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【読書メモ】PIXAR〈ピクサー〉世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

だいぶ前になりますが、読了しました(書こうと思ったら忘れてた)。今や世界一のアニメーション企業となったPIXARについて、クリエイティブな面ではなく、戦略や事業の面からどのように成功に至ったかが読めます。

ざっくりまとめ

・アニメーション映画が事業戦略になるのか、収益構造がどうなるか(製造過程が従来の映画と全く異なるため)、全くわからない状態からのスタートだった
・従来の映画では成功するのは2割にすぎず、普通株式による方法での資金調達は絶望的に難しい
・投資家は確実性や安定性を好むため、PIXARのIPOは非常に難しいと思われた(実際に難しかった)が、テクノロジーの強みが道を開いてくれた
・トイ・ストーリーの成功とPIXARのブランド化を推し進めるべくディズニーと再交渉し、対等な契約を結ぶことができた
・ローレンスの仕事振りがとにかく凄い

感想・メモ

いくつか印象深いセリフがあった。

「駒がいまどう配置されているのか、それを変える術はない。大事なのは、次の一手をどう指すか、だ」

第4章 ディズニーとの契約は悲惨だった
私のなかにあるスタートアップ魂がチームに賭けろとささやいてくる。それがシリコンバレー流の映画製作だろう。リスクヘッジなんぞくそ食らえ。イノベーションに賭ける。すごいものに賭ける。そして、世界を変えるのだ

第18章 一発屋にならないために

豊かな才能のある人材に恵まれたPIXARは、その才能をお金に変えることが全くできていなかった。トイ・ストーリーはエベレストに初めて登頂する、月に初めて足跡を残すに匹敵するほどの難しい事業だった。

ディズニーに映画事業の収益構造を聞こうとしたら社外秘と言われてしまった(当時はディズニー一強だったため)。予想する手がかりすら得られな方。

IPOにしても、興行成績は予測不可能で、映画の公開スケジュールは当てにならず、トイ・ストーリーの次は早くても3年後になってしまうため、非常にリスクが高かった。実際にハロルド・ヴォーゲルは映画業界への投資は得策ではないと語っていたが、彼はエンターテイメント業界を推し進める要素がテクノロジーであることを見抜いていた。

PIXAR映画のスタッフロールにはPIXARの全て社員(ローレンスを除く)が登場するのは、とても素晴らしいやり方だと思う。

気難しいスティーブと投資家との間に挟まれてギリギリの戦略を立てて進めていくところに、PIXARのIPOの難しさが現れている。優秀な社員がいるだけでは成功しない。カリスマが1人いるだけでも成功しない。戦略があって初めて成功への道が見えていく過程がとてもおもしろい。

IPOに至るまでの経緯や、トイ・ストーリーがヒットしたあとのディズニーとの契約交渉など、情報を集めて整理し、事実と情熱を巧みに伝えて、自分達の立てた目標に進んでいく様に胸が熱くなる。

この本を通じて感じたのはローレンスの仕事ぶりが素晴らしすぎるということ。交渉術やバランスの調整、情報収集、コネ、適切な相手などいたるところで、素晴らしい仕事振りを発揮していて、読んでいるだけでとても尊敬できる人物だと感じた。

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