟考していた。

「すげえ…なんだ今の力は!?」
カインは、エンディが身に纏っている金色の風に見惚れていた。

「なるほど、更なる力を手にしたというわけか。やれやれ…つくづく許し難い男だね。」
イヴァンカはエンディを睨みつけながら言った

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