ゲームは生活必需品だ!

 現代の人類にとって、娯楽ビジネスはほとんど不可欠なものと言っていいだろう。テレビもネットもニュース以外は見ない、小説や漫画、音楽や映画など一切興味がない...という人は稀だ。より豊かな楽しみを手に入れることは人の本能的な欲求でもあり、娯楽商品は日々進化を続けている。
 よほど仕事好きでもない限り、働いて食べて寝るだけの生活は苦痛だ。娯楽ビジネスとは、日々の息抜きをより効率よく行うための道具を提供する仕事とも言える。

 本記事では、その中でも特に急速な発展を遂げるビデオゲーム文化に焦点を当て、娯楽としてどのような価値があるのかを掘り下げていく。ゲームは幅広く社会に浸透し、人々の生活を間接的に支えている。
 ゲームの存在意義を改めて説明するのは意外と難しい。こういった記事を通して、ゲームの魅力を表現する言葉を少しでも提供できればと思う。

ゲームは何度も価値を生む

 自分で操作できるからこその没入感、コンピュータの力を生かした様々な映像美...他の娯楽にはない、ゲームならではの強みを語り出せばキリがない。
 ここではそういった表現技法としての側面は置いておき、ゲームが持つ娯楽としての長所を強調したい。すなわち、人々の息抜きを支える高いコストパフォーマンスである。

 漫画や映画といったコンテンツと異なり、多くのゲームは繰り返し遊べる特性を持つ。プレイヤーの行動に応じて結果が変わったり、ランダム性を用いた展開の多様性があったり、一回きりで終わらない工夫が施されている。ネットワーク対応のゲームが増えたことで、他のプレイヤーとの繋がりが多彩な楽しみを生み出すようにもなった。
 いつでも必要なぶんだけ、自分のペースでストレスを発散することができる。スマホや携帯ゲーム機で移動中にちょっとした時間を潰してもいいし、週末に大作ゲームにどっぷり浸かるのもまた醍醐味だ。

 ゲームのコストパフォーマンスが優れていると言えるもう1つの理由が、ゲームを軸にして二次的なコンテンツを生み出せる「派生力」の高さにある。具体的に言うと動画と抜群に相性がいいのだ。
 ゲーム実況は動画サイトの主力コンテンツの1つで、幅広い層に人気がある。プレイヤーによって操作内容が異なるというゲームの特性が、1つの作品から何重にも価値を生み出し得る。マインクラフトの実況動画や生放送などがいい例だ。
 昔好きだったゲームの実況を見つけ、その価値を再発見するパターンは珍しくない。自分では気づかなかった楽しみ方を動画に教わることもある。「ゲームを見る」こともまた多様な娯楽を提供してくれるのだ。

 eスポーツなど、ゲームが持つ競技性も娯楽の1つになりつつある。トッププレイヤーの高度なテクニックや極まった駆け引きが人々を魅了し、時に大きな熱狂を生む。
 あるいはRTA(ゲームをより速くクリアする競技)の配信なども盛んだ。徹底して無駄を削ぎ落とし、人間離れしたテクニックを使いこなす上級者のプレイングが、ゲームの全く異なる側面を見せつけてくれる。

 ビデオゲーム文化は様々な形で社会に娯楽を提供する。インターネットと結びつくことで、人々の息抜きを支える基盤の1つになっているのだ。

ゲームは人に寄り添う

 ゲームは基本的に能動的な娯楽だが、実は受動的な側面も持っている。あまり複雑な思考をしなくていいよう制約があったり、プレイヤーを自然に誘導する仕掛けが施されていたりする。
 ゲームは脳に負担のかからない楽な状態をキープしてくれる。特にシンプルなゲームや遊び慣れた作品は、余計な思考を取っ払ってリラックスするのに最適だ。基本的に体力も要らないので仕事で疲れていても楽しめる。

 その上で、ゲームは受動的なプレイヤーを能動的にさせる牽引力を持つ。
 優れた作品は最低限の説明で楽しめる。ややこしいチュートリアルを受けなくても、ステージを歩く内に自然とシステムが理解できるようになっていたりする。
 適切な行動を取ると派手なエフェクトが発生したり、気持ちのいい効果音が鳴ったり、プレイヤーを褒める仕掛けが随所に埋め込まれている。リズムよく試行錯誤でき、自然と成長を感じられるものだ。
 そうして達成感を繰り返し得ることで自信がつき、プレイヤーはゲームに熱中していく。高難易度モードに挑戦するのもいいし、オンライン対戦でひたすら上を目指すこともできる。中には自ら縛りを設けて難易度を上げる猛者も現れる。

 RPGなど、時間をかけると自然にステータスが上昇し、難易度が自動的に調節されるジャンルもある。ゲームが上手くないプレイヤーでも擬似的に成長を感じられるのが利点だ。
 ゲームは人に自信を与える装置でもある。デジタルの世界で人は英雄になれるし、時に神になって好き勝手暴れることもできる。

 市場に溢れる多様なゲームが幅広い要求に応えてくれる。ぼんやり暇つぶしに使ってもいいし、仕事帰りの楽しみに取っておいてもいい。
 現実に悩みを抱えているなら、ゲームの世界に逃げてもいい。弱っている人にもコンピュータは急かさず付き添ってくれる。画面の中で積み上げた達成感が、摩耗していた心を震わせてくれることもある。
 eスポーツのように、ゲームが単なる娯楽を超えて修練の道を生み出し、人を奮起させることすらある。ゲームの持つ幅広い用途が、社会に活力をもたらしてくれるはずだ。

ゲームは生活を豊かにする

 ビデオゲーム文化が生まれてから数十年ほど経つ。小説や映画などと比べればまだ若い文化だが、既にゲームは世界中で幅広く市民権を獲得しつつある。
 かつてはゲームへの偏見めいた批判も珍しくなく、その都度ゲームファンからの反発が巻き起こった。ゲームの文化的な価値や芸術的な側面を強調することで存在意義をアピールする声もある。
 ただそれ以前に、ゲームは単なる息抜きとして素晴らしいのである。それだけで十分に社会的な価値を持つことをゲーマーたちに伝えたいし、開発者は誇りに思うべきだと考える。

 息抜きの質は生活の質を決める。食事が体に栄養を与えるならば、娯楽は心に栄養を与える。
 ゲームの作り方も楽しみ方もまだまだ発展途上だ。人々の生活の一部として、ビデオゲーム文化が深く成熟することを期待したい。

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