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【読書メモ】失敗学のすすめ

ざっくりまとめ

失敗とは「人間が関わって行うひとつの行為が、はじめに定めた目的を達成できないこと」
・人が成長する上で必ず経験しなければならない良い失敗と、何も学ぶことができずる繰り返されるのは悪い失敗
・ハインリッヒの法則:1件の重大最大の裏には29件のかすり傷があり、さらにその裏に300件の傷にもならない失敗がある
・失敗は人に伝わりにくく、伝達されてもその中で減衰していく
・責任追究と原因究明を分離することで、意図的に失敗を隠したり原因を捻じ曲げたりすることがなくなる
・失敗情報は「事象」「経過」「原因」「対処」「総括」に分けて記述する
・単純な理由で失敗がおこる原因としては、①技術が成熟している②コストダウン対策やリストラ策がはかられるところに多い
・起こって当たり前の失敗からスタートすることを忘れずに、失敗を肯定できる環境や仕組み、文化を作る

感想

10年くらい前に読んだ記憶があったものの、最近ポストモーテムについて考えることがあったりしたので、再読してみました。

失敗というと悪いイメージがつきものですが、本書を読むことで失敗に対するプラスのイメージを持つことができると思います。

失敗の原因をたどるときになぜなぜ分析であったりピラミッド構造で論理的に解析していくことはよくあると思いますが、実際にはこういった構造を飛び越えた影響が存在しているということはよくあります。また、時間経過や環境の変化、人の入れ替わりなどによって失敗の減衰や局所最適・全体最悪のような事象が起こりがちになることも思い当たる節が多く、失敗に対しての認識を改める良い機会になりました。

先に読んだ欠乏の行動経済学や並行して読んでいる人に起因するトラブル・事故の未然防止とRCAあたりとシンクロするところがあり、良いセレンディピティになってます。

メモ

失敗は次の10個に分類できる。

1. 無知
2.不注意
3.手順の不順守
4.誤判断
5.調査・検討の不足
6.制約条件の変化
7.企画不良
8.価値観不良
9.組織運営不良
10.未知

人は未知を原因とする失敗に遭遇したときに、その原因とメカニズムを徹底的に考え失敗を防ぐ手立てを発見し、その集積によって文化を築いてきた。

小さな失敗も一つ一つ真の原因をきちんと解明することは、同じ原因で起こる次の失敗の未然の防止にそのまま結び付く。

フッ酸が大変恐ろしい化合物であることもこの書籍で初めて知る。

人が知りたいことは誰に責任があったかということよりも、失敗したときにその人が何を考え、どんな気持ちでいたのか、という第一人称の話であり、それを知識化する必要がある

体験をベースにしつつ、さまざまな知識も貪欲に吸収している「本当のベテラン」と、体験や経験から何一つ知識ができないでいる「偽のベテラン」がいる。何も考えてこなかった人が突発的な事態が起こったときに、突然頭がよくなったり、うまく対応できるといったことはなく、徹底的に考えていた人のみが対応できる。

組織が成熟してきたとき、例えば条件変化によってシステムを改良する必要が出てきた場合に、システムを局所的にしか見ることができず、その局所ではよくても全体から見れば致命的な悪である改変を行ってしまうことがあり得る。これを局所最適・全体最悪という。

失敗情報のデータベースに情報を蓄積するのは良いが、あまり利用されないのは、それがその人が必要としている情報になっていないから。「知りたい人」に「知りたいとき」、「知りたい中身」を「欲しい形」で示すことができるためのデータベースになっていないといけない。人が知識としてきちんと吸収できる限界は300個程度(落語家が生涯かかって覚える噺の数)なので、失敗情報もそれくらい抑えて整理するべき。

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